『それでも、僕は…~顔と記憶と思い出と』

その他の障害・病気 発達障害

出典: https://www.photo-ac.com

僕は、高校時代のある日、教科担当の先生の顔を忘れてしまいました。しばらく考えれば、すぐに思い出すことが出来ました。20歳半ば、人物に関する記憶力の低下を自覚しました。なぜ低下してしまったのだろうか?と自問自答を続けてみましたが、結局この時は分かりませんでした。そして21歳の春、ある人を最後に、人の顔と名前をセットで記憶出来なくなりました。現在では、顔が覚えられないことに加えて、読んだ内容を頭に叩き込めなくなりました。

「人の顔が覚えられない」という症状

これを読んで下さっている皆さんは、ある日から徐々に「人の顔が覚えられなくなる」という症状をご存知ですか?

僕も、他の景色と同様にハッキリと視認出来ます。視力はいいとは言えないが、きちんと見えています。日常生活でも、目の前の人物の特徴を聞かれた時、その場では間違えずに答えられます。しかし、振り返るなどで相手の顔が視界から無くなると、今さっき見た人物であっても、特徴を聞かれると答えられません。目を閉じると頭の中で、さっき見た顔を再現できないのです。だから、自分の視界に入る度に、会うたびに初対面に感じます。

この症状を持っている僕は、目で見るというよりも、声で人を判断しているため、映像でも日本語でないと内容が理解出来ません。加えて、相手の性別が分かっても、髪型や服の種類を大きく変えられると混乱してしまうため、ストーリーが複雑なもの、人の顔だけで識別しなければならないような登場人物が多い作品は見ることができなくなりました。

この症状の原因は……

記憶力の悪化を心配して、問診と検査を受けに行った大学病院で、この自覚症状の原因がハッキリしました。

「発達障害ですね。具体的に言えば、自閉症スペクトラム障害と注意欠陥多動性障害のグレーゾーンです。“ものごとの最中に、一時的に情報を記憶して保持する能力”“保持した記憶を選択して処理する能力”“ワーキングメモリー”の三つが上手く機能しないから、心配している自覚症状が出てくるのだろうと考えられます。」という結果を受けました。

病名と原因はハッキリしたましたが、“目を離すたびに相手の顔と声を忘れてしまう”この症状と一生付き合うことになります。

僕なりの対処法

今、僕は、相手を思い出す時間が短くなるように“相手の特徴”をとらえる練習を、日常生活と並行して行っています。その教材として、アニメと日本語吹き替え版の海外ドラマを以前よりよく見るようになりました。アニメや声優関係のCDを聞くようにもなりました。同じ声優さんが出ている作品を何本も、同じ作品を何回も見ます。その声優さんの相手の話し方・抑揚、声の高さなどの“声の特徴”を覚えます。そして、初めて見た別の作品で、同じ声優さんが出演していると判断できるように努力しています。

まとめ

僕がこの症状で、一番悔しいのは大切な人の顔と声を忘れること。思い出せてもどちらか片方を、一瞬だけということ。

でもそれは、新しい目で相手を見ることが出来るということ。

顔は人の識別に欠かせません。人間にとって、自分の目で相手の顔を見て、相手との関係を見極めるという行為はごくごく自然で、当たり前なことです。だからこそ、“人の顔を覚えられない”“頭の中で組み立てられない”“人の声と同時に頭の中で再生出来ない”というこれらの目に見えない症状は、とても分かりにくく、説明しても理解されづらいのが現状です。

再度お尋ねします。

「実は、人の顔が覚えられないの」目の前にいる知人・友人から突然、このような告白をされたら、貴方はどのような反応をしますか?確かに、突然言われても、外からは見ることが出来ないし、すぐには分からないことですよね?ですが、どうか「自分には関係ない」「理解できない」と無視しないで下さい。「そんなこと言われても困る……」という言葉や態度を示さないで下さい。

僕を含めた、発達障害など目に見えない障害を持っている人たちは、その場で分かってくれるとは考えていません。でも、いつか分かってくれると信じて、これからも話を続けていきます。

チタカ・トモヒロ

チタカ・トモヒロ

女性(チタカ)の心と、男性(トモヒロ)の心を持つXジェンダーです。
発達障害で、自閉症スペクトラム障害と、不注意特性の注意欠陥多動性障害の両方を持っています。
視覚過敏(弱度の老眼)と聴覚過敏(昔から地獄耳)があるため、日頃からサングラスと耳栓が手放せません。
恐怖系やグロテスクなものではない限り、広く浅く様々なジャンルの漫画やアニメ、海外ドラマを楽しんで毎日を過ごしています。
今は就労移行支援事業所へ通いながら、障害をオープンにした状態での就職を目指して頑張っています。

その他の障害・病気 自閉症スペクトラム障害(ASD) 注意欠陥多動性障害(ADHD)

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