メンター制度というのをご存知ですか?〜弱音を吐けないサラリーマン達
仕事メンター制度というのをご存知でしょうか?元々は、職場における人材育成法の一つです。先輩社員(メンターmentor)と後輩社員(メンティmentee)が、原則として1対1の関係を築き、後輩社員のキャリア形成上の課題や悩みについて、先輩社員がサポートする制度でが、厚生労働省が推進しているメンタルヘルスにも活用できます。このコラムでは、どういう制度なのか?実際、自分の体験をもとに執筆させていただきます。
メンター制度に類似する制度の違いについて
メンター制度は国家資格ではなく、資格がなくてもメンター制度は採り入れることができますが、日本メンター協会が行っている講座のみ、厚生労働省/「人材確保等支援助成金」の対象となりますので、厚生労働省のホームページで確認することをお勧めします。これ以外に企業が導入している制度を紹介します。
OJT
OJTとはあくまで、自部署の先輩社員が担当して、実務指導を行います。メンタル面でのサポートは含まれていません。
コーチング
コーチングとは、相手と対話をする事で、目標達成に向けたプロセスを支援する取り組みの事で、相手のメンタル面まで踏み込むことはありません。
ティーチング
ティーチングとは、知識や問題の解決策などを相手に教える事で、目標達成を促す取り組み事です。OJT・コーチングと共に、あくまで業務上の指導・監督の範囲で相手のメンタル面まで踏み込むことはありません。
メンター制度によって期待される効果
メンター制度の運用の際で決めておくルールは
1.守秘義務(メンティに了承を得ずに内容を外部にもらさない)
2.相談窓口(メンターとメンティに何かあれば、別の相談窓口を設けておく)
3.就業時間内に面談する(面談は業務の一環として行うこと)
本来の効果は、「話を聞いて、離職を防止する」だけではなく、1対1で対話することで、「対話するスキル」「内省するスキル」を高める効果が期待できます。スキルを高めることは、一朝一夕にできるものではありません。メンティだけでなくメンター自身も気付きがあり、お互いが成長できるのがメンター制度の良さの特徴です。ただ、長い時間を掛けて、メンターとメンティとの間で信頼関係を築かないと、表面上の内容で終わってしまい、ただ義務的に面談し、表面的な会話や雑談で終わってしまいます。
例を言えば、こういう会話が起こります。
メンター「最近はどう?」「困ったことはない?」メンティ「はい。問題ないです。」「特に困っては無いです。」など当たり触りのない会話でただやらされているということにもなりかねないのです。
弱音を吐けないサラリーマン
あるメンタルヘルスの講演会に出席して聞いた話です。これまで企業は法律で雇用人数に応じて産業医を設置することが義務付けられていましたが、あくまで身体の健康管理がメインでした。2020年を目途に精神面での健康管理を義務付けられることが厚生労働省の中でほぼ決定したとの事でした。理由は精神疾患での経済損失が2010年には2.7兆円と言われていたのが、2018年には5兆円まで損失が拡大したとの事でした。この金額は精神が摩耗しても無理して仕事を続けている方も含んだ数字になります。(金額については、様々なデータがあり、ここでは講演会で聞いた数字を記載しています)
WHOの発表では、世界で4人に1人が生涯どこかの時点で、精神疾患を患う事となり、損失額は年間1兆ドルと試算されています。海外でも、メンタルヘルスに関する問題はかなり深刻な問題となっています。特に金融関係の仕事に就いている人は仕事が原因で精神疾患に罹る率が高く、ロイターのインタビューで「メンタルヘルスの問題を汚名と考える意識は確実に残っている」とゴールドマン・サックスの方が語っています。日本だけでなく世界中で深刻な問題となっています。ニューヨークのウォール街、ロンドンのシティでも、労働者の為にメンタルヘルスケアを積極的に行う企業が増えているそうです。
世界でもメンタルヘルスの問題は根深く、かつ深刻な問題となっています。イギリスでは労働者にアンケートした結果、サラリーマンが心の悩みの問題を上司に告げれば、昇進や同僚との関係悪化が起きると半数以上が危惧していると答えたそうです。そのために様々な制度を活用して、防ぐことが大事となっているのです。
参考文献
厚生労働省 メンター制度
https://www.mhlw.go.jp/index.html
ロイター 弱音吐けない金融エリート、「心の病」対策に職場が本腰
https://jp.reuters.com/