阪急電鉄のバリアフリー化の取り組みとその現状

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出典:Photo by Gio Almonte on Unsplash

関西を走る阪急電鉄は2020年12月に「阪急バリアフリープロジェクト」と題して、1年間にわたりバリアフリー化に取り組む活動のプロモーションを発表しました。このプロモーションでは、阪急電鉄がいかにバリアフリー化を実施してきたか、その歴史や事例などを紹介しています。このコラムでは阪急電鉄の「駅」のバリアフリー化の現状についてを見ていこうと思います。

阪急電鉄の駅のバリアフリー化の現状

今回はバリアフリーの中でも駅における「段差の解消」「障碍者用トイレの設置」「転落防止設備および、視覚障害者用点字ブロックの設置」「障碍者対応型の案内設備と券売機の設置および、拡幅改札口の設置」の4つの項目から見ていきます。これらの項目は国土交通省がホームページに掲載している令和元年度の「鉄軌道駅及び鉄軌道車両のバリアフリー化状況」から参照しています。

阪急電鉄のホームページによると、現在阪急電鉄には全部で87の駅があります。その中で、エレベーターやスロープの設置などで、段差の解消が行われた駅の数は85駅になります。高架駅や橋上駅の多くにはエレベーターが、地上駅の多くにはスロープが設置されています。地上駅の「南方駅」に関しては地上駅ながらスロープがないかわりに、高さ1メートルほどを移動するエレベーターがあります。

次に身体障害者対応トイレに関しては、現在阪急電鉄の83の駅に車いすユーザー対応のトイレが設置されています。またそのうちの70駅では「オストメイト」(人工肛門)にも対応しています。

転落防止設備および点字ブロックの設置に関しては、両方とも全87駅に設置がされています。

最後に障碍者対応型の案内設備と券売機の設置および、拡幅改札口の設置については、87のすべての駅で車いすの通過に必要な、幅をとった改札口、高齢者や障碍者がスムーズに利用できる券売機が設置されています。

このようにほとんどの駅でバリアフリー化がされている阪急電鉄ですが、他の大手民鉄会社と比較してみるとどうでしょうか。

大手民鉄他社との比較

ここでも先ほどの国土交通省がホームページ上に公開しているデータを元に参照し、大手民鉄15社の鉄道駅のうち、1日の利用者が3000人を超える駅のみのバリアフリー設備の設置率を比較していきます。なお阪急電鉄は全87駅が1日3000人以上の利用者がいる駅となっていますので、すべての駅が比較対象となります。

阪急電鉄を含めた大手民鉄15社は、利用者が1日3000人を超える駅については多くの場合、何らかの段差解消を行っています。阪急電鉄の駅の段差解消率は97.7%、大手民鉄の駅の段差解消率の平均は97.9%なのでほぼ平均となっています。

次に身体障害者対応トイレの設置割合でが、阪急電鉄内の駅での車いす対応トイレの設置率は95.4%と大手民鉄平均94.3%を上回っています。一方でオストメイト対応トイレの設置率に関しては80.5%と大手民鉄平均の90.6%から少し差がついた結果となりました。

転落防止設備および点字ブロックの設置に関しては、阪急電鉄では両方ともすべての駅に設置されているため、設置率は100%でした。なお転落防止設備は15社ともすべての駅で設置されていました。

最後に障碍者対応型の案内設備と券売機の設置および拡幅改札口の設置については、阪急電鉄の障碍者対応券売機と拡幅改札口の設置率は100%ですが、こちらは多くの大手民鉄会社でもすべての駅で設置されていました。

この結果から阪急電鉄はバリアフリー化の課題はほとんど解決されている一方で、オストメイト対応トイレの設置については改善の余地が残る結果になったといえます。

阪急電鉄のバリアフリー非対応駅について

現在、阪急電鉄は春日野道駅と中津駅の2駅にバリアフリー化が進んでいません。

春日野道駅については今年の春よりバリアフリー化工事を開始しました。春日野道駅は1面2線の島式ホームの形式でホームの幅が狭いことから、最後までバリアフリー化が遅れていました。しかし今回の工事では、転落防止の可動式ホーム柵、改札を一つ増やしてそこからホームへつながるエレベーター、そして多機能トイレが設置されます。バリアフリーを大きく出した駅として生まれ変わります。

もう一つのバリアフリー未対応駅である中津駅に関しては、現在バリアフリー化の工事を検討している段階です。中津駅は春日野道駅のホームよりさらに狭いので、特に車いすユーザーや視覚障害者にとって線路に転落するかもしれない危険な状態です。もしバリアフリー化の工事が行われることになれば、中津駅は春日野道駅よりもさらに難しい工事をすることになるでしょう。

まとめ

阪急電鉄は、2000年に交通バリアフリー法が制定されるよりも前から、バリアフリー化に取り組んでいます。その成果として今回ピックアップした多くの項目で、他社の大手民鉄に引けを取らない設置率となりました。しかしオストメイト対応トイレの設置に関してのみ、他社に比べて遅れをとっています。阪急電鉄はオストメイト対応トイレを増やすことが当分の課題といえるでしょう。

最後に、今回言及しなかったホームドアやホーム柵の設置もバリアフリー化の1つです。すべての駅にホームドア等が設置されることが理想ですが、特にホームドアの設置は1駅あたり4~5億円ものお金がかかるという問題もあります。ただしこの問題は阪急電鉄に限らず、すべての鉄道会社にいえることです。

阪急電鉄はこれまでの取り組みから、障害者にとって利用しやすい鉄道会社といえます。また、阪急電鉄をはじめとした多くの鉄道会社のホームページには、駅ごとに障害に対応している設備の有無も掲載されています。それらを参考にすると、よりよく駅を利用できます。

参考文献

【阪急電鉄|阪急未来線|バリアフリーを紹介するシリーズ広告がスタート】
https://www.hankyu.co.jp

【阪急電鉄|阪急未来線|駅のバリアフリー化の歴史】
https://www.hankyu.co.jp

【阪急電鉄|安全・快適・環境への取り組み|駅のバリアフリー】
https://www.hankyu.co.jp

【阪急電鉄|春日野道駅のバリアフリー化工事を実施します】
https://www.hankyu.co.jp

【国土交通省|鉄道:鉄軌道駅及び鉄軌道車両のバリアフリー化状況】
https://www.mlit.go.jp

【ニュースイッチ|鉄道ホームドアの整備加速も、課題は「1駅4―5億円」の費用】
https://newswitch.jp

ケア

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関東生まれながら育ちはずっと関西。ADHDの症状は幼少期からチラホラあったものの診断を貰ったのは大学時代になってから。現在は就労移行支援施設に通いながら就職に向けての準備を進めています。

趣味は旅行と大リーグを見ること。特にクリーブランド・インディアンスのファン。

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