〜内観〜自分のこころと向き合ってみる
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当ホームページにお越しくださった皆様こんにちは。ライターのくろねこです。
今回は、くろねこなりに自分のこころと向き合ってみたことを書いていこうと思います。
「なんでまたそんなことをするの?」
「私の障害と社会参加」のコラムを書いてみて、これまでにあった大きな出来事に際して、その時々の自分のこころはどうだったのかを振り返るにはいいタイミングが来たなと思ったからです。そうすることが今後に役立つだろうという期待もあります。
「じゃあ、どこにしようか?」
「私の障害と社会参加」で書いた「1+1=2にならない」職場で疲れ果ててうつ病になってから、何か手ごたえが欲しくて工場で働いていたときのことが一番大きなこころの動きがあったと思うので、そのときのことを書いてみます。
うつ病になってその職場を退職してから、「自分には何もないな」とずっと思っていました。再就職を考えたとき、また事務職をしてもそこで扱う数字がとても空虚な感じに見えるので、事務職を選ぼうとはしませんでした。
「自分には何もない、このままじゃ嫌だ。自分が生きた足跡を残したい!ものづくりの世界に飛び込めば形を残せるから、生きた足跡も残せるに違いない!」
その渇望が芽生え、一から頑張ろうと金属加工をする工場に飛び込みました。本当によく飛び込んだなと思います。そのときは半ば無謀ともいうほどの勇気、いや渇望でいっぱいでした。
振り返るとその職場環境は楽なものではありませんでした。片道2時間半の通勤時間、8時間立ちっぱなし、加工機械が立てる耳をふさぎたくなるくらいの轟音、周囲にもうもうと立ち込める油煙と指に刺さる金属片。それでも自分の渇望はそうした環境でさえ、ものともしない力を自分に与えてくれました。
ですが、そこで新たに自分のハンディキャップが見つかったことで状況は大きく変わります。そのハンディキャップとは「加工時間が異なる複数の機械を同時かつ円滑に管理することができない」言い換えると「マルチタスクができない」といったものでした。
ひとつひとつであれば丁寧に管理することができました。しかし、このハンディキャップだけはどうしても克服することができませんでした。パニックになる事が多々ありました。しかし工場は生産してなんぼの世界です。効率よく生産することが第一でした。
さらなるショックが自分を襲いました。その工場が定める評価基準に、「加工時間が異なる複数の機械を同時かつ円滑に管理できること」がステップアップするにはクリアしなければならない条件として定められていたのです。これまで自分を支えてきた渇望が一瞬にして消えてしまい、本当に愕然となったことが鮮やかによみがえってきます。
これまでものともしなかった職場環境が一転して自分に襲い掛かってきました。周りの人達がいろいろと私を気遣ってくださったのですが、その頃には工場が従業員をあまり大事にしてくれていないことがわかったのもあって、それまで乗り越えてきた環境に向き合い続ける気力と体力は残っていませんでした。そして、わだかまりと挫折感を抱えて退職することになります。
「出てきた答え」
「自分には何もない、このままじゃ嫌だ。自分が生きた足跡を残したい!ものづくりの世界に飛び込めば形を残せるから、生きた足跡も残せるに違いない!」この渇望は本当に心の底から湧いてくるものでした。しかし、そのときはいろいろなことで起こる「焦り」も同居していました。その焦りを無視しようとすることで大事なことを見落としていたのです。
それは、「自分に可能なことで自分が作ったものを残したい!」自分が頑張って伸ばした手で社会とつながりたいという思いでした。もし冷静であったならば、同じ「ものづくり」の世界に飛び込むとしても、大量生産の工場だけでなく、伝統工芸の道に進むといった他の選択肢もありました。自分のこころにちゃんと向き合うことをしなかったから、越えられない壁にぶつかってわだかまりと挫折感を抱えて退職することになったのです。
そういった経験があって、今自分のこころに向き合う時はどこまでも掘り下げて考えることにしています。「そうしたいと思うのはなぜ?こんなことになったらどうする?その理由はなに?」ということを徹底して考えるのです。特に気をつけていることは、そのときに「自分の見栄」「お金のこと」「世間体」「どうしても逃げたくなるもの」「周りの人達とのつながり」「親の存在」といったすごく気になる事柄を徹底して取り除くことです。自分の汚い部分から逃げない。このことが自分と向き合うときに必要なのです。
とりわけ「親の存在」は大変重要な要素です。くろねこの両親は幸いにも二人とも元気です。くろねこの事を気にかけ支えてくれるとても大切な存在です。でも命には必ず終わりがきます。くろねこより両親が先に旅立つでしょう。そのことを思うとくろねこはとても辛いです。両親も今のくろねこを置いて旅立つことは心配だ、何もしてあげられなくなることは辛いと考えています。
だからこそ、自分のこころにあるいろいろな事柄を徹底して外していって、「ひとりの人間」としてのくろねこがどのように生きたいのか、自分のこころの一番深いところでは何を求めているのかを見つけようとしています。そのうえで出てきた答えが「今の環境から離れる」といった大きな変化につながる事柄に至ったとしても、なしくずしではなく今の自分に必要だからそうする、それがゴールではなく生きて行くなかでのステップのひとつなんだと、くろねこはそれを冷静かつ前向きにとらえることができると信じています。
おわりに
最後に、私たち障害者を支援してくださる皆様、日頃のご尽力に心から感謝いたします。くろねこから皆様にひとつお願いがあります。私たちが自分のこころに向き合って苦しんでいる時にどうか手伝ってください。
私たち障害者にもひとつずつそれぞれに「生きたい」という望みがあります。ただ、どんなふうに生きたいのかは障害や様々な事情の為にうまく表現できずに苦しむこともあります。そんなとき、周囲の方々からの手助けがあれば新たに気付きが生まれ、表現できるようになれます。こころに向き合うことができたとき、そのときには皆様からのご支援がそれまでより何倍も説得力と効果にめぐまれたものになるはずです。くろねこも努力を続けていきます。どうぞよろしくお願いいたします。最後までご覧くださり、ありがとうございました。