「障害者を映画に出すな」と怒られながら撮影!映画「月」の裏事情が語られる。
エンタメ 暮らし相模原の障害者殺傷事件に着想を得た同名の小説を原作とする映画「月」。報知映画賞や日刊スポーツ映画大賞などで高い評価を受けており、「さとくん」を演じた磯村勇斗さんも報知映画賞の助演男優賞を受賞しています。
映画「月」は、観客たちからキレイゴトのベールを剥がし冷徹に鋭く問いかけてくる衝撃的な作品です。自分が善人だと信じて疑わない人ほど刺激の強い映画と言えるでしょう。そんな映画が完成するまでの道筋は、決して平坦ではありませんでした。「文春オンライン」は撮影の裏事情として、石井裕也監督とKADOKAWAの角川歴彦元会長の対談を掲載しています。
実は、映画「月」の制作・配給元はスターサンズ以外にもう一つ、KADOKAWAも名を連ねていました。しかし、完成した映画からその名前はありません。攻めたテーマで撮る石井監督のことをKADOKAWA側は快く思っておらず、最終的に石井監督が追放されるような形となったためです。
石井監督はKADOKAWA側の関係者から、「障害者を映画に出すな」などと口出しされ続けていました。ただ反対の理由は向こうから話してくれません。石井監督は「世間から批判されたら困るという保身」「ただ怒られたくないだけで周りの顔色を窺ってばかり。作品への愛情や矜持もない」と分析しています。
そんな無責任なKADOKAWA側から庇ってくれたのが、同社のトップだった角川元会長です。上司の顔もあって石井監督への追及は緩み、撮影は進んでいました。しかし、角川元会長が贈賄の罪で逮捕されると、上司の監視がなくなった関係者は再び石井監督を詰め始めます。
編集段階の石井監督には、「世間に批判されそうな場面はカットしろ」「とにかくまろやかにしろ、まろやかにしろ」と注文が飛んだそうです。それに屈さなかった石井監督ですが、今度はKADOKAWAから制作中止を通告されてしまいます。最後の音入れ段階を残しての中止通告に、映画はあわやお蔵入りとなりかけました。最終的にはどうにか完成まで漕ぎつけ、スターサンズが単独で配給する形で公開することとなりますが、公開は小規模のものに留まります。
映画「月」によって、角川元会長は「新藤兼人(しんどう・かねと)賞」のプロデューサー部門を受賞しました。新藤兼人賞は日本映画製作者協会が主催する賞です。角川元会長個人にこの賞を贈るというのは、採算や世間の目を恐れるあまり映画人の情熱すら抑えつけようとする供給側への抵抗ではないか…と石井監督は感じているようでした。
それにしても、撮影中に「障害者を映画に出すな」と怒られていたとは初めて知りました。映画の公開自体は出来ている作品もありますが、大々的な宣伝はされない印象ですね。そもそも外圧の有無によらず、障害者を扱う作品を世に出すにはかなりの苦労を伴いそうです。例えば、軽度知的障害や境界知能の登場人物を表現してみろと迫られたら、投げ出すか降参するかだと思います。皆さんは境界知能や発達障害などを創作上で表現する自身はおありでしょうか?勿論、ごく当たり前に存在する一人の人物としてです。
参考サイト
「『障害者を映画に出すな』と…」映画『月』お蔵入り危機の真相
https://news.yahoo.co.jp