無関心層にも届けるには~講演会や説明会だけでは啓発にならない

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目に見えない障害や、それに起因する二次障害、あまり知られていない難病などの講演会やシンポジウムなどはよく開かれています。しかし啓発活動としてはこれらに頼るだけだと不十分です。

講演会というのはその分野に興味関心のある人間か、ある程度知識のある人間しか参加しないと断言できます。全く知識がないばかりか異世界の出来事として片付けている層にはほとんど届かず、多くの人が知らない状態になってしまうのです。

興味を持った人に啓発してより深く知ってもらうのも大切ですが、同時に「知るきっかけ」を提供するため無理のない範囲で目立つこともまた必要となります。

関心のある人しか来ない

講演会やシンポジウムのテーマは様々です。「ADHDについて」「不登校について」「就活うつについて」等とある中で、あなたならばどれを聞きに行きたいですか?当然ながら時間と労力は有限ですので、自分にとって近しい話に食指が動くはずです。

例えばADHDの当事者やその家族であれば、ADHDを取り扱う講演会には(よほど問題のある講師でない限り)傾聴しようとします。しかし、ADHDと縁のない人生を送っている人からすれば、世界的権威のある講師が行う講演会であろうとも足を運ぶ必要性を感じない筈です。情報のキャッチすらしていません。何故ならばADHDの知識がその人にとって必要ないからです。

講演会やシンポジウムを何度開いても、訪れて傾聴してくれるのは扱うテーマについて関心のある人だけです。障害者家族から精神科医まで、「新しい知識が欲しい人」から「質疑応答で講師と語り合ってみたい人」まで、知識量や動機はピンキリでしょう。しかし、「そのテーマに興味関心がある」という指向はわざわざ足を運ぶための原動力であり前提条件となるのです。

知識を深める上で講演会やシンポジウムを開いたり聞きに行ったりするのは極めて有効でしょう。ただ、知識量のある意識の高い人間だけが集まって内輪で盛り上がっているに過ぎず、単体では啓発活動としてとても十分とは言えません。いくら有意義な講演会を経験しても、外を見渡せば何も知らない無関心層が圧倒的多数を占めている状況に変わりないのです。

無関心層は下手をすれば逃げる

向こうから講演会が来てくれる状況であっても指向が合わなければ無為なものです。小中高で1度くらいは外部から招かれた講師が貴重な話を聞かせてくれる機会があったでしょうが、どのような気持ちで受けましたか?学校での講演は授業で教わらないことを子どもたちに提供できる有意義なものと大人目線では思うでしょう。

しかし当事者たる子どもの目線では「長時間座って長い話を聞かされ、終わっても感想文を書かされる面倒臭いイベント」程度に思っているのが大半です。そもそも興味のない話を無理矢理聞かされてもやる気は湧かないでしょう。講師のスキル次第では途中で興味が湧いてくることもあるでしょうが。

少年少女時代ほど詰め込む余裕のない大人が、わざわざ興味のない講演会を聞きに行くことなど無いでしょう。こうしている今でも自分にとって遠い分野の講演会やシンポジウムがどこかで開催されているでしょうが、その存在すら認知していない筈です。

そうした事実に直面すると無関心層を非難したりいびったりしたくなるものですが、これは人格否定と思想の押し付けが組み合わさっており大変宜しくないです。過激思想家の暴走として一蹴されるでしょう。

例え話ですが、「料理が出来ないのは自立できていないクズだ!」「理系に明るくないのは知能に問題がある!」などと声高に叫ぶ人が居たらどう思うでしょうか。そう言われて「料理を始めよう」「理数系を勉強しなおそう」となるでしょうか?

不特定多数へ向けて無知をなじるような態度をとれば、自分だけでなく知ってもらいたかった分野までも嫌われてしまいます。一般人との溝を作ってしまうようでは、より多くの人に知ってもらう啓発の目的とは逆行するでしょう。「どうして世間は分かってくれないの!」とイラつく気持ちも分かりますが、怒り出すのはせめて隠れてやって欲しいです。

無理のない範囲で目立つことをせよ

何も知らない一般人にも広く知ってもらうには、堅苦しい講演会などではなくキャッチーで目立つことを行う必要があります。勿論、無茶をしたり炎上したりしない範囲という当たり前の制限はありますが、目立たなければ周知されないのもまた真理です。

かといって具体的に何をすればいいのか問われても分からないでしょう。例として一般社団法人「Get in touch」の代表である東ちづるさんの取り組みを紹介します。

「Get in touch」が主に行っているのは、ライブやショーなど多方面にわたるエンタメ活動です。代表作は「月夜のからくりハウス」という公演で、ミゼットレスラーや車椅子ダンサーなどマイノリティの一流パフォーマーが集結しそれぞれの得意分野を披露します。

活動当初は骨髄バンクなどの福祉的活動が中心でしたが、講演会やシンポジウムを重ねる中で東さんは「ほとんど見知った顔しかいない」「医療関係者や当事者家族しか聞いていない」と感じ、興味関心のない人を巻き込む方法について考え始めました。エンタメ活動が一つの答えとなったのです。

エンタメ方面へ舵を切っていき、始めこそ「エンターテイメント化は如何なものか」「パフォーマンスで分かってもらえる筈がない」と専門筋から酷評されることもありました。しかしターゲットである一般層からはマイノリティについて知ってもらう契機になったと好評でした。具体的には、4月2日の世界自閉症啓発デーに合わせたイベントにより自閉症協会HPへのアクセス数が大幅に伸びるという成果を挙げています。

このほか東さんらの取り組みや想いなどについてはこちらの記事に詳しく載っております。あわせてお読みください。

ただ講演を繰り返すだけでは、知識を深めるには良くても啓発活動としては不十分です。無茶のない範囲で何か目立つことをしなければ、知識の全くない一般の素人に知るきっかけを提供する事すら叶いません。世界の大きな括りから見れば明らかに極小の専門筋が、ただ内輪で盛り上がっているだけではどうしようもないのです。

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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