発達障害と似非科学の戦い~がん治療や薄毛治療の先例

発達障害
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発達障害当事者にとって大事なことの一つに、似非科学を見抜くことが挙げられます。科学的根拠がなかったりそもそも関係なかったりする似非科学や代替医療が、主に子どもが発達障害と診断され狼狽える保護者を狙って蔓延しているのです。似非科学を拡散する人間には2つのタイプがあり、片方は無知ゆえに本物だと信じ込んで広めてしまう悪意なき拡散で、食事療法から反ワクチンまで療育分野を掻き回しています。

もう片方は、似非科学による莫大な利益を求める悪意満々の人間です。効果が無かったり別の目的で使ったりする代替医療を、不安に付け込み勧めてくるような手合いです。

藁をもすがる思いの人間に美辞麗句で擦り寄って食い物にする似非科学および偽医療は、科学的に正当な反証を突き付けても怯むどころか怒髪天を衝く勢いで反撃してきます。同じく偽医療が幅を利かせるがん治療や薄毛治療では既にそうした戦闘状態が起こっているのです。

がん治療と偽医療

がん治療は手術と抗がん剤と放射線治療が主なのですが、これに「免疫療法」というものが加わるかどうかの段階にあります。この免疫療法が微妙な立場なのをいいことに偽医療が蔓延しているのです。偽医療は当然保険など下りる筈もないのですが、それが却って高額な費用を患者から徴収する一因にもなっています。

正当ながん治療も進化しているのですが、それでも偽医療に多くの人が騙され多額の金が流れてしまっています。その金額は、がんの新薬が1つ軽々と開発できる程だといわれています。偽医療側も周到な所ではテレビで紹介されるなどして権威や信頼を得ようとします。

がん治療において偽医療が幅を利かせているのには、正当ながん治療を背負うべき医師の態度にも問題があると指摘されています。多忙によるコミュニケーション不足から事務的で無配慮な宣告をする医師がおり、その態度が患者を傷つけて偽医療の甘い言葉に惑わされやすくしてしまうのです。

ある膵臓がん患者のケースでは、末期の宣告すら機械的に済ませる配慮の欠けた主治医がいました。何を言っても患者と家族をいびって馬鹿にする態度や物言いが目立ち、患者は最期まで不信感を抱いていたのです。そんな折、患者の妻が見つけたのが効果の証明されていない療法で、「テレビ番組でも紹介された」「少ない副作用で身体にやさしい」という理由で偽医療に向かったのでした。

結局偽医療のクリニックには300万円も支払ってしまい、当然効果はなく患者は帰らぬ人となりました。遺族となった妻は他人に同じ療法を勧めることは絶対にないと言い切っています。しかし、がんで絶望している夫を人間として扱い、親身になって接してくれた偽医療の職員たちには感謝もしていました。葬儀の後お礼を述べた先が正式な主治医ではなく偽医療の職員だったくらいです。

医学的正当性に胡坐をかいて患者との信頼構築を疎かにしていては、簡単に偽医療へ流れてしまうという教訓でした。特にがん患者の心理は極限状態に陥りやすいので、気持ちに寄り添う姿勢は猶更医師に求められるでしょう。医学界で認められた正当性やエビデンスが偉いのであって、医師個人が偉いわけではないのです。

薄毛治療の出遅れ

薄毛治療の宿敵となるのは育毛業界ですが、薄毛治療側が大きく出遅れていたため髪に関する似非科学は今も根強く残っています。育毛業界も最初はカツラを売るだけで無害なものでしたが、業界の巨大化によって阿漕な商売も横行し始め、最も好き勝手出来た90年代には薄毛に効果のない医薬部外品と髪に関する似非科学が大量に出回ったのです。

2005年、「フィナステリド」を含有する男性型脱毛症(AGA)の改善薬が国から認可されたことで薄毛治療もようやく本格化したのですが、10年以上遅れていたせいで薄毛に対する科学的な誤解はほとんど解消されていません。育毛業界は従来通り、薄毛に効果のない医薬部外品や維持費のかかるエクステなどの高額なメニューを出し続けています。

育毛業界はネット上でも大きな市場を築いており、アフィリエイト業界と組むことで巨大な販路まで出来てしまいました。勿論、似非科学に依存しているためアフィリエイトブログの内容もまた似非科学が多いです。一方、情報化社会の進歩によりAGAの認知や「フィナステリドを含む医薬品」「ミノキシジルを含む医薬品」の存在もまた知れ渡っています。そこで育毛業界のごく一部では「不都合な真実の抹消」をネット上でやろうとします。

育毛業界にとって不都合な真実が広まらないよう揉み消す方法とは、主に「告げ口」です。正しい薄毛治療を載せている「不都合な」ブログや動画を抹消するために、ブログや動画サイトの運営に著作権侵害など別の理由をつけて通報し削除させるのです。実際のサイト画像を提示して注意を呼び掛けるようなブログ記事が主な犠牲となりました。

薄毛治療と育毛業界の情報戦は、薄毛治療側がとても不利な状況です。オールドメディアは既に育毛業界の覇権ですし、唯一残されたネット上でも検索エンジンが上手く働かず正しい知識がなかなか行きわたりません。

療育と似非科学

療育の分野に似非科学が侵出してきたのは2010年代からでしょうか。発達障害について判断の高度化と理解の浸透が始まったことから、療育に関する疑わしい風説もまた増えてきました。食事療法ならまだ可愛いもので、効果のないサプリや本来の用途と異なる代替医療、果ては反ワクチンまで唱えられています。もはや命に関わる領域に達しており、漂白剤浣腸やキュレーション療法では実際に死者が出ました。

子どもが発達障害であると医師から診断されると、大抵の親御さんは平静でいられなくなります。似非科学はその弱みに付け込み、時に貴重な時間や財産を奪おうとしてきます。

イギリスで元総合診療医(GP)を勤めASD当事者の父親でもあるマイケル・フィッツジェラルドさんは、BuzzFeedNewsによる「ASD児の親に蔓延する似非科学について」の取材を受けて以下のように答えました。

「医師の立場で言えばASDは原因も分からないし治療という概念もないのですが、親の立場で言えばそれは受け入れられず子どものため必死になるものです。その必死な時に『医師に出来ない治療が出来る』と触れ込まれれば簡単に靡(なび)き、救われた気持ちにすらなるでしょう。食事療法が人気なのも、食事を管理する手間や苦労や努力によって子どものASDをコントロールしていると錯覚できるからだと思います。」

まとめ

偽医療や似非科学によくみられる特徴として、既存の標準医療・医学・製薬業界・アメリカ食品医薬品局(FDA)に対して陰謀論などで悪し様に言っていることが挙げられます。科学的に正当なエビデンスを持つ相手に対し本質的に偽医療は勝てません。ただ根も葉もない悪口を並べることしか出来ないのです。

特に似非科学で人の弱みに付け込み儲けたい側は医学的に正当な治療や知識を激しく憎悪し、嘘を暴かれそうになると烈火の如く怒って反撃さえしてきます。儲けるためには誤った知識を広げる必要があり、その邪魔をする不都合な真実は敵なのです。

しかし科学的正当性があるからといって、傲慢な態度を取ったり無知を嗤って嘲ったりしていいわけではありません。寧ろ「科学的に正しいから偉い」という発想は人々を正しい医療や療育から遠ざけ、似非科学を却って肥えさせる毒でしかないのです。真実を理解されないと嘆くならば少し謙虚になったほうがいいかもしれません。

参考サイト

「夢の治療法」「副作用なし」 怪しい免疫療法になぜ患者は惹かれるのか?
https://www.buzzfeed.com

薄毛業界の闇に迫る!~後編~|記事一覧|ハゲタン日記
https://hagetan.com

自閉症児の親たちが入り込む「フィルターバブル」の闇
https://www.buzzfeed.com

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

発達障害 自閉症スペクトラム障害(ASD)

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