上肢障害者・言語障害者向け会話補助装置「レッツ・チャット」クラウドファンディングのお知らせ

身体障害
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重度の肢体障害者や言語障害者が意思疎通できるよう開発された会話補助装置「レッツ・チャット」がかつてパナソニックより2003年9月から発売されていました。パソコンと無関係であることにより、不意なフリーズを起こしたり専門知識を要したりすることもなく安定したコミュニケーションが取れるという当事者にとって画期的な商品だったのです。しかし2019年7月に「代わりとなる情報伝達手段も整ってきた」ということで販売終了となりました。

ところが、フリーズしない安定性から「レッツ・チャット」の需要は絶えませんでした。かつて「レッツ・チャット」製作の中心となっていた松尾光晴さんは、代替機となる新世代の会話補助装置を世に送り出すためクラウドファンディングで開発・製作・広報などの資金を募っています。

「レッツ・チャット」を必要とする重い障害はいつ誰が負うのか分かりません。しかし「レッツ・チャット」は既に生産を終了しており、新しいものは二度と市場に出ないのです。重度障害者の安定したコミュニケーション手段が生き長らえるかどうかはこのクラウドファンディングにかかっているといっても過言ではありません。現在の目標額は1,000万円(開発費は総額3,000万円)、期限は3月19日(木)23:00までです。

先代となる「レッツ・チャット」について

旧「レッツ・チャット」の主な対象はALS患者で、これは松尾さんの父親や友人に影響されてのことです。しかし他の肢体障害などでも活用でき、実際にALS以外の当事者にも愛用者はいます。

ALS患者のコミュニケーション手段として眼球運動と文字盤を使ったものがありますが、介助者のスキルが必要なうえに1文字ずつが長く、時間がかかったり、視線入力では目が疲れる等の難点がありました。実際に「時間稼ぎですか?」と辛辣な言葉を投げかけられた患者もいます。ところが、この不便な文字盤が「レッツ・チャット」の原点でもあるのです。

「レッツ・チャット」は文字盤を3ブロック3フェーズに分けて順々に点滅させ、言いたい文字やメッセージのところで可動部位に応じた決定スイッチを押下して文章を作り「発音」を選択して文章を読み上げます。メッセージ盤では「暑いor寒い」といった対義語は縦でなく横に並べ、入力ミスで逆のことを言わないよう気配りが為されています

時計機能ひとつとっても実際のALS患者が持ちうる不安や悩みに寄り添ったインターフェースばかりで、松尾さんが父親を介護し友人から意見され多くのALS患者と接しながら洗練されていったツールと言えます。本体はコンパクトで持ち運びやすいだけでなく、フレキシブルアームや音声ガイドっといったオプションもあり、様々な複合障害や姿勢に応えています。

中でも「レッツ・チャット」最大の特徴は特定のOSに依存しない完全独立であることです。パソコン上で動かすソフトでは、フリーズやエラーによって動かなくなる可能性があり、その弊害が重大であることを松尾さんは開発前から見据えていました。そこで、言うなれば「巨大な電卓」を作る必要があり、フリーズやエラーはおろか定期的なソフトウェアのアップデートも必要なく、OSもないので瞬時に起動できます。

次世代向けのアップデートをした代替機を製作する

ALS患者に寄り添って製作され高い練度で世に送り出された「レッツ・チャット」ですが、2019年7月に販売元のパナソニックが販売終了を決断したことで二度と生産されなくなりました。それでも「レッツ・チャット」を惜しむ声は絶えず、必要とするほど重い障害を負う人も将来出てくるでしょう。

そこで松尾さんはパナソニックを辞め独立し、形式上ゼロから再スタートすることにしたのです。これはフットワークを軽くしてきめ細やかに支援する目的もあるのですが、最大の目的は「レッツ・チャット」の代替機を早期に生産し販売まで漕ぎつけることです。

従来の単純さ・利便性・幅広いサポート機能はそのままに、液晶画面を大型化したり、本体からテレビやエアコンやスマホなどを操作したりと、現代の暮らしに見合った強化も行う予定です。名前すら決まっていない「代替機」ですが、生まれ変わるまでのスケジュールや資金計画は既に出来上がっています。

そして、その資金はクラウドファンディングで集めることになっています。最初の目標額は500万円で、しかも届かなければ全く入らないAll-or-Nothing方式をとっています。この500万円はなんとかクリアしましたが、本当の開発費は約3,000万円!まだまだハードルがあります。

クラウドファンディングを採用した理由は、ALSなど重度の身体障害があることと彼らの意思伝達を補助する器具が存在することを多くの人に知ってもらうためでもあります。

父親がALSを発病し、ALSの友達が出来た

松尾さんの父親は晩年ALSを患い、満足に意思疎通できないまま亡くなられました。その悔しい思いが「レッツ・チャット」の製作販売に繋がっています。また、ALSの身内を介助する中で多くのALS患者やその関係者らと交流し、関連するボランティアにも積極的に参加しています。

開発当初にもう一人松尾さんの生き方を変えたのが友人の「村上さん」という松尾さんと同い年の方で、彼もALS患者でした。難病で仕事を失ってもなおパソコンを通じて新たな活動を始めようとする姿勢に心打たれ、これも「レッツ・チャット」を製作する原動力となりました。

村上さんは一度「レッツ・チャット」の試作品について感想を求められたことがあり、「デカくて重いから、落ちてくると危ない。」と忌憚なく述べたそうです。そこから松尾さんは「レッツ・チャット」の小型化と軽量化を重視し、製品化まで守り続けました。製品化した「レッツ・チャット」に村上さんは「高校の同窓会に出席して盛り上がった」と喜びの体験談を寄せています。

松尾さんはコミュニケーション機器の普及に関するセミナーや講演会など精力的に活動しておられます。公私ともに難病患者と交流を重ね、当事者の声を人一倍吸収している方なので、「代替機」を世に送り出すという計画も知識と経験に裏打ちされた本気のものでしょう。

重度障害者の意思疎通手段がかかったクラウドファンディングです。興味のある方は支援ページにて松尾さん本人のメッセージもご一読くださいませ。

公式サイト

クラウドファンディング・プロジェクト支援ページ
https://readyfor.jp

福祉機器|そこに待っている人がいるから。|イズム「ism」|Panasonic
https://panasonic.co.jp

障害者ドットコムニュース編集部

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「福祉をもっとわかりやすく!使いやすく!楽しく!」をモットーに、
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