就労継続支援B型の収入源と不正の手口
その他の障害・病気 仕事 ニュース就労継続支援および就労移行支援事業所は、事業所の分だけ考え方も別々で、熱意はある事業所や熱意を経営知識や営業力に変えて上手に運営する事業所もあれば、利用者を囲い込むだけで助成金だけ貰っていくような場所もあります。
ここで疑問になってくるのは、助成金目的の悪徳な経営スタイルがそんなに美味しいのかということです。いくら実のないスカスカの事業所でも、ランニングコストを軽く上回るほどの収入が得られるものなのでしょうか。「障害者ビジネス」として問題視されるほど横行しているのは旨味がある事の裏返しとも取れますが、果たしてどうなのでしょう。
ここでは就労継続支援B型をもとに話をしていきたいと思います。A型や移行についてはまとまり次第後で別々に取り上げる予定です。
誰でも簡単に始められるものではない
まず、事業所は誰でも簡単に始められるものではなく、相応の準備が必要となります。具体的には、「会社」「職員」「物件」が求められ、すべて揃えたら自治体への申請にも行かねばなりません。一人で始めることはまず不可能です。
会社は「株式会社」「合同会社」「一般社団法人」などの法人格になります。それぞれ初期費用や出資元や社会的信頼などで違った長所と短所がありますが、確かに言えるのは会社が無ければ事業所を建てられないことと、どの形態でも不正は出来るということです。
職員にはまず管理者とサービス管理責任者(サビ管)が必要です。管理者は常勤なら誰でもなれますが、サビ管は専門性を要するため資格や実務経験が条件となっています。ただ、管理者は業務さえ出来れば兼任できますので、サビ管と管理者を兼任させて必要な人員を一人分減らすことは出来ます。職業指導員と生活支援員も採用せねばならないのですが、一番見つかりにくいのがサビ管になってくると思います。
物件については、作業スペース・相談室・多目的スペースを確保する必要があります。作業スペースは定員×3平米(20人定員なら概ね36~40畳、18~20坪)必要ですし、相談室には最低限仕切りを設けねばなりません。当然バリアフリー面も抜かりなくすべきですが、身体障害者を対象にしないことでバリアフリー面の課題を帳消しにすることも出来ます。
本来の目的は障害者の就労を支援することなので、色々と規約があって簡単に始められないようになっています。役所と手続きをしたり物件や人を探したりと、特に理念のない人間だと事業所を始める前に降りてしまいそうです。しかし現実にこれらのやり取りをこなした上で不正な運営をする事業所が僅かながら存在しているのです。僅かどころではないかもしれませんが。
収入の柱は「訓練等給付費」
B型事業所にとって最大の収入源となるのは、国や自治体から支給される「訓練等給付費」です。詳しい金額については定まっておらず何とも言えないのですが、B型事業所における月ごとの収支はこちらの収益モデル(外部サイト)でシミュレートしてあります。サビ管までパートタイム扱いという大雑把なシミュレートなのでこの通りの収支になるわけではないのですが、条件次第では給付費だけで黒字に出来ることは示唆されています。圧倒的なパワーですね。
先ほどの収益モデルに倣い私もシミュレートしてみます。条件は「給付費は利用者1人あたり1日5,860円」「スタッフはサビ管兼管理者、職業指導員、生活指導員合わせて3名」「スタッフは週40時間フルタイムで時給1,500円」「利用者は定員いっぱい20人で作業時間は1日4時間」「この月の作業日は21日あり、工賃は15,000円」といったところです。
このモデルでの支出は、スタッフへの給料(1,500円×8時間×21日×4人=1,008,000円)や利用者への工賃(15,000円×20人=300,000円)だけでも1,308,000円となっています。
対して収入となる給付費は、5,860円×21日×20人=2,461,200円となります。人件費以外の支出が80万円ほどあったとしても、35万円ほどの黒字で決済されてしまうのです。スタッフの時給を高めに仮定してもなお余裕のある数字が出ました。これが「訓練等給付費」の持つ絶大なパワーです。
しかし給付費には「その日に通所していない利用者の分は貰えない」という仕組みがあります。柔軟な通所計画を売りにするB型事業所では利用者全員が毎日来ているほうが稀なので、実際に貰える給付費はもっと少なくなります。
主な不正は「水増し」
訓練等給付費を増やすには、毎日来てくれる利用者を多く受け入れるのが理論上の得策です。しかし、通所計画の柔軟性が唯一の長所であるB型事業所にとって、その欲望を表出するのはおこがましいことです。利用者からすれば毎日来ての全コマ作業を強いるB型事業所などA型の下位互換でしかありません。
金目当てで始めたタイプの施設長(理事長)は、利用者の気持ちや事情を無視して勝手に通所日数を増やしたり毎日来なさそうな障害者を受け入れなかったりするでしょう。それよりも直球な手段として、利用者の通所日数を増やして報告する「水増し」がございます。過去の不正事例でも水増しの発覚によって指定取り消しを受けた事業所が多いのです。
極端な事例ですと最初から給付費目当てで事業所を設立したり本来雇うべきサビ管を雇っていなかったりするケースさえあります。私腹を肥やすために事業所を建てるような人間が障害者の就労を本気で考えている訳などありませんので、不正な事業所は大抵作業内容も単純作業で済まされています。
A型でも水増しが出来ていた
つい最近、施設長の寝屋川市議が通所日数の水増しを行っていた「ジョブステーション四條畷」の話がありました。あちらは就労継続支援A型と就労移行支援を兼ねていた事業所なのですが、水増しで給付費を不正受給する手法は一緒です。
A型では給付費や助成金などを利用者の給料に回してはならない規定があり、17年に厳格化されています。しかし、それ以外の用途で特に規制はされていません。もしかしたら着服しようと思えば出来てしまうのかもしれません。
なんにせよ就労継続支援の事業所はA型もB型も謎が多いです。B型への発注についてはビル等清掃や書類封入などを頼むことができるようですが、実際に施設長として設立しなければ分からない部分も結構多そうです。
参考サイト
就労継続支援B型(障がい者のための作業所)始めかたガイド|障害福祉サービス開所サポート - 兵庫・大阪
https://support-fukushi.com
B型事業所収益モデル例
https://www.s-agata.com
こんなB型事業所には注意!
http://www.employment-spt.com
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