B型事業所には3つの生き方がある~居場所と高工賃と就労支援
その他の障害・病気 仕事就労継続支援B型事業所(いつもは作業所と呼んでいますが、今回はB型事業所と呼ばせて頂きます)とは、障害者向け福祉就労サービスのひとつで、雇用契約を結ばないぶん柔軟な通所計画で通える特長があります。
B型事業所とその施設長には、多様な生き方が用意されています。様々なニーズやビジョンを持つ障害者が体験や面会に訪れる以上、自らのスタンスを明示してサービスを利用するかどうかの選択肢を与えねばなりません。
B型事業所の生き方には、大きく分けて「居場所」「高工賃」「就労支援」の3タイプがあります。大抵が「居場所」としての生き方を選んでいるように思われますが、「なんとなく」で生きていてはどれにも該当しない「虚無」の事業所となってしまいます。その辺りは施設長の努力が実るかどうかもかかっておりますが。
居場所を利用者に提供する
B型事業所のほとんどが「居場所」としての生き方を選んでおり、中には成り行きで居場所型になっている所も珍しくないでしょう。B型利用者でも更に重い障害を持つ人にとって「最後の受け入れ先」となっていることが多く、数年どころか5年10年と在籍している利用者さえ居ます。
居場所型の事業所にとって、作業とは「障害者と社会の接点」であり「社会人的な生活サイクルを守るもの」です。障害者を宙ぶらりんにせず、帰属意識を持てる集団を作ることは大切かも知れません。年齢の上限が無く実費負担しなくていい(収入が一定以下の世帯に限る)のもあってか、デイサービスの代わりとして利用する人もいます。
B型事業所の大部分で導入されているスタンスなので、想定されるメリットとデメリットもB型事業所全体の特徴からコピペしたような形になります。メリットは家庭以外での居場所を確保できることと利用者のペースで作業が出来ることで、デメリットは単純作業や軽作業が多くキャリアの足しにならないことと工賃が安すぎて人によっては通うほど赤字になることです。
一部には「高工賃も就労支援も頑張れないから、とりあえず居場所で」という方針で運営している事業所も存在しますが、「とりあえず」という軽い気持ちでは事業所として何者にもなれないでしょう。特に「事業所は第二のおうち。職員は親で利用者は子ども」などと考える事業所は、スタンスの合わない利用者にとって非常に過酷な環境となります。
高工賃を目指す
B型事業所の中には、積極的に仕事を受注し工賃を上げている所もあります。こういった所は施設長や職員が仕事を得るための営業活動に力を入れているのが特徴です。
事業所の工賃が上がらない理由には「仕事の報酬が安い」「内職しか貰えない」「価格設定が弱気」などが挙げられます。工賃の高い事業所は、なるべく報酬の高い仕事を無理のない範囲で受注したり市場に詳しい人と協力して適切な価格で商品を売ったりと、自分たちの労働力を安売りせず営業に尽力しています。
中には施設長が前職のノウハウを活かしたり思い切った設備投資をしたりして働く環境を整える所もあり、事業所と利用者によってはA型事業所に比肩するか或いは上回る工賃を出すところさえ存在します。
しかし、高い工賃を得るにはその分利用者の通所も増えるため、利用者のペースで通所や仕事をするのが難しくなる欠点もあります。また、いくら工賃が高いといえども雇用契約を結ばないことに変わりはないので、労働基準法などの法的サポートが受けられず万一の事態に対して脆弱です。
工賃を増やすため仕事を受注するにしても、仕事を増やし過ぎて職員まで手伝って納期に間に合わせるようでは本末転倒ですし、何より利用者のためになりません。施設内に余裕がないと職員も利用者もギスギスしてしまいます。
また、工賃は固定給でなく出席した時間の長さで決めているところも多く、工賃を多く貰うには利用者も開いている時はすべて出ねばなりません。自身の体調やペースに合わせた通所が難しくなるのも欠点です。
就労継続支援の本分を全うする
ごく少数ながら「就労継続支援」としての本分を全うしようと張り切る事業所もあります。ただ、さすがに就労移行支援のような「絶対に就労を目指すぞ!」というレベルまではいかず、利用者自身が努力する環境を与える程度でしょう。さすがにこれは又聞き程度なので実在すら分かりません。
事業所自らが乗り気ならば、資格の勉強をするための時間やスペースを確保するなどはしているそうです。大抵は通所の柔軟性を活かし、A型や移行へ移るための活動へ注力できるように事業所の全休を認める程度ですが、それでも協力としては破格と言えます。
ただし、いくら次へ進みたいと言っても最低限週5日通えるほどの地力はつけておかねばなりません。通所が不安定、不十分なまま次のステップへ進もうとしても止められるでしょう。就労の足掛かりとして地力や素養をつける場であることは利用者も忘れないで欲しいものです。
生き方は並行できる。しかしゼロはあり得ない
「利用者の居場所になる」「工賃を上げるため頑張る」「就労支援の本分を全うする」といった生き方がB型事業所にはありますが、これらはどれか1つだけ選ぶものでなく並行して運営することも可能です。例えば、数年も居場所として通い続ける利用者と休みを取ってA型を探す利用者が同じ事業所に居ても不思議ではありません。
勿論、全部になろうとして中途半端に終わってしまう場合もあります。特に、居場所と高工賃を両立するつもりが「職員も作業するほど忙しく休憩も原則許されないうえ、工賃もそこまで高くないし最初から週5日の通所を求める」というどうしようもない事業所に成り果ててしまったケースです。B型事業所の施設長とは、福祉と経営の相容れない二者を両立させねばならない厳しい世界なのです。
そして、何の目標も展望もなく日々ダラダラ過ごすだけの事業所もまた存在します。生き方を定めない「虚無」の事業所は職員も利用者も得をしないばかりか、福祉にかかる税金を食いつぶしています。施設長が私腹を肥やすためだけに設立するような最悪の事例もゼロではありません。
「居場所になれているかどうか」は利用者の顔を見れば分かります。「工賃の額」は厚労省が出したデータと比べれば自分のレベルが分かります。「就労支援の実績」は利用者が就活するとき職務経歴書に書いています。事業所として結果が出せているかどうかは、施設長の思い込みや現実逃避でどうにでもなるものではありません。
参考サイト
働く場は企業だけじゃない 障害者の就労|NHKハートネット
https://www.nhk.or.jp
その他の障害・病気