うつ病で強制終了した私が思う ~リスタートするためにすべきこと
うつ病出典:https://unsplash.com/photos/XIKBB9upCcI
「この診断書を会社に郵送しなさい。会社には行かなくていいから」
2019年 梅雨間近の土曜日の夜。夜間診療に駆け込んだメンタルクリニックの先生の一言で、私の会社員生活は強制終了となりました。うつ病と診断され、その日から人生初の長期休暇が始まったのです。
再就労を目指し、アップダウンを繰り返す中で見えてきた、人生をリスタートするために今すべきだと思うことを綴りたいと思います。
残業の日々に「充実感」を感じていた仕事人間
社会人になって20数年、ずっと事務系職種を中心に働いてきました。
転職も経験していますが、職場は比較的少人数規模のところが多く、担当部署に事務方が1人の際は、部署や支店の事務作業を一手に引き受けるため、来客、電話応対から仕入、販売、在庫管理、見積や請求書、他資料作成、月次経理処理、等々。さらには、一般事務、営業事務、販促、総務、労務、経理……etc。各分野を状況に応じて担当していました。そのため、納期に追われることも多く、残業は当たり前、時期によっては終電での帰宅が続くことも珍しくはありませんでした。
このような生活を長年続けていましたが、今振り返ると、当時の私はそのような状況の自分に酔っていたのかもしれません。
「私は頑張っている」「私は役に立っている」「ここには私が必要なんだ」そう思うことで、「充実感」や「自己肯定感」を得ようとしていたのかもしれません。
しかし、実際にはいくら頑張っても満たされることはなく、その不満の捌け口は、深夜の過食につながっていきました。
徐々に表れたうつ症状
直近の職場もすでに10年以上勤務していたため、仕事にも慣れ、日々忙しく残業しながらも、顧客や社内での人間関係もスムーズに責任とやりがいを持って取組んでいました。漠然と「このままずっとココに居るのだろう」と。
ところが、2018年の秋頃から社内人事とそれに伴う業務担当の変更があり、私の業務には直接の大きな変更はなかったものの、それでも関わる人間や業務内容に多少の変化がありました。
この頃から、上司との関係が徐々に怪しくなっていき、それに伴い私にうつ病のさまざまな症状が出始めていました。しかし、当の本人は体調不良は認識しつつも、そこまで深刻には捉えていませんでした。それよりも、会社や仕事で上手くいかない現状のことで頭がいっぱいの状態でした。
症状としては、「ヤル気がでない」「気分は重い」「人と話すのも億劫でつらい」「常に不安やイライラする状態が続く」また「集中が続かない」「人の話や本で読んだことがまったく頭に入らないし、覚えられない」という感じでした。
休職前には身体症状も顕著に表れ、頭痛、肩こり、眩暈の他、動悸が止まらず頻繁に心臓付近を手でトントンと叩くのが癖になりつつありました。さらに、食欲が全くなくなり、自然と3~5㎏程体重も減っていました。
中でも一番つらかったのは、「夜、眠れない」ことでした。正確には2~3時間は眠れたとしても、一度目が覚めると眠れなくなる「中途覚醒」が続いたことでした。
眠れない中で「明日も会社に行かなけれなならない」とずっと考えてしまい、胸が苦しくなりこの頃はよく吐き気を催していました。常に頭は会社のことを考えフル回転しているものの、空回りでただ疲弊していくだけの毎日でした。
ある日、上司と残業中に今後の業務方針について話していた際、「君、自分はコミュ障じゃないかと思ったことないの。病院行ってみようと思わないの」と言われたことがありました。
明らかに嫌味を含んだその口調に、「病院って精神病院ですか。 私は自分がコミュ障だとは思っていませんので」と反論しましたが、この時の会話でもザックリと心を突き刺された感覚がありました。
この頃になると上司との会話は非常にギスギスしたものがあり、話しかけなければならないと思うだけで身体は強張り、気は重く、変な緊張をするようになっていたように思います。
今思えばこの時からすでに、強制終了へのカウントダウンが始まっていたのです……
日に日に症状がつらくなっていったので、このままでは心身共に潰れてしまうと思った私は、意を決して上司に不調を訴えましたが、その時返ってきた言葉は「さっさと病院に行けばいいだろ。行くなとは言ってないだろ」というものでした。
この時、私の中で張り詰めていたものがバラバラと崩れ落ちたような気がしました。
退職が更なる追い打ちに
上司との関係が悪化するにつれ、関連する同僚とも関係が崩れて来ました。症状も酷くなる一方でしたが、私の中には「会社を休む」という選択肢はありませんでした。
眠れないまま朝を迎え、起きなければいけない時間になってもなかなか動けず、いつもベットから無理やり這い出るような状態でした。このような状態でも会社では今まで以上のパフォーマンスを求められました。
「このままでは本当に潰れてしまう」と退職を考え始めると、今度は無職になる恐怖、不安が追い打ちをかけ、精神的にも肉体的にも益々弱っていきました。
この間にも何度も上司と話合いをしましたが、折り合うことができず、結果このまま仕事を続けるのは難しいと思い退職することになりました。
退職が決まれば、「君の勝手で辞めることで、会社は大変になるのだから、これまでの全てをきっちり引き継ぐように」と指示があり、通常業務をしながらの完璧な引継ぎを求められました。私の心身は既に壊れつつあったのですが、この状況でもまだ私は「せめて引継ぎまではやり遂げなければ」と考えていました。
そしてついに、その日がやって来たのです。
うつ病と診断され強制終了
うつ病の症状が出だしてから数ヶ月。
この頃は常に疲れており、頭も働かず、ちょっとした日常会話をすることも、とてもつらい状況でした。
頭痛、眩暈、吐き気は慢性化し、あまり食べていないので吐くものはないのに、吐き気に襲われトイレに駆け込むことが度々ありました。動悸も激しく、今ここで心臓が止まるのではないか……と思うこともしばしばでした。
それでも「引継ぎをしなければいけない」との脅迫にも近い思いから、毎日会社には出勤していました。朝起きて、出勤し、夜帰るまでの一日一日を必死で耐えていたように思います。
そんな毎日を過ごして、迎えた金曜日の帰宅時。
胸が締め付けられるような苦しさで立っているのも辛く、このまま家に帰ることもできないと思った私は、数件の心療内科へ電話したのですが、どこも予約でいっぱいで診てもらうことはできませんでした。
そこで友人に土曜日に来てもらう約束してもらいました。一人でいることがこんなにも不安になったことはこの時が初めてでした。
翌日、来てくれた友人が、ベットに倒れこんでいる私を見て、「これはマズイ、早急に病院に連れて行かないと」と、精神科、診療内科のある病院を探し、土曜日で休診が多い中、やっと見つけて何とか最終時間での受診予約を取れたのが、現在も通っているクリニックでした。
この時の私は、問診表の質問にも考え込み、自分の症状を説明する言葉を発するのもたどたどしく、状況説明で職場のことを語るだけで涙が込み上げてくる状態でした。
この時の診断が「うつ病」、「この診断書を会社に郵送しなさい。明日から会社には行かなくていいから」と言われました。
この時の私はそれでもなお、「でも先生…引継ぎをしなくてはいけないんです」「引継ぎが残っているんです」と泣きながら、うわ言のように言っていました。
そんな私に先生は「会社に行ってはいけません」を繰り返し仰っていました。
就労支援事業への通所
この初診で「うつ病」と診断されて以来、会社には行かず、そのまま休職、その後退職となりました。
退職の手続きで会社とのやりとりがあり、フラッシュバック等に苦しめられましたが、何とか終えることができました。
この時にも多くの友人、知人に励まされ助けてもらい、なんとか乗り越えることができました。本当に友人たちの優しい心には感謝の思いでいっぱいです。
初診時、処方された薬は6種類(不眠、吐き気、精神安定)でした。うつ病のひどい症状は薬を服用することと、休職したことで徐々に収まっていきました。
しかし、薬を飲むと中途覚醒もなく良く眠れるのですが、今度は朝起きることがつらくなってきました。主治医に相談したところ、「では薬は止めてみよう」ということで、2ヶ月経たないくらいで薬は全く飲まなくなりました。今でも薬は飲まずに済んでいます。
しかし、休職から2ヶ月も過ぎたころ、体調は大分回復してきたが、どうにもヤル気がでない。気持ちは重いままで、不安・焦り・恐怖に落ちるとそのままネガティブなループによくはまってしまいました。医師に相談すると、「では生活リズムを整える目的も含め、就労支援事業所に通ってみてはどうか」ということになりました。
生活リズムの乱れに不安を持っていた私は、すぐにクリニック併設の就労支援事業所に通うことにしました。
目標はうつ病になる前の自分に戻ることではなく、楽に生きれる自分に変化すること
現在は、就労支援事業所に通いつつ、就活を始めようとしている段階です。
今、私が思うに、うつ病が「治る」とは、「病気になる前の自分になる」ということではなくて、「もっと楽に生きれる自分になる(=今の自分を認めて許す)」ということ。
なぜなら、以前の私は病気になる要素を多分に抱えながら働き、暮らしていたので、その自分にだ戻るだけならば、また病気になってしまいます。
「病気にならない自分に変化する!」それが再発防止の重要項目であり、リスタートするための最短ルートでもあると思っています。
病気になったことで思いがけず得た長期休暇。これを有効活用し、将来振り返ったとき、「あの時病気になってよかった」と思える時間にしたいです。
参考文献
【厚生労働省 コラム・活動事例・資料 編】
https://www.mhlw.go.jp/index.html
【すまいるナビゲーター うつ病ABC】
https://www.smilenavigator.jp/utsu/
【こころの耳 早く気づけるストレスケア】
https://kokoro.mhlw.go.jp/
うつ病