加害者への意識調査で、誹謗中傷する脳が丸わかり?
暮らし
窃盗の前科持ちが空き巣の心理を語るように、犯罪加害者に当時の心境やロジックなどを語らせるのは防犯において有効とされています。防犯とは、言い換えれば犯罪者が嫌がる行為ですからね。
執拗な誹謗中傷や荒らしなどに遭った被害企業が、加害者へ和解条件の一つとして「意識調査」を求めたことが話題となりました。結果はすでに公表されており、Web上の加害行為に手を染める動機や心理状態がよく分かる参考資料として評価されています。誹謗中傷する脳が、これで丸わかりです。
動機は精神的な不安定
──誹謗中傷としてどのような行為をしてきましたか
「被害企業の配信における執拗なコメント連騰行為、被害企業のなりすまし行為、公式ハッシュタグを悪用したグロテスクな画像の拡散、リアルイベント会場へ危害を加える旨の書き込みをSNSに投稿してきました」
──荒らし行為や危害予告の動機は何ですか
「企業様がたとの距離感を一方的に縮めようとしていました。背景には強い承認欲求と日頃のストレスがあり、精神的に不安定な状態でした。もしあの時、心療内科を受けるなり視聴をやめるなりすれば問題は起こさなかったと猛省しています」
──あなたの行為が、刑事または民事で責任追及される可能性があることを認識していましたか
「自身の行為が誹謗中傷や危害予告に該当し、刑事と民事の双方で責任を追及される可能性があることは、漠然と認識しておりました。しかし、日常生活におけるストレスからくる精神的な不安定さにより、その認識が薄れ、行為を止めることが出来ませんでした。この点の認識の甘さを深く反省しております」
他責思考で警察に怯える
──行為の間、どのような感情でしたか
「関係者やファンが困惑し不快な思いをされているのを見て、面白がっているとか異常な承認欲求を満たしているといった歪んだ感情を抱いていました。現在では、当時の行為がいかに相手を傷つけるものであったか深く理解しており、このような光景を見たら大変不快に感じるであろうと冷静に判断できます」
──あなたの行為によって対象の企業やファンがどう感じるか考えましたか
「当時は自分の暴走した承認欲求に突き動かされ、投稿が拡散されることだけを考えておりました。関係者やファンの皆様を深く傷つけ、多大なご迷惑をおかけするという想像力が完全に欠如しておりました。今では、自身の行為がいかに軽率で無責任であったかを痛感し、深く反省しております」
──誹謗中傷行為によって責任を追及され、どのような状態になりましたか
「ある時期から定期的に開示請求意見書が届き始め、被害企業からも書面が届くようになってからは、家族に迷惑をかけてしまうという強い焦りと後悔の念に駆られました。SNSに触れること自体に恐怖を覚えるようになり、自分が悪いにも関わらずSNSのせいにする他責思考に陥りました。更に危害予告犯への刑事追及や被害届の受理といった発表で、『いつ警察が家に来るのだろうか』『身柄を拘束されるのではないか』といった強い不安感に襲われました。実際に警察が来るまでの間、家の前に警察車両が止まっていないか頻繁に確認したり、法律関連や逮捕時の手続きなどのサイトを閲覧したり、そういう日々が続きました」
──現在、自身の行為を振り返ってどのように感じていますか
「約2年にわたって被害企業や関係者の皆様がどれほど精神的苦痛を負われたかを考えると、後悔の念に堪えません。皆様に大変申し訳ないことをしてしまったと痛感しており、深くお詫び申し上げます」
一生書き込みません
──今、目の前に当時の自分が居たら何を伝えますか
「当時の自分には『今から書こうとしている内容で、誰かを深く傷つけないか?』『その投稿や書き込みがどれほど広範囲に、どれほど長く影響を与え続けるか想像できるか?』と徹底的に問い直したいです。そして、無責任な情報発信がどれほどの後悔を生むか、どうか踏みとどまってほしいと切に願います」
──被害者に対してあなたの言葉で伝えたいことを記載してください
「この度は、過去2年間にわたり私がしてきた悪質な嫌がらせ行為により、被害企業や関係者の皆様には筆舌に尽くしがたい多大なご迷惑と、想像を絶するほどの精神的苦痛を与えてしまいましたことを、心よりお詫び申し上げます」
「私の加害行為は、私の未熟な人間性やインターネット利用への認識の甘さ、そして自己中心的で歪んだ承認欲求から生まれたものであり決して許されるものではありません。当時の自分は、日常のストレスを適切に管理できず、その捌け口をインターネットに求めてしまいました。当時のアルバイト先で、些細なことで指摘を受けたり人間関係で悩んだりして精神的に疲れておりました。こうしたストレスを適切に解消できず、共通の趣味を持った仲間もおらず、健全な発散方法も見つけられず、結果としてネット上で一方的に感情をぶつけるという誤った行動に出てしまいました」
「二度とこのような過ちを繰り返さないために、『被害企業に関する投稿は一切しない』『精神的に不安定な時はインターネットから物理的に離れる』この二点を生涯に渡って継続してまいります。自分の行為が決して許されないことは重々承知しております。今回の件を自分自身への最大の戒めとし、被害企業とは永久に距離を置くことといたします」
──改めて被害企業に関連する、インターネット上での投稿をしないことを宣明しますか
「自分は被害企業に関するインターネット上での一切の投稿を、今後永久に致しません。この誓いを生涯に渡って遵守することを、ここに固く宣明します」
自分の不幸を言い訳にするな
この件とは別に、配信者への執拗な嫌がらせで所属企業から訴えられたケースがあるのですが、あちらの加害者も毒親育ちによる潜在的な精神不安が行為の原動力となっていました。あちらの加害者は猛省の末にこのようなことを述べていました。「自分のつらさに他人を巻き込むのは、何よりもやってはいけないことだ」
自分の不遇や不幸で溜まっていたムシャクシャをネット上で発散するのが、誹謗中傷にハマる人間の本質と今のところは言えそうです。ネット上のクレーマーだとかヘイトスピーカーだとか、ああいったものと地続きなんですよね。それで肥え太った被害者感情が悪辣で粘着質な攻撃へと転化しているという訳です。攻撃の言い訳に自身の不遇や不幸を挙げるような、みすぼらしい生き様を避けるのが、誹謗中傷の加害者にならない秘訣と言えそうです。


