認知行動療法における10の思考の歪みとは
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認知行動療法の「認知へのアプローチ法」では、「非適応的な認知」(生きづらさの原因となっている、歪んだ捉え方)から「適応的な認知」(事実や証拠に着目した、適切な捉え方)へと変えていくのを目標とします。では、実際に「非適応的な認知」にはどのようなものがあるのか、一緒に学んでいきましょう。
つらい気持ちになる…のは、自動思考のせいかも?
つらい気持ちになった時、皆さんはどう考えますか?鬱陶しい雨のせいにしますか?何か失礼なことを言った他者のせいにしますか?失敗してしまった自分を責めますか?
では、こういう風に考えたことはありますか?「つらい気分を作り出しているのは、他でもない自分の思考のクセである」。
もちろん、私たちが自身や他者と関わり生活をしていく中で、「思考のクセ」だけでは説明がつかないことはたくさんあります。しかしながら、やはり歪んだ「思考のクセ」に着目し、トレーニングをすることは大切です。それによって、つらくなる必要のない時にまでつらくなってしまうのを防いだり、つらさを軽減して、ものごとを冷静に捉えることができるようになります。
認知行動療法では、歪んだものごとの捉え方を「10の推論の誤り」として、改善に努めていきます。
10種類の推論の誤り
1 全か無か思考
白か黒かで考えてしまう、中間のない二者択一的思考です。
例:「仕事でミスをしてしまった。自分は仕事ができない。」
2 一般化のしすぎ
一つ良くないことがあると、全てそうだと思ってしまいます。
例:「誰のことも信用できない。」
3 心のフィルター
一つの良くないことに目を奪われ、他の良いことが見えなくなります。
「私の人生には良い事なんか一つもなかった。」
4 マイナス化思考
全てのことをネガティブに解釈をしてしまいます。
「私のことを責めるために、そういうことを言うのだな。」
5 結論の飛躍
根拠もなく、悲観的な結論の予測をしてしまいます。
「僕なんかには挨拶したくないのだな。」(相手はたまたま挨拶し忘れただけ。)
6 拡大解釈と過小評価
自身の失敗や短所は過大に捉え、成功や長所を過小評価してしまいます。
「他の人は皆優秀なのに、私だけ無能だ。」
7 感情的決めつけ
理性で判断せず、自分の感情だけでものごとを判断してしまいます。
「認知行動療法なんかで病気が改善されるわけがない。」
8 すべき思考
自分で決めた基準で自分に過度のプレッシャーをかけてしまいます。
「自分は失敗してはいけない。」
9 レッテル貼り
自分自身に極端にネガティブなレッテルを貼ってしまいます。「②一般化のしすぎ」の極端なバージョンです。他人の欠点を一般化して、酷いレッテルを貼ってしまうこともあります。
例:「自分はダメ人間だ。」
10 個人化
自分に関係ないことまで、自分に関連づけてしまいます。例えば、良くないことが起こると全て自分のせいのように思ってしまいます。
例:「あの人が不機嫌なのは、私のせいだ。」
トレーニングの方法
セラピストの方と一緒に練習を行ったり、グループセラピーに参加するのも手ですが、ここではもっと気軽な方法をご紹介します。
例えば、心理療法の学べる本を使って、ワークをしてみましょう。認知行動療法の自助本の有効性は研究もされており、うつ症状の改善に役立つとされています。
e-ラーニング形式のインターネット学習もあります。「こころネット・パーソナル」(http://cbt.kokoronet.ne.jp)などが有名です。
どの方法においても、基本的な考え方としては、感情が高ぶった時の「状況・気分・自身の行動・身体反応・思考」などを書き出したり、数値で表したりします。それによって、客観的な目線を養い、適応的な認知を少しずつ身に付けていきます。
「10の推論の誤り」をご覧になられて、ご自身にあてはまるものはありましたか?私自身は、深く頷かずにはいられません。認知行動療法で身に付けた思考法は、単なる感情論ではなく、事実や証拠に基づいたものの見方に繋がり、人生において大変役立つと思います。
参考文献
福井至、貝谷久宜著『図解やさしくわかる認知行動療法』ナツメ社/2012年