APD(聴覚情報処理障害)とは?~音としては聞こえるのに言葉として聞き取れない
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聴覚に異常がなくても「耳には声は聞こえているがうまく聞き取れない」「声は聞こえているのに言葉として理解ができない」などの耳からの情報を脳でうまく処理できないという悩みを抱えていませんか?
もしかしたらAPD (聴覚情報処理障害)かもしれません。
APD(聴覚情報処理障害)とは?
聞こえているけど、相手が話している内容に理解が追い付かない……それはもしかしたらAPDと言われているものかもしれません。
音の聞き取りずらさが気になって、耳鼻科で聴力検査を受けても「異常なし」と診断されてしまいます。
こうした症状はAPDと呼ばれ、近年、注目を浴びつつあります。
APDの原因は?
一般的な難聴や聴覚障害は、音が脳に伝わるまでに、耳から脳までに何らかの異常や機能低下によって起きているものがほとんどです。
しかし、APDの場合は、脳に何らかの損傷が生じたり、あるいは脳自体に損傷はなくても脳機能に問題が生じていたりすることで、言葉が聞き取りにくくなっている可能性が指摘されています。
また、発達障害の人には、APDの合併が多く、発達障害の半数で合併が見られるとする研究もあります。脳の機能の問題による集中力の欠如などから、言葉の聞き取りに支障が生じている可能性もあり、脳のどの領域に問題があって、なぜ障害が生じているかは、まだ分かっていません。
APDの原因は複雑で、解明されていないことも多いのが現状です。
APDの症状
APDの症状としては「聞き返しや聞き間違いが多い」「長い話を理解するのが難しい」「雑音やBGMなどの騒がしい環境で言葉の聞き取りが難しい」「口頭で言われたことは忘れてしまい、理解しにくい」など視覚情報に比べて、聴覚情報の聞き取りや理解が困難なことが挙げられます。
難聴と似た症状に思われますが「聴力検査をしても異常がない」というのが大きな特徴です。適切な検査を行わないと、他のタイプの難聴と区別するのが難しい場合もあります。
APDの診断基準は、まだ国内で定まっていません。理由は原因がはっきりしていないからです。
聴覚処理障害は脳や中枢神経の問題で、脳機能の障害や発達障害、心理的要因など、人によってさまざまだと考えられています。今のところは、通常の聴力検査は正常であるにも関わらず、APDの聞き取り検査で一定の基準から外れた場合に、APDと診断されます。
APD 4つの対処方法
APDへの具体的な対処方法を紹介します。環境調整……周囲の雑音を抑える、話し手との距離を縮めるなど、聞き取りやすい環境を作ります
補聴手段の利用……APDは雑音下での聞き取りが苦手なことが多いため、補聴器等の補助器具で雑音を抑えて聞き取りやすくします。
聴覚トレーニング……正確に言葉を聞き取るためのトレーニング、確実に聞き取れなかった時の聞き返し方のコツ、会話を続けるためのヒントを相手から引き出す方法、注意力や記憶力を高める、などさまざまな聞き取り能力を向上させる方法があります。
心理的な支援……何かしらの心理的問題によって、聞き取り困難が発生している場合もあります。その場合、精神疾患など二次的な影響につながる可能性があり、カウンセリングなど専門的な支援を受けるのも重要なサポートです。
APD自体、研究途上のためわかっていない点が多くあります。さらに日本は欧米と比べると、APDに対する認知度がまだ少なく、診断基準も確立していません。人によって神経内科、耳鼻科、小児科、精神科などがAPDの方が受診される医療機関としては考えられます。
「聴力は正常」と判断されたにも関わらず、実際の生活で聞き取りにくさに悩んでいるかたは、APDを専門とする病院に受診することをお勧めします。
参考文献
【NHKニュース “聞こえているのに聞き取れない” APD 初の大規模調査へ】
https://www.nhk.or.jp
【NHK “聞こえているのに 聞き取れない”APD当事者の悩み】
https://www.nhk.or.jp
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