発達障害と手話~意外な手話の使い方
その他の障害・病気 発達障害 身体障害出典:Photo by Melissa Askew on Unsplash
学生の時、手話を使う聴覚障害のある同級生と出会い、話したい一心で独学で手話を学んでいきました。手話での会話は、発達障害である私にも「気づき」をもたらしたのです。発達障害と手話、一見関係なさそうな意外なコラボの世界をのぞいてみませんか?
手話でトレーニング!?
手話を使ってみて伸びた力は、ずばり「指さしを見る力」と「表情や動作」です。この2つを詳しく説明してきます。
「指さしを見る力」
手話の世界では、話題にしたい物を「指さし」で表します。例えば、「あのビルは高いね」といいたいときは、ビルを指さします。話を聞く側は指さされた先のビルを見て、「今からビルの話をしたいんだな」と心の準備をします。
学生の時、自分が会話の内容を「理解しているのかそうでないのか」わからないことがありました。それを改善に向かわせたのは、手話の「指さし」でした。この指さしで話題が分かりやすくなりました。会話の話題が読めずに迷っていたのが「指さし」のおかげで、何に注目すればいいのか分かったのです。もし、指さした先が遠くて分かりづらい時は、何を指しているか相手の視線を確かめたり、「今、何を見てるの?」と質問できるようになりました。
話題を分かりやすくする手段があるどいうだけでも安心感があり、相手と話をすることが楽しくなっていきました。そして、分からなかったら分かったふりをせずに、指さしの先について質問して、ゆっくりじっくり話題を理解していけばいいことに気が付いたのです。
「表情や動作」
例えば、「プレゼントをもらって嬉しい」はどう音読しますか? より感情が伝わりやすくするには、明るい元気な声で音読しますよね。手話の世界では、こういったイントネーションを表情や動作の大きさで表します。「プレゼントをもらって嬉しい」の嬉しい気持ちは、笑顔や勢いのある動きで表します。
ある時、手話の番組を見て練習したり、手話で会話をしたりしていると、自分が思った通りの表情ができていないことに気付きました。原因は「表情の筋肉不足」だと思います。確か、そのころは「みんなと同じようにできないといけない。いや、それ以上にならないと」と張り詰めて、クールな表情や内面を目指していたような気がします。その影響が出ていたかもしれません。
そこで、口角と眉の上げ下げ、鏡の前で手話をしてみるなど、家で表情の自主練習をしました。少しずつですが顔が柔らかくなり、表情に幅が出ていきました。手話の単語と表情の練習をすることで、手話以外の普段の会話でも表情を意識できるようになりました。具体的には、「嬉しい」「悲しい」などの手話単語がヒントになり、「今は嬉しい話だから、表情も嬉しくしよう」と話題と表情が合致するようになりました。
聴覚過敏と手話
私には発達障害の特性として聴覚過敏があります。その症状の1つに気付いたのエピソードが今も私の思い出に残っています。
私と聴覚障害の同級生、もう1人の同級生(聴者)の3人で、遅めのお昼ごはんを食べに食堂に行った時のことです。みんなで手話で話して楽しく過ごしていました。聴者の同級生は斜め向かいに座って手話をする必要がない会話していました。聴者の同級生は私の声を聞き取れるのに、私はその同級生が何を言っているのか聞き取りづらく、何回か聞き返しました。同級生からは「あなたには見えるものがあった方がいいな」と言われました。つまり、音声だけでなく、視覚的なヒントがあった方が通じやすいという意味です。この経験より、私は騒音があるとコミュニケーションに支障が出ることが明確に分かりました。コミュニケーションがうまくいかない原因が1つ分かったのです。
対策は簡単でした。手話の分かる人同士では手話で会話して、手話が分からない人と話すときには筆記用具を使うことで騒音問題を難なくクリアしました。
今でもこの経験は活かされていて、重要な話は静かなところでする、メモや現物などの視覚的なヒントを用意するなど、私の工夫につながっています。
メッセージ
いかがでしたか?手話は聴覚障害の方だけが使うものではなく様々な活用方法があります。 さて、このコラムは例なので、「手話ができないから人に優しい対応が取れない」なんて思わないでください。音声、写真、動画、文字、ジェスチャーなど世の中にはたくさんのコミュニケーション方法が溢れています。ご自身や周りの方に合うコミュニケーション方法は何でしょうか?今後、新しい発見や気づきがあって、ご自身や周りの方が少しでも生きやすくなれば幸いです。
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