就労継続支援B型事業所3つの悩み②~他利用者との人間関係
その他の障害・病気 仕事◀過去の記事:就労継続支援B型事業所3つの悩み①~すごく低い工賃
B型事業所(以下、作業所)には解決の容易ならざる悩みがあります。前回は安すぎる工賃についてお話ししました。単純作業を安い報酬で請け、それを元にするため工賃が安くなっている作業所があまりに多いです。障害者年金2級を受給しつつ家から通う生活プランが前提となっており、真の自立は叶わないでしょう。
勿論、問題は1つではありません。これからお話しする「人間関係」の問題は、もしかしたら作業所へ通うにおいて最も大きな問題かもしれません。そもそも人間関係の違和感や軋轢などは人間の集団にとって宿命(宿痾)です。人間関係が疲れを生むことはある意味、健常者と障害者を区別せず平等に降りかかる問題といえるでしょう。だからといって、「じゃあ仕方ないからいいか」で済ませるのは怠慢ですが。
より重い障害が対象!だからこそ…
作業所というのは、A型や移行支援に比べると重めの障害を持つ利用者が多い傾向にあります。実家やグループホームから通って工賃と障害者年金で暮らす生活プランの利用者は珍しくなく、そういう層はA型や一般就労などのキャリアアップは考えずに一生作業所で働きます。ちなみに、作業所に定年はありません。
もう少し踏み込んで言えば、知的障害の利用者にレベルを合わせているため、比較的軽い知的障害や非知的障害者にとっては物足りない人間関係となりがちなのです。目的を果たせば作業所を出るキャリアプランの人と、一生作業所で働き続ける生活プランの人とでは、食い違いが生まれやすいでしょう。一番苦しいのは、自身の障害も重いため作業所を出るに出られない非知的障害者(精神・身体)になってくる筈です。
私は1年ほど作業所に通っていた経験があり、その上で作業所の人間関係に食い違いが出やすい原因は知的障害者にあると結論付けています。車掌ごっこを毎日繰り返す者、チラシ折りで力の加減が出来ず毎回嫌な音を鳴らす者、何の前触れもなく怒鳴り出す者、色々いました。そして誰に対しても子ども扱いで接する職員や利用者もまたストレスの元でした。そして救いとなったのが、大人同士として適切な距離で接してくれる一部の職員や利用者仲間でした。
そもそも知的障害者だからといって子ども扱いするのは「二流」で、本来は実年齢に即した対応で接するのがベストとされています。ところが、一通り福祉に熟したはずの施設長すら「二流の対応」をする作業所が圧倒的に多く、大人同士として接することが出来るのはかなりの少数派と言えます。
子ども扱いは失礼
比較的重めの知的障害者に合わせているつもりで利用者を子ども扱いする作業所は多いですが、利用者は全員18歳以上なのでいつまでも子ども扱いではストレスが溜まります。ましてや非知的障害者まで子ども扱いで接するのは失礼です。しかし、「みんな仲良く」などと標榜して「大人の保育園」と化している作業所は現実に存在します。これは「働く場所」や「就労への足掛かり」というより「重い障害者の受け皿」というスタンスの作業所に多く見られます。
反面、大人同士として適切な距離感で接してくれる職員や利用者仲間は非常に信頼できます。一見ドライな関係性ですが、「働く場所」としては理想的な距離感で個人的にはとても快適です。作業所を「就労へのステップ」と捉えているひとは、自然と「働く場所」という意識を態度に表していくのでしょうか。
経験則なのですが、子ども扱いする職員は作業所を「第二のおうち」「最後の受け皿」「一生の作業所」と考えている節があるように感じます。出ていくことを想定していないのか里親になったつもりで接してきますので、パーソナルスペースなど一切考慮しません。そのくせ他人の趣味を馬鹿にするなど、距離感を見誤った態度が目立ちました。これは経験則です。それでも、「上品な母親」を演じようとする割に、仕事中に鼻歌を歌ったり政治的思想を漏らしたりと所々でボロを出す職員のチグハグさは忘れられません。
A型や移行へ行けるならお早めに
作業所とは比較的重い障害者を対象としておりますので、いずれA型や移行支援へのキャリアアップを考えているならば無理のない範囲で速やかに実現できるよう行動したいところです。そのぐらいの心構えでないと実質的な無職期間が長引いてしまい、ただでさえ少ない生涯収入が更に減ってしまいます。かかりつけ医からもゴーサインが出たならば、猶更先へ進むべきです。
また、A型など先のステージへ進むには週5全コマでの通所を求められる場合が多く、作業所唯一の長所である柔軟な通所計画は必ず破綻します。決していいと言えない人間関係に晒される時間が長引くと、心労からキャリアアップが遠のくリスクもあるでしょう。この辺りは作業所の風土によって大きく左右されます。どうしても無理なら別の作業所からやり直す手もありますので、場合によっては転所も検討しましょう。
ちなみに、作業所は「一般就労への地力を養う場所」と解釈されておりますが、実際に作業所から一般就労へ直行できた利用者はわずか1%ほどだそうです。ほとんどの障害者は、作業所で生活リズムを整えてからA型や移行支援を始め、そこから一般就労を目指すというキャリアプランで動いています。作業所から一般就労は「飛び級」というのが現状でしょう。
最後の受け皿という人にはきつい話だった?
今回のコラムは、作業所から一般就労を目指すキャリアプランの障害者を主な対象としています。ゆえに一生作業所で働く生活プランは考慮しておりません。しかし、得意な事や長所を活かしてより進んだ就労形態に移れるのであれば、そうした方がいいと思います。
障害や疾患が悪化しない範囲であれば、自分に限界を作らず先のステージへとチャレンジした方が、人生の視野が開けて生き生き出来るのではないでしょうか。安定しているのであれば、かかりつけ医などに相談して次のステージに進むことを考えてみましょう。勿論、今の作業所が居心地のいい場所であるならば現状維持でも構いません。なんにせよ最終判断は自分自身の手で行うべきです。
次回は第三の悩みとして、作業所の「仕事内容」や「理念」などについて述べます。作業所ごとの「俺ルール」によって利用者が疲弊させられるケースもあり、工賃や人間関係の話とも地続きとなっている重要な問題です。
▶次の記事:就労継続支援B型事業所3つの悩み③~作業所の業務と俺ルール
参考文献
発達障害者に作業所の仕事を与えても問題は解決しない ? マイノリティ雑貨店
http://zakka10wasabi.hatenablog.com就労継続支援B型について - 対象・利用料金・平均工賃・作業内容・メリット・デメリットについて
https://otpress.info
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