広がる農福連携(のうふくれんけい)〜障害者と農業の未来のために
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みなさん、「農福連携」って言葉は聞いたことありますか? 農業と福祉、こちらの意外な連携が今注目を集めています。本コラムでは農福連携についてわかりやすく解説したいと思います。
農福連携って何?
現在、日本の農業は農業の担い手が高齢化したり、若い世代が都市に移り住んだりと衰退の傾向にあります。農村部では水田や畑などが、活用されないまま荒れている状態のものがよく見かけられるようになりました。
また、障害者、高齢者、生活困窮者、ニートなどは技術や経験不足などにより就労が限られていたり、賃金や工賃が低いなどの課題があります。そこで双方のニーズをマッチさせたのが、この農福連携なのです。
障害者就労の課題
身体障害者、知的障害者、精神障害者の就業率は、一般よりかなり低いのが現状です。特に精神障害者については、20歳~24歳までの就業率は26.3%(平成18年7月1日 総務省「労働力調査年報」より)をピークに60歳~64歳になると8.2%となっています。
障害者は就労の意欲はあっても、過去に職場で障害への理解がなく、再就職へ抵抗を感じている方、スキルやコミュニケーションに自信がない方、就労場所が見つからない方など事情は様々です。
障害者が日々通う障害福祉サービスは主に以下に分類できます。 ※利用者数は平成25年10月調べ(小規模作業所のみ平成24年4月調べ)
・就労移行支援(約2.4万人)
・就労継続支援A型、福祉工場(約3.0万人)
・就労継続支援B型、旧法授産施設(約16.2万人)
・小規模作業所(約0.6万人))
・地域活動支援センター
障害者人口が一番多い就労継続支援B型ですが、一ヶ月の工賃は約1万4000円ほどで障害者年金を受け取っていても自立するには難しいと言わざるをえません。
農業(受け入れ)側の課題
一方、農業従事者側は障害者雇用に対し、「障害者に適した業務の特定に対して不安である」、「障害者の事故や怪我を未然にどう防げばよいかわからない」などの声をあげています。そこで、農林水産省は以下のようなステップを推奨しています。
障害者支援機関と連携をとりつつ、農業体験や実習などの機会を通して障害者とコミュニケーションを図る
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施設外就労として、障害者施設と作業の請負契約を結び、障害者が施設職員と連携して作業するところを確認する
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障害の特性や障害者の個性に合わせた作業工程を検討したうえで、障害者を雇用する
このようにいきなり直接雇用ということではなく、支援機関と相談しながら、段階的に雇用を検討すると徐々に不安も払拭できるのではないでしょうか。
国も農福連携を推進
農林水産省も障害者を雇用される雇い主のために障害者就労マニュアルを作成したり、フォーラムやセミナーを開いたりするなど、農福連携を意欲的に推進しています。また、助成金や助成制度なども豊富にあり、資金面やサポート面で不安のある雇い主の方も一歩を踏み出しやすいようになっています。
これまでの事例では、多くの障害者が実際に工賃がアップしたり、収穫された野菜を見て表情が明るくなったり、要領に慣れると社員よりも摘み取り作業が上手になったり、とそれぞれの生活に良い変化が表れています。受け入れ側の自治体や団体も、町おこしに結びつけたり、法人化するなど様々な活動をしています。
今後、障害者と農業を結びつける動きはもっと活発になっていくことでしょう。
参考文献
障がい者の力をかりた「農福連携」で、耕作放棄地を再生
https://hbol.jp/
総務省統計局 平成18年 労働力調査年報(基本集計)
http://www.stat.go.jp/