視覚障害を武器に、暗闇ヘッドスパで障害福祉に革新を起こす

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浅井純子さん(左)、株式会社ひいらぎ茂呂史生社長

真っ暗な部屋で施術する暗闇ヘッドスパサロン『純度100』は、視覚障害を強みに変える斬新なアイデアの一つです。その経営者である浅井純子代表と、アイデアを提案した障害福祉事業を展開する茂呂史生さんに話を伺いました。

感覚過敏の人にこそ来てもらいたい

──感覚過敏の方でも施術を受けやすいと思うのですが
「お客様によっては喋りたい方もいらっしゃいますが、スタッフから話しかけることは施術中ほとんどありません。暗闇というのは見ることを諦める世界で、見ることをやめると音や匂いが邪魔になってきます。匂いには各自好みがあるので、いっそ無くしています。感覚過敏の方にこそ来てもらいたいですね」

──暗闇に慣れるまで恐怖などは感じませんでしたか
「最初は、歩く必要を減らすようにします。考えてもらうことと、全身の感覚を研ぎ澄ますことが大切なので、声をかけるのは最小限です。多少怖さはありますが、チェアに座って施術を受けると怖さは無くなりますね」


左から、株式会社ひいらぎ茂呂史生社長、浅井純子さん、株式会社エースタイル谷本吉紹社長

福祉は全ての人のためにある

──茂呂社長、障害福祉の事業を始められたきっかけを聞かせてください
「阪神大震災でボランティアをしたことが福祉に関わるきっかけになりました。当時高校2年生で、バスを乗り換えながら一人で東京から来ました。避難所に仮設のお風呂を作って担いでいく活動をしていましたね。火災の酷かった長田区でした」

──事業としてはどのようなことをされていますか
「埼玉県と東京都で活動していて、児童発達支援、就労支援、計画相談支援、居宅介護、グループホーム運営など、多岐にわたるサービスを提供しています。どの施設もコンセプトが違っており、障害の有無によらず当たり前に夢を持てる街づくりを理念としており、囲い込みはせずニーズに応えて19年やってきました」

──19年ということは、障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)が始まる前ですよね
「施行される直前ですね。当時は高齢者介護で働いており、利用者が亡くなっていくことに大きなストレスを感じていました。こういう性格なので、一緒にベランダに出て初日の出を見る企画を上司に内緒で立てたことがありますね。そのぐらい人と向き合い、亡くなることにストレスを感じていたら、いつしか顔面麻痺になって辞めざるを得なくなりました。それを機に自分探しでヨーロッパに行ったのですが、そこで初めて日本の治安の良さに気付きましたね」
「イタリアのローマなんて大都市ですけど、駅ではスリなどの軽犯罪ばかりです。深夜に物色しに来るので、ホームで寝るなんて出来ませんね。日本では終電を逃がしてホームで夜を明かしても大丈夫なのに。一方、イタリアやフランスは毎晩家族で食卓を囲みます。日本の良い所と外国の良い所を掛け合わせれば、世界に誇れる良い福祉が作れるのではないかと考えました」
「日本に帰った頃には自立支援法が施行されており、介護を受けられない障害者が増えました。大手が介護から引いていく中、生活できない障害者を何とかしなければと思ったのが起業のきっかけです。福祉は社会的弱者のためのものではなく、全ての人の為にあります。それが障害の有無によらない理念にも繋がっています」


盲導犬ヴィヴィッド

困り事には視点を変える

──何か個性的な取り組みをする事業所を紹介してください
「放課後等デイサービスなら自己肯定感を上げながら長所だけを伸ばす事業所を、就職訓練なら実際に就職先を見学して在学中から訓練を取り入れています。就労継続支援B型事業所では特性に合わせた仕事が出来るよう、多種多様な作業を入れており、特性に合わせて作業を選べるようにしています。」

──浅井さんとはどのように知り合いましたか
「共通の知り合いがいるので、ヘッドスパの立ち上げ前から知っていました。何かやれることがないかと考えて、視覚障害者向けにあん摩の資格があったことから辿り着きましたね」

──どのように就労へ繋げていますか
「基本は一般就労に繋げていくつもりです。障害者だから就労支援施設で働くというのは違うと思います。ただ、視覚障害者は転職が大変です。視覚障害者向けのグループホームとか、雇用率で困っている企業をターゲットにするとか、工夫をしています」
「店舗ビジネスをする企業は障害者雇用がしづらいです。1000人いれば24人雇うのですが、その24人を一緒には出来ずバラバラになってしまい、それぞれに支援者が必要になりますからね。それをギュッとまとめるのがコンセプトになっています」

──昔ながらの福祉に今どきのビジネスセンスを広げるにはどうしたらいいでしょうか
「ビジネスとしては広げる必要はありますが、無理に広げなくてもいいと思います。ただ、世の中で困っていると思われることは解決法がないだけで、視点を変えれば大して困っていないこともあります。障害者雇用の分からない企業も、雇用の仕方が分かれば困らなくなります。困りごとの解消はそのままビジネスにもなりますよね」
「『純度100』の課題は、人材不足です。学校との協力体制を作っている最中ですね。盲学校はあん摩の資格が取れるので、住まいを用意できれば、すぐにセラピストが入って来られるわけで、そういうスキームを作っていきたいですね」


浅井純子さん(左)、株式会社ひいらぎ茂呂史生社長、盲導犬ヴィヴィッド


令和の虎で200万再生された盲目志願者が経営する「暗闇ヘッドスパ」に行ってきました。/谷本家【TORICOMチャンネル】
https://youtu.be/O_a9nccp_Vc

浅井純子(じゅんじゅん) 全盲の世界を超ポジティブに生きる人
https://twitter.com/nofkOzrKtKUViTE

ふみを社長【茂呂史生】@福祉業界のやらかし社長&著者
https://twitter.com/morofumio



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障害者ドットコムニュース編集部

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「福祉をもっとわかりやすく!使いやすく!楽しく!」をモットーに、障害・病気をもつ方の仕事や暮らしに関する最新ニュースやコラムなどを発信していきます。
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