ゲームにおけるアクセシビリティ設定の話題
暮らしこの間、プレイステーション5を購入することが出来ました。同梱されていた「スパイダーマン2」には様々な「アクセシビリティ」の設定項目が幾つも連なっており、中には手話通訳(アメリカ英語のみ)まで存在しています。しかも、劇中では聾者の登場人物も交えてナチュラルに手話で会話する様子があり、色々と驚かされました。高性能なモニターがあれば、秒間120フレームの滑らかな手話を見ることも可能です。
「アクセシビリティ」とは、より多くの特性を持つ人がゲームを楽しめるようアシストする諸機能のことです。昨今これの発展は凄まじく、試合の状況を音で伝える機能が整った「ストリートファイター6」では全盲のeスポーツ選手が登場するまでに至りました。
実生活では障害者向けの設備が健常者にとっても便利になったことが多く、やがて万人がその恩恵を享受できると信じられています。ところが、そうとも限らないのではないかという話題が「アクセシビリティ」の件から浮上しました。
同じくアクセシビリティ設定に力を入れている格闘ゲームとして「鉄拳8」が控えています。こちらは色弱など様々な視覚特性に配慮した設定を多く揃えているらしく、キャラクターを単色のシルエットにしたり、コントラストを高めて視認しやすくしたり、縞模様で塗りつぶしたり出来るようです。
このうち、縞模様のフィルターについて「『でんのうせんしポリゴン』で視聴者が病院送りにされた事件の、二の舞になるのではないか」という意見が出ます。縞模様のシルエットが動き回るのは画面としてかなりチカチカしており、「でんのうせんしポリゴン」であった激しい明滅表現に繋がるという懸念です。
これに鉄拳8の原田勝弘プロデューサーは、「視覚や色覚の特性に配慮した複数種類のオプションを用意しており、かなり幅広い調整が出来るようになっています」と説明したうえで「全ての色覚特性をカバーすると主張や宣伝をしたことはありません」「世界中全てのプレイヤーの特性に対応している訳ではないことは理解しています」と述べています。
縞模様に対する意見はSNSで拡散されていますが、今度はこの拡散自体が望ましくないとする声までもが、他社のアクセシビリティ担当者から上がっています。曰く、「拡散された動画によって頭痛を訴える人が居る」「アクセシビリティの議論によって安易に動画がシェアされれば、たまたま自動再生した無関係なユーザーにも悪影響が出る」とのことで、SNSでの拡散をしないよう求められました。
そもそもどういった画面が望ましいかは、晴眼者の間でも意見が分かれる複雑なお題でもあります。モニターの設定ひとつとっても、作業やゲームや動画視聴など目的で違うのは当たり前で、ゲームだけでもFPS向きやRPG向きでは最適な設定も全然違います。各々の視覚特性などに配慮した設定を各自でやっておくセルフサービスである以上、ゲームのアクセシビリティというものは元から万人向けを目指したものではないことを理解するのが先なようですね。不要な設定を敢えて入れても邪魔なだけですし。
参考サイト
「鉄拳8」アクセシビリティ設定に称賛も、一部は頭痛や発作の危険と専門家
https://news.yahoo.co.jp
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