回復の祭典、リカバリーパレードの意義と役割
暮らし写真:大阪でのリカバリーパレードの行進の様子
去る11月6日(日)は東京・新宿で、11月13日(日)は大阪・難波で「リカバリーパレード」が開催されました。リカバリーパレードとは、精神疾患や依存症から自分なりに立ち直った人やその周辺が、「回復」を合言葉として練り歩くパレードのことで、回復の祭典とも呼ばれています。
パレードを通じて回復の喜びを祝い、回復が可能な存在であることを自分たちの声や姿で社会にアピールします。地方自治体だけでなく各地の断酒会やDARCが後援となり、2010年に東京で初めて開催され、神奈川、大阪、福岡などで開催されています。そんなリカバリーパレードは一体どのように成り立っているのでしょうか。
リカバリーパレードとは
写真:行進前に挨拶する第5回リカバリーパレードin大阪の実行委員会代表の加藤武士さん
リカバリーパレードが始まったきっかけ
2007年にウィリアム・ホワイト氏(依存症の治療や当事者運動の著名な研究家)が来日して行われた講演により、アメリカで始まっていた依存者回復擁護運動やリカバリーウォークが日本でも知られるようになりました。これがきっかけとなり2010年東京でリカバリーパレードが初めて開催され、全国へ広がっていきました。関西では2016年に第1回を開催しています。
パレードの趣旨
パレードの趣旨として次の3つを掲げています。
「私たちは回復者、家族、友人、支援者、賛同者で一緒に回復の喜びを分かち合い、回復があることを社会にアピールします」
「私たちは依存症、心の病から回復するための手助けをします」
「私たちは回復者(団体)同士の交流を深め、社会との協力関係をつくります」
「回復」について
「回復」とは何でしょうか。私たちは何をもって回復とするかを決めません。その人本人が以前より良くなったことを喜べるのなら、それが「回復」です。特定のグループの回復の定義を採用することもしません。回復は人それぞれです。
合言葉は「回復」
私たちが直面した病気や困難の状況、あるいは回復の仕方は様々です。その私たちが共通して示すことができる「回復」を合言葉にしようとする中で「依存症、精神障害、生きづらさからの回復」と表すことになりました。参加者の一人ひとりが、いずれか或いは幾つかに当てはまる言葉になっています。
誰でも参加できる
写真:東京でのリカバリーパレードの行進の様子
リカバリーパレードは開催日さえ知っていれば誰でも参加できます。特に個人参加の場合は事前予約など一切なしで来てもOKというフリースタイルで、自作のプラカードを持ってくる人も居ます(団体の場合は事前に実行委員会まで連絡する必要があります)。
参加にあたっては、なんと名前を伏せても構いません。本名を出さずニックネームで呼んでもらうばかりか、ニックネームすらない完全な匿名でも良いのです。勿論、実名で参加することも出来、その選択は各自の自由となっています。これなら匿名の自助グループでも参加しやすいでしょう。
リカバリー・パレード関西実行委員会の代表を務める加藤武士さんは、このパレードの開催を通じて、こころの病や依存者への偏見や誤解を取り除き、回復しやすい社会を作る事を目的に当事者が当事者の声と姿を通してメッセージを伝えていきたいと語っています。