セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜

「僕たちは"主役"にも"脇役"にもなっていく」(セコラム第34回)

仕事

Photo by Nandhu Kumar on Unsplash

『セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜』 vol.34

僕は「就労継続支援B型」という枠組みのなかで、障害のある人たちと一緒に農業をしています。その中で様々なドラマが繰り広げられています。嬉しいこともあれば悲しいことも。でも、誰かの人生の一部分をともに過ごすことって、そういうことです。僕はいつも意識していることがあります。それは「主役にも脇役にもなる」こと。具体的にいうと「就労分野は主役に、福祉分野は脇役になる」こと。大げさに言ってしまうと僕たちは誰かの生活を生かすも殺すもできるのだと思っています。「仕事」という生活の一部分だけを切り取っているけれども、そんな立場であることを忘れないでいきたいといつも思っています。

僕たちのような福祉事業所は1人ひとりに応じた計画をつくらなきゃいけません。そのために様々なことをメンバーにヒアリングしています。特に「なぜ三休に通所するのか」「三休を通してどのような暮らしをしていきたいのか」を聞くようにしています。そしてその答えをもとに1人ひとりの計画をつくり、それを基準に彼らとの関わりをどのようにしていくのかを日々実践、そして振り返りをしています。僕は計画そのものではなく計画を起点とした前後の関わりが大切だと考えています。

誰かの生活の主役は、その誰か。僕たちではありません。僕たちはあくまでも脇役に徹しなければいけません。「してあげる」ではなく、「する」をどう演出するか。時には素直に褒め、時には厳しく怒ることもありません。それが普通のコミュニケーション。でも就労分野、いわゆる仕事づくりの部分は主役となり先導を切り実行していかなければいけません。古めかしいことかもしれませんが、仕事の姿勢を見せることで人の常識や考えが変わることがあると信じています。

計画通りにいくことはほとんどありません。日々の積み重ねで計画を下回るかもしれないし計画を超えていくかも。では僕たちがメンバーと過ごすのは遊び?生活? そう、働くこと。一緒に働くことで彼らが気付き、考え、意識が変わります。その瞬間をどんどんつくっていきたい。その瞬間こそ自分の生活の主役になっていくきっかけなのだと思っています。

世古口 敦嗣(せこぐち あつし)

世古口 敦嗣(せこぐち あつし)

就職活動に失敗し、何となく障害福祉の世界へ。障害者が暮らしやすいまちをつくるNPO法人サポネや医療福祉エンターテインメントのNPO法人Ubdobeなどを経て、農業を中心とした障害のある人が働く拠点「三休 – Thank You -」を今年4月にオープン。それ以外にNPO法人月と風と理事やKAIGOLEADERS OSAKAコアメン、ふくしあそび探求舎代表を務める。

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