アドラー心理学に学ぶ、劣等感の『使い方』
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「まんがでやさしくわかるアドラー心理学」という漫画の中で「劣等感」にまつわるエピソードが出てきます。劣等感。筆者もいつも抱えていて、いつか克服したいと思っていた課題のひとつです。そこで今回は、アドラー心理学に学ぶ「劣等感」についてお伝えしたいと思います。
「劣等」にまつわる3つのキーワード
劣等感のお話の前に、「劣等」にかかわる3つの言葉を定義したいと思います。
●劣等性:身体の器官が客観的に見ても劣等である事実
●劣等感:主観的に、自分が何らかの属性を劣等だと感じること
●劣等コンプレックス:自分が劣等であることをひけらかして、人生でとりくまなければならない課題(ライフタスク)を避けようとすること
劣等性と劣等感の違いを一言でいえば「劣等性は、身体的・心理的な客観的事実」「劣等感は、劣等だと感じる主体的意見」です。劣等コンプレックスは、アドラーによれば、「異常な劣等感」で、仕事・交友・愛の課題を避けるための口実として、自分の劣等性・劣等感をひけらかす勇気に欠けた態度と行動なのだそうです。
劣等感を「どう使うか」が大切
それでは、今回のテーマ「劣等感」についてみていきたいと思います。
アドラー心理学では、劣等感を他者との比較だけでなく、こうありたいと思う目標と他者の比較だけでなく、こうありたいと思う目標と現実の自分とのギャップに直面したときに抱く陰性感情(みじめさ・悔しさ・腹立たしさ・羨ましさ・焦り・不安・落胆・怒りなど)を総称して劣等感といっています。
一般的に「劣等感」というとあまり好ましくない印象がありますが、アドラーは劣等感を「健康で正常な努力と成長の刺激」で「すべての人は劣等感を持ち、成功と優位性を追求する。このことがまさに精神生活を構成する」と言っているので、その意味で、劣等感について次の2つのように表現することができます。
①劣等感は、目標を持ち、よりよく生きようとすることに伴う感情
②劣等感はかけがえのない友で、あなたが今日あるのを振り返ってみると「劣等感のおかげさま」といってよい部分がかなりある
こう考えてみると、劣等感そのものが問題なのではなく、劣等感をどう使うかが重要なのです。
アドラーは性格の形成についても、遺伝などの身体面や環境の影響を認めながら、最終的にその人の性格を決める要因はその人自身だととらえています。つまり、私的論理にこだわり続けて不自由な考え方から抜けだせず非建設な対応をするのも、逆に建設的対応に向かうのも『自分次第』ということです。
あなたを刺激し突き動かす「劣等感」
ちなみに、劣等感の非建設的な対応としては
①無理に押し殺そうとする
②自分を憐れむ材料にする
③他者を巻き込む
の3つです。無理に押し殺そうとして健康を害することもあれば、自分を憐れんでみじめな気分になったり、あげくに他者を巻き込んで大騒ぎに――。こうなるともはや「劣等コンプレックス」です。
しかし多くの場合、現状をより良くしていこうと劣等感の建設的な対応をしてきた人も多いと思います。「あのとき、こう感じて、こう行動して、ある結果に至った」ということが成功・失敗の結果に限らず間違いなくあります。「なんとかしなければ」「もっと・・・したい」と、その人を突き動かす心理作用として、劣等感が少なからずあなたを刺激したはずです。
例えば私は他者に対して劣等感が常にあり、人の2倍努力をしないと落ち着かないのですが、これも自己成長のモチベーションになっているのなら、劣等感はあってもよいし、もしかしたらもう克服しているのかもしれません。きっとこれを読んでくださる方も、劣等感を味方にしながら、現在の自分を築き上げてきたのです。大切なのは『劣等感と向き合うこと』ではないでしょうか。
参考文献:
○岩井俊憲著『まんがでやさしくわかるアドラー心理学』日本能率協会マネジメントセンター/2014年