あたりまえの『普通』を目指す、「ノーマライゼーション」とは?
暮らしノーマライゼーションって何?
皆さんは、ノーマライゼーションという言葉を知っていますか?
「ノーマライゼーション(=normalization)」とは、1960年代に北欧諸国から始まった社会福祉をめぐる社会理念の一つです。障害者と健常者は、お互いが特別に区別されることなく、障害があっても健常者と均等にあたりまえに生活できるような社会こそがノーマルな社会であるという考え方、あるいはそのような社会を実現するための取り組みを指します。
福祉におけるノーマライゼーションの歴史は、約50年前にデンマークで起こった障害児施設の待遇改善運動がその起源とされ、それ以降、世界中のさまざまな場所でノーマライゼーションの理念・運動が広がってきました。後に生まれたバリアフリーやユニバーサルデザインは、その考えを体現する取り組みとして発展を遂げ、今日に至っています。
ノーマライゼーションが浸透すると…
さて、ノーマライゼーションの考え方が浸透していくと、私たちを取り巻く社会はどんな風に変わっていくのでしょうか。
まずは、ビジネスの世界。いわゆる「ダイバーシティ経営」です。企業によっては「ダイバーシティ&インクルージョン経営」と掲げるところもあります。多様なバッググラウンドをもつ人材(=ダイバーシティ)を組織に受け入れ、一人ひとりの意見やアイデアを活かす(=インクルージョン)ことで、めまぐるしく変化するビジネス環境と多様化する市場に対応し、新製品の開発や顧客満足度の向上といった組織の競争力を上げる経営戦略です。
価値観の多様化、グローバル化(国際競争)、少子高齢化など直面すべき問題が山積みの現代、競争力を向上させるには、このノーマライゼーションを受け入れるか否かにかかっているといってもよいかもしれません。
それから、ノーマライゼーションの考え方が浸透すると、人々がお互いに認められる社会になっているといえます。ノーマライゼーションを理解して誰とでもコミュニケートできる社会になれば、今までになかったムーブメントや技術革新、新しい考え方が生まれる可能性も高まります。
広がる、広げる。ノーマライゼーション
筆者はいま就職活動をしていますが、企業の採用サイトを開くと「ノーマライゼーション」という言葉によく出会います。CSR(企業の社会的責任)の一環としてノーマライゼーションの理念を尊重し、障害者の採用を積極的に進める企業も増えているようです。
ノーマライゼーションは、さまざまな背景をもつ人々が心の垣根を取り払い、誰もが『普通に』生きるためのキーワード。私も私なりのノーマライゼーションを「他人ごと」でなく「自分ごと」として考えることから始めたいと思います。