オープンとクローズ~手帳と特性と就活と
仕事 その他の障害・病気ある日、あなたは街中か店内で、サングラスをかけたまま食事や読書をしている人を見かけました。あなたはその人を見て、どう思いますか?何故だろう?不思議だな。ですか?それが飲食店内だった場合は、マナーがなっていないですか?人によっては視覚障害者だからかな?と思う人もいるでしょうね。でも本当に、その人がサングラスをしている理由は、本人が視覚障害者だからでしょうか……?
本当に弱視?
「あの、サングラスをしたまま食事や読書をしている人って……弱視なのかな?」
以前、何度かこのようなヒソヒソ話をされたことがあります。小さい話声でしたが、昔から地獄耳であるため、よく聞こえてしまうのです。まぁ、グレーのサングラスをしたまま、食事や読書をしているのを見たら、普通は弱視だと考えるでしょうね。しかし僕は、弱視でも視覚障害者でもありません。
屋内でもサングラスをかけている理由
僕には自閉症スペクトラム障害があります。その特性のひとつに、『感覚過敏』というものがあります。この『感覚過敏』には『視覚過敏』『聴覚過敏』『嗅覚過敏』『味覚過敏』『触覚過敏』等があります。
僕がサングラスをしているのは、この感覚過敏中でも、『視覚過敏』が強いからです。僕の場合は、光にとても敏感で、白色灯も蛍光灯も眩しいと感じます。部屋が昼白色だった場合、表面が白い机の上に白い紙を置かれたら、目がチカチカして内容に集中できません。因みに僕の実家は、家中が昼白色だらけです。さらに印刷されたフォントによっても読めない場合があります。発達障害のグレーゾーンだと言う診断を受けて、最初に自分が感覚過敏を持っていると気がついた時は、電球色を眩しいと感じたため、オレンジ色のカラーレンズを付けた眼鏡を作って購入し、使っていました。しかし今は、電球色も昼白色も眩しいと感じるため、黒に近いグレーの偏光レンズを付けたサングラスをかけて、地元を離れて一人暮らしをしています。
実家に帰りたくない
そんな僕はここ数年、実家に帰ることを億劫だと感じています。そう感じる理由は色々あります。一人称を「私」で話して、レディースの服を着て「女の子/女性」でいなければならないから、というのも理由の一つです。でも、一番の理由は“障害を持っている僕が、そのことを隠して過ごさなければならない”からです。地元で、僕に発達障害があることを知っているのは友人と親を合わせた数人だけです。
以前、オレンジ色のカラーレンズを入れた眼鏡をかけて帰省した時は、帰省日初日の外食中はその眼鏡のまま食事をしても、何も言わなかった母が翌朝、同じ眼鏡をかけて朝食を食べに一階へ降りた際に「今すぐ、その眼鏡を外してきなさい!」と、怒りました。これ以来、実家に帰省している間は基本的に裸眼かコンタクトで過ごします。
そして24歳の春、実家にて「自分の障害をオープンにして就職活動をしたい」「そのために障害者手帳を取得したい」と、両親に相談した時は、「ダメだ」という即答と同時に、「身体障害だとか、病院の先生が取得しなさいというならば、取ればいい。」「今でもなんとか日常生活を送れているのだから、必要ないでしょ?」「そんなあなたが、何故自分から、私は障害者です。そのうえで、仕事をさせてくださいって言わなければならないの?」「就職するなら、隠して(クローズで)やりなさい。就職して、しばらくしてから、上司や先輩に事情を話して、改善策を考えてもらいなさい。それが嫌なら、実家へ戻ってきなさい!」という答えが、親たちから返ってきました。私はその場で、「わかりました。」と返事をしました。親にこれ以上、自分の障害について話しても、私が求めている答えは得られないと分かったからです。
クローズで就活をして見たが……
試しにクローズで就活をしてみましたが、進めるうちに自分には、きちんと仕事をするには、様々な場面で配慮が必要であることが見えてきました。例えば、『視覚過敏』に加えて僕は、『聴覚過敏』も持っています。赤ん坊や子どもの声、大声や高い声、陶器同士が擦れる音が極端に苦手です。そこに上記した地獄耳が加わるから、周りの人以上に音に敏感で、音漏れや小さい音が気になってしまします。これらを軽減させた上で、仕事に集中するためには、会社側に、『視覚過敏』にはサングラス、『聴覚過敏』には耳栓の常時着用を許可してもらう必要があります。こういった、外からは見えない障害特性が色々あるため、自分の障害をオープンにして就職することも、障害者手帳を取ることも諦めることができませんでした。
まとめ
手帳取得に関する説明の際に、“障害者手帳には期限があり、更新しなければ、それ以降は手帳を持つことはできない”ことを知りました。僕は現在、親には内緒で障害者手帳を取得して、就労移行支援事業所へ通所しながら、自分の特性への理解や、自分にとっての向き不向きを知る努力をしています。オープンでの就職をゴールとしています。もしも親に、取得したことがバレてしまった場合は、「次の更新時まで使わせてほしい、それまでに再度どうするかを考えるから。」と言って説得するつもりです。
参考文献
子ども情報ステーション
https://kidsinfost.net
denkyuya.jp
https://www.denkyuya.jp
その他の障害・病気