知能指数(IQ)と発達障害の関係~発達障害がある人に天才が多い!?

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天才と聞くと、多くの方は知能指数(IQ)の高い人をイメージするのではないでしょうか?発達障害とは、生まれつきの脳機能の偏りによって、心身の発達等の様々な側面でアンバラスが生じている状態です。知能指数(IQ)の検査において、発達障害者は平均値を下回っていたり、アンバランスな数値を出したりします。

一方で、偉大なる功績を成した研究者や企業のトップ、芸術家等の「天才」のうち、発達障害に強く当てはまる人達は多いです。マイクロソフトのビル・ゲイツさん、俳優のトム・クルーズさん、動物学者のテンプル・グランディンさん、歴史を辿るとエジソンやアインシュタインも発達障害の特性がある、と言われています。天才にもよく見られる発達障害とIQの関係について、徹底解説します!

知能指数(IQ)と発達障害

発達障害の診断に使われる代表的なウェクスラー式知能検査をもとに、IQと発達障害の関係について解説します。

ウェクスラー式知能検査は、知能指数(全体的IQ)を言語性IQと動作性IQに分け、平均値を出します。さらに言語性IQは、言語理解と作動記憶、動作性IQは知覚統合と処理速度の※4つの下位能力に分けられます。IQ100を平均値とし、IQ70未満は知的障害と診断されます。知能研究のターマンは、IQ140以上の者を天才と定義しました。
言語性IQとは、知識や言葉の理解から、耳で聴く情報を理解する等、言語にまつわる能力です。
動作性IQとは、目に見える情報をすぐに理解・記憶する、手や体を動かすことが得意等、感覚と運動に関する能力です。具体的には、パズルや間違い探し等の視覚的な認知が得意、非言語的サインを理解できる、手作業が素早く器用な人等は、動作性IQが高いとされます。

発達障害の場合、言語性IQと動作性IQ、下位能力の間に大きな数値差が見られます。例えば、IQ120のAさんの数値を細かく見て見ると、動作性IQは平均以上に優れているのに、言語性IQの作動記憶は70を遥かに下回る等。全体的なIQは平均かそれ以上に高い、もしくは特定のIQは突出している、にも関わらず他の特定IQが平均を大きく下回る現象を、ディスクレパンシー(乖離)と呼びます。ディスクレパンシーが10~15以上ある場合、発達障害の可能性は非常に高いです。

※ウェクスラー式知能検査の詳細は、過去のコラム「アスペルガー症候群の診断・検査方法は?」を参照↓
https://shohgaisha.com

IQが示す「天才」の正体

そもそも、何をもって「天才」と呼ぶのでしょうか。天才とは、極めて優れた才能を生まれながらに備え、常人には成し得ない功績を成す存在と定義されます。他には、IQ140以上の頭脳を持つ者、専門分野で新たな創造と偉業を成した者等、定義は実に多様です。天才とまではいかなくても、物事を上手くこなす優れた素質や能力を持つ人を才能あり、と見なします。

ウェクスラー式知能検査の基準で見ると、Aさんは優秀なのか、平均的か、それとも平均を下回るのか、一概に評価できません。全体がバランスよく平均値を示す人を普通とするのであれば、Aさんのように発達障害は平均から外れている、というネガティブな見方をされてしまいます。しかし、よくよく考えて見てください。天才は特定の専門分野に突出している反面、それ以外は不器用で人並み以下であることが多いです。

IQの高さもとい頭の良さと才能がイコールとは限りません。むしろ平均値は正常と解釈されるIQにおいて、ディスクレパンシー(乖離)を示し、数値のばらつきが激しい発達障害者の中には、才能を発揮する方は少なくありません。人間の知的能力には、IQの数字だけでは計り知れない可能性が存在するのです。

ハワード・ガードナーの多重知能理論
ウェクスラーを含む一般的な知能検査は、主に言語・数学・知覚能力の高さを測ります。しかし、ガードナーは人間の知能には8つの多様な側面があるとしています。↓

①言語・語学知能:書く、読む、話す、聞く、理解等の言語能力
(作家、ライター、翻訳家、声優、政治家、リポーター等)

②数学・論理的知能:計算、論理的思考、推理
(エンジニア、プログラマー、会計士、経理、数学者、数学教師等)

③博物学的知能:知識が豊富、様々な事象の共通点を分析できる、自然に関心が深い
(科学者、研究職、医師、動植物関連の仕事等)

④音楽・リズム知能:楽器の演奏、歌、ダンス、作曲等
(歌手、演奏家、作曲家、ダンサー、調律師)

⑤身体・運動感覚的知能:スポーツ、運動能力、手先の器用さ等
(スポーツマン、体育教師、警察官、俳優等)

⑥対人的知能:人との関わり、コミュニケーション能力、共感
(カウンセラー、福祉職、精神科医、看護師等)

⑦視覚・空間的知能:目で見えるものや距離感等の観察と記憶が得意
(画家、写真家、デザイナー、建築家、外科医等)

⑧内省的知能:自己分析が得意、自分の目的や信念をはっきり持つ
(哲学者、作家、心理学者、発明家、宗教家等)

発達障害の人達のうち、これら8つの分野で活躍している方は多いです。ガードナーの多重知能は、自分がどの分野における関心・能力が高いのかを分析し、学力のみに限られない能力の「多様性」に着目する、優れた理論だと思います。

発達障害だから天才なのか

発達障害の診断基準として、コミュニケーションと社会性の障害、想像力の障害、不注意、衝動性、読み書き・算数障害等の特徴は、病気・障害としてネガティブに捉えられます。しかし、視点の転換と活用次第では、短所は長所になるのと同様、障害と見なされる特性も才能になり得るのです。↓

自閉スペクトラム症(ASD)の才能~研究職向き?~
・興味が著しく限定されている→特定の専門分野を深く追求できる。
・こだわりが強い→妥協せずに最後までやり遂げようとする、意志が強い。
・社会性・コミュニケーションの障害(空気が読めない、正直すぎる等)→世間体を気にせずに目的へ真っ直ぐ突き進む。自分の信念に嘘をつかない。

このようにASDの特性は、研究職等に必要とされる「勤勉性」や「誠実性」として花開く可能性を秘めています。またASDの中には、むしろ想像力と感性豊かな方もいます。そういう人達は、芸術面で素晴らしいものを創造します。常人であれば途中で根を上げてしまいそうな、同じ模様・同じデザインを延々と描き続けられるのは、強いこだわりと並ならぬ集中力のなせる業です。

ASDに当てはまる天才:アインシュタイン、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、ピアニスト紀平凱成さん等。

ADHDの才能~スポーツマンと芸術家肌?~
・不注意→あらゆる刺激に関心を向けられる→他の人には気付かないものに気付く、アイデアに溢れる。
・多動性→活発さは常に動きを求められる作業やスポーツに必要。体力がつく。
・衝動性→思いついたことをすぐ実行できる積極性と行動力。

ADHDの本質としては、変化に強く、変化を好みやすいことです。ADHDの特徴は、特に学校では授業に集中できない、忘れものが多い、成績が伸びない等、ネガティブに捉えられがちです。しかし、それはあくまで座学と学力を重視しがちな教育現場の基準に過ぎません。ADHDによく見られる、言葉や記号、耳で聞くよりも、手を動かす・目で見て具体的にイメージするタイプの人には、今の日本の教育は不利になりやすい、と考えます。しかし、LDの項目でも説明しますが、頭の良さは学力に限りません。
ADHDに当てはまる天才:エジソン、トム・クルーズ、スティーブ・ジョブズ等。

学習障害(LD)の才能~知性とアイデアに富む?~
学習障害の場合、文字や記号が歪んで見えるため書けない・読めない、数字の概念を頭でイメージできない等の特性ゆえに、学校では成績が伸びない、自信を失ってしまう等の生きづらさに直面します。とはいえ、学習障害の知的能力は平均以上であることが多く、できないことがある分、「できること」もたくさんあります。

学習障害(LD)の症状は人それぞれですが:
・書けないし、読むこともできない→耳で聞くことは理解できる。タブレットで文字を打てる。
・計算ができない→物差しを使う・線を引く工夫をすればできる。
・勉強全般が厳しい→スポーツや演劇、芸術等、勉強以外の分野を極める。

できないところばかりに着目するのではなく、むしろ「できること」を見つけ、そこを伸ばしていきます。そのほうが本人も自信と意欲をつけやすいです。さらに、できるところを伸ばしていくことで、そこから他にもできることを増やしていけます。もともと読み書き等が苦手であっても、遊びを凝らしたり、ゲーム感覚で学ばせたりすると、すんなり頭に入りやすいです。具体的には、文字や記号ではなく絵図を描いてもらう、積み木や砂等の物体に触れて動かす感覚に働きかけ、楽しさを感じてもらいます。

その最たるものが、俳優のトム・クルーズさんです。トムさんも、幼少期からADHDの傾向が強く、明るくて活発な質でした。しかし小学校に上がると、トムさんにはLDの読字障害が判明しました。トムさんは自分がバカなんだ、と恥ずかしさで怒り悲しみ、いじめにも苦しみました。しかし、トムさんの教師は彼の勉強をサポートし、「自信をつけるために、スポーツや演劇、美術等、勉強とは関係ない分野で能力を発揮しましょう」、と適切なアドバイスもしてくれました。結果、トムさんは演劇での才能を発揮し、有名な俳優として今も活躍しています。ちなみに、トムさんは台本の文字が読めないのですが、人に声を出して読んでもらっているそうです。しかし、台本のセリフを耳から聞いて、それをちゃんと覚えて演技しているというのは、すごいことだと思います。

LDに当てはまる天才:ジョン・F・ケネディ大統領、映画監督スピルバーグ、芸能人・黒柳徹子さんの他、文豪のゲーテも実は綴(つづ)りにハンディがあり、誤字脱字が絶えなかったそうです。

確かに特性が強すぎると、本人は日常生活で苦痛を感じ、周囲との衝突が増えます。生きづらさから生じる二次障害等のリスクを避けるために、発達障害の早期発見と療育、福祉的なサポートは大切です。発達障害の支援には、できないことをできるようにする訓練型サポート、とできるところを伸ばし、できないところはカバーする環境調整型サポートがあります。しかし発達障害の場合、環境調整型のサポートのほうが適しているのです。

例えば、防御力に強い少数派のカメが、多数派のうさぎのように走れることが望ましい、と周囲が言うとします。しかし、もともと走ることが難しいカメに、走る訓練をさせること自体が無茶なのです。たとえ走れたとしても、うさぎには到底及びません。ならば、もっと速く走れるように邪魔な甲羅を取ってしまうとします。するとそのカメは長所である甲羅まで失い、しかも結局うさぎのように速くは走れず、自信もやりがいも失ってしまいます。できないところやネガティブな所にばかり囚われると、本人の自己肯定感やヤル気の低下、特性から生じるせっかくの才能まで摘み取ってしまう危険性があるのです。

まとめ

・発達障害の特性は、ネガティブなものとして捉えられがちです。しかし、「空気が読めない・興味が狭い→世間体よりも自分の目的・関心をとことん追求できる」、と言ったように、見方を変えることによって、特性を長所として活かすことができます。

・発達障害者の場合、IQ全体の内、特定のIQは平均を大きく上回る一方、別のIQは平均をかなり下回る等、大きな乖離(ディスクレパンシー)を確認できます。

・IQの高い人が天才、IQの数値が低い人は能力が低い、という方式は必ずしもイコールではありません。知能には、多様な側面と可能性が秘められています。

・むしろ、人並みにできないことが多くても、特定分野で非常に高い能力を発揮できる方が、発達障害には多いです。そして、常人では到底成し得ないことをやり遂げる存在を、天才と呼びます。

・発達障害のある人・子どものハンディをカバーしつつ、できるところ・才能を伸ばしていく環境調整型のサポートが適しています。

いかがでしたか。
発達障害には、「偏り・アンバランス」が生じているゆえに、特定の分野で突出した才能を見せ、中には偉業を成す天才も生まれます。むしろ、できないことが多いからこそ、唯一無二で数少ない「できること・関心のあること」に追求し、喜びを見出します。周りが見えなくなるほどの強いこだわりと関心で取り組んでいたものは、やがて才能、功績、プロの域へと自然に至るのです。

ただし、全ての人間が天才や有名なプロになるような、特別でなければいけない必要はありません。

本人の才能とやりがいを見出す意義として、ただ天才という特別な存在にするためよりも、もっと大切なことがあります。

それは、本人にとって幸せな人生を歩み、困難を切りひらいていくための武器として、才能と関心を見つけ、活かすこと。

そう信じています。

参考文献
・岡田尊司(2016)『アスペルガー症候群』幻冬舎新書

・岡田尊司(2012年)『発達障害と呼ばないで』幻冬舎新書

・野田あすか・他(2016)『発達障害のピアニストからの手紙』アスコム

・ドナ・ウィリアムズ(訳:河野万里子)(2000)『自閉症だったわたしへ』新潮文庫

・テンプル・グランディン他(1994)『我、自閉症に生まれて』学研

・星野仁彦(2017)『会社の中の発達障害 いつも嫌なことを言う上司、いつも迷惑をかける部下』集英社

・「8つの知能(MI)で自分の可能性を見つめ直す・ハワード・ガードナーの多重知能理論」日能研
http://www.nichinoken.co.jp

・「天才とは」コトバンク
https://kotobank.jp

・「才能とは」コトバンク
https://kotobank.jp

・「ウェクスラー式知能検査 活用ガイドライン」
http://www.rehab.go.jp

・「WAIS-IIIとは?~成人ADHDが理想の生活を目指すブログ~」
https://www.yomocracy.com

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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