発達障害のある我が子とのスキンシップ〜当事者目線から:パパとママのことが好きです

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発達障害をもつ我が子とのコミュニケーションにおいて、スキンシップで悩む親が多いと聞きます。発達障害の我が子に抱っこや頭をなでることを拒否されると、親は嫌われているのではと寂しさや不安を覚えます。しかし発達の当事者自身は、親のことをどう思っているのでしょうか。答えは一人ひとり違うと思いますが、私自身の幼少体験や当事者著書から感じたことについて紹介します。

言葉のやりとりができなくても

幼少期の私は、名前を呼ばれても反応も言葉もない子どもだったそうです。ただし私の場合は触覚過敏がなく、スキンシップは平気なほうです。幼少期から私の唯一の味方になってくれた母とのスキンシップは、私にとってなにより安らげる時間だったのでしょう。私のほうから母へ近づいて、ハグやチューをしてきたり、してほしいことがある時は母の手をつかんだりしたそうです。当時の私には、自分の気持ちを言葉で発することも、周囲の言葉の意味を理解する術もありませんでした。振り返ってみると、私と母が一緒に過ごしてきた時間は長いとはいえません。仕事のあった母は、生後間もなく私を保育所に預け続けました。私は、家庭や学校の都合によって、海外と日本を行き来していたので、母と過ごせた時間は私の人生の5割ほどだったと思います。それでも周囲が私に心配あるいは呆れを向ける中、母だけは、発達障害の特性を含めて娘の私を愛してくれました、今もなお。それだけは、幼い私にもひしひしと伝わっていたと思います。他の方の事例では、イケメンピアニストと謳われる紀平凱(かい)成(る)さんも、自閉症の傾向があるため、言葉の発達もゆっくりで視線を合わさなかったそうです。しかし幼い頃の凱(かい)成(る)さんは、お母さんが落ち込んでいると静かに抱きつき、慰めるように頭をなでてくれたそうです。ビデオ記録にも、凱(かい)成(る)さんが両親に抱きついてチューをし、自分なり愛情表現をしている様子がありました。

触れ合うことができなくても

私とは対照的に、触覚過敏のため抱っこをされることを嫌がる発達障害者の事例も一部紹介します。アメリカの動物学者であり、家畜のストレス等を考慮した施設を設計したテンプル・グランディンさん。彼女は、自閉スペクトラム症です。著書においては、彼女は触感過敏なため、母親に抱きしめられることを拒否する描写があります。そのことを、グランディンさん自身は申し訳なく思うところがあったことが記されています。グランディンさん自身は、自分の障害に対して思うところはありつつも、必要なサポートをしてくれる母親のことを信頼しています。ただ、母親への想いを言葉やスキンシップで伝えることのできない自分を許してほしい、と記しています。前述でふれた凱(かい)成(る)さんもそうですが、言葉や視線で表現することはできなくても、親のことを確かに好きなのです。発達障害児・者の中には、相手をいきなり叩く、大声をあげる、趣味の話を続けるなど、周囲から見れば不可解な行動を見せることもあります。しかし実際は、相手に対する愛情や信頼を上手く伝えることができずに、もどかしさを覚えているのは、彼ら自身だと思います。「あなたに興味があります」、という思いをスキンシップや言葉で伝えることが苦手な彼らは、それ以外の方法で自分の気持ちをどう伝えてくるのか。我が子の日頃の様子をじっくり見つめてみたり、他の人に相談してみたりすれば、その子なりの伝え方が見えてくるのかもしれません。

ちゃんと覚えていることは

私自身の幼かった頃の記憶を占めるのは、自分の好きなアニメや漫画など空想が多いです。全てとは言えませんが残念なことに、幼かった私に優しくしてくださった人達の顔や名前などのプロフィールを思い出せません。小学一年生から五年生あたりまえで知り合った方々で、私を買い物へ連れていってくれた気さくなおじさんや、手芸を手伝ってくれた近所のおばさん。彼らのことも、一緒に何かしたことは覚えていますが、名前と顔と住所は思い出せません。それでも私が今も確かに覚えていることは、あります。周囲の多くは、私のことを「礼儀知らずな子ども」とみなす中、おじさんとおばさんだけは、そんな私を可愛がってくださった優しい方であったこと。母に関しては、たとえ仕事が多忙で一緒にいる時間が少なくても、母は私にとって一番の味方であること。たとえ名前や顔が思い出せなくても、それだけは心に残っています。幼少期から周囲に叱られたりすることの多い発達障害児・者は、本当に優しくしてくれる人を見つける直感力に優れていると思います。

まとめ

・発達障害児・者は、相手に対する関心や愛情「表現」に困っている方が多いこと。
・その背景に、発達障害の感覚過敏やコミュニケーションの難しさなどがあること。
・彼らは、友好的な言葉やスキンシップ以外の方法で、自分の想いを伝えること。周囲は、本人なりの「表現」を大切にする必要があること。

あなたの愛情は「優しさ」として、本人の心にちゃんと響いています。私も、あなた(親や信頼できる人)が私に与えてくれた「優しさ」を覚えています。たとえ、あなたと話せなくても、触れ合うことができなくても、名前や顔を思い出せなくても。周囲はそう信じながら本人と付き合っていただけると幸いです。

最後まで、ご拝読ありがとうございました。 

参考文献

・「イケメン天才ピアニストの真実(紀平凱成)」『ザ!世界仰天ニュース』(2019年1月29日放送)
http://www.ntv.co.jp/gyoten/index.html

・テンプル・グランディン(1994)『我、自閉症に生まれて』学研出版

・テンプル・グランディンのプロフィール「Wikipedia」
https://ja.wikipedia.org/

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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