精神障害者にとっての「働く」の今
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精神障害を持っているがゆえに、働くことが難しい…。でも、本当に諦めるべきなのでしょうか?どれだけよくなれば働いてもいいのか?体調を完璧にすることを目指していたら、なかなか一歩は踏み出せませんよね。
精神障害者の雇用の現状
障害者雇用促進法では、「法定雇用率」というものが定められています。例えば、「従業員数50人以上の民間企業は、全従業員のうち、2.0%以上の割合で障害者を雇わなければいけない」と定められています。また、法定雇用率を達成できていない企業は、法律に基づいて、行政指導を受けたり、企業名の発表をされたりします。
その法定雇用率に、現時点では精神障害者は含まれていませんが、2018年4月より、精神障害者も含まれることが決定しました。これによって、精神障害者の雇用がさらに促進されると見込まれています。
精神障害者にとって「働く」とは
『精神障害者枠で働く』の著者の里中高志さんは、働かないで穏やかな人生を送るのも選択肢の一つであるが、仕事を通じてその人らしさを取り戻したり、人生がより豊かになるケースも目の当たりにしてきたと言います。精神障害者の病気の治癒において、「いかに地域で暮らすか」よりも「いかに働くか」に焦点が移ってきているとも言います。また、健康な部分のない「障害者」も存在しないと言います。
働くことでストレスが溜まって病状が悪化するケースもありますが、働けないことが大きなストレスになっているケースもあります。主治医とよく相談した上で、方針を決めましょう。
精神障害者が働くにあたっての心構え
まず、仕事を続ける上で、薬の調整が上手くいっていることが非常に大切です。現在飲んでいる薬が合わないと感じている方は、就職活動を始める前に、主治医と服薬調整をするとよいと思います。
また、精神障害者であることを気にしすぎて、「ふつうにしないと」などと思い込み、昼食時の服薬ができなくなる、などのケースもあるようです。まずは、そういう「ふつう」から解放されると、色々と楽になるはずです。
また、フルタイムにこだわらずに、ご自分のキャパに合った仕事を探すことも重要です。例えば、朝型の人なら朝の仕事を探す、夜型の人なら遅めの仕事を探す、勤務時間を少しずつから増やしていく、など様々な選択肢があります。
周囲の方は何ができるか
第一に、就職してからも専門家などによるサポート体制を継続していくことが支えになります。例えば、主治医・カウンセラー・相談員などです。もちろん、この中にはご家族などが含まれている場合もあります。それプラス、就職後に社内で相談できる方がいると大変心強いです。特定の方に相談役になってもらったり、社内のジョブコーチに担当していただく形などがあります。また、就労移行支援事業所のスタッフの方々に継続してサポートしていただけるケースもありますし、就業・生活支援センターに登録することも可能です。
なによりも、周囲の方々の心構えとしては、「この人はもう働けない。再発して欲しくないから働かないで欲しい。」ではなく、もっと冷静に当事者の気持ちや病状を把握して応援できるとよいです。
今の時代は、お薬もよくなっていたり、法定雇用率も定められていたり、少しずつですが、障害を持つ方にも働きやすい環境が整ってきています。働くことで元気になれるかもしれません。今、迷っている方は、ぜひ今一度「働く」ことについて考えてみてはいかがでしょうか。
参考文献
厚生労働省 障害者雇用率制度
http://www.mhlw.go.jp
里中高志著『精神障害枠で働く』中央法規/2014年