キングオブコント2020「空気階段」のネタについて~障害者を揶揄している!VS.拡大解釈ではないか?
知的障害 エンタメキングオブコント2020でお笑いコンビ「空気階段」の披露したネタが物議を醸しているとの事です。キングオブコントのファイナルステージという、日本一のコントが決まる最後の晴れ舞台で、一体どのようなネタを披露したのでしょう。
ネタの舞台は定時制高校で、雄叫びしか上げない男子生徒とその雄叫びが分かる上に想いを寄せている女子生徒という設定です。男子生徒の設定は書き言葉や聞いている歌まで雄叫びばかりという徹底ぶりで、これが批判の的となったようです。「裸の大将」を少し現代チックに寄せたようなコスチュームも相まって、一部から「知的障害者を馬鹿にしている!」という批判があがりました。
一方、批判に対して「騒ぎ過ぎではないか」と窘(たしな)める声もあります。実際にネタを見ても「雄叫びが本質ではないだろう」というのが正直な私見なのですが、あまりの紛糾ぶりに結論を出すのも難しそうです。騒ぐ方が偏見まみれだったということは無きにしもあらずでしょう。
障害者を揶揄しているとの声
ファッションを少し現代に寄せた「裸の大将」が書き言葉まで雄叫びだけのコミュニケーションをするという設定が、「知的障害者を揶揄した表現だ!」と槍玉にあがりました。バズプラスの記事では空気階段のネタについて批判するツイートが集められています。
「これは障害者差別だよ。障害者と決めつけるなって言われそうだけど、ウガガガーしか言えないのは明らかに障害者でしょ」
「今の知的障害者みたいなのが出てくるコント、なんて言えばいいか分からない」
「知り合いにいる癇癪持ちの知的障害者と似ていて複雑だ」
学校というシチュエーションも、知的障害者をイメージしやすくするものだったのでしょう。交流学級っぽく見えなくもないですが、左下に「定時制高校」というネタ名のテロップが出続けていたので、若干無理なこじつけにも思えます。
騒ぎすぎ、拡大解釈との指摘も
一方、批判ツイートに対して「拡大解釈ではないか」と疑問視する指摘もあります。このネタの最後は、片方が雄叫びだけのままカップル誕生までするというオチで締められており、笑い物にするとは少々違うのではないかという意見です。
審査員の評価も全員90点越えと高評価で、巷でも「空気階段が一番面白かった」と称賛されていました。「障害者に見えるのは、自分が障害者を馬鹿にしてるからでしょ」と、寧ろ過剰反応する方が差別的とする声もあります。
ところで擁護派の発言に「このネタが駄目なら、中川家も駄目だろう」というものがありました。恐らく持ちネタの車掌芸だと思うのですが、飽くまで“車掌”の真似である筈です。発言者は何のつもりで中川家を引き合いに出したのでしょうね。
実際に見てみた感想
実際にそのネタを見た所感としては、気にするほどでもないと思いました。笑いどころも「なぜか言っていることが分かる」「しかもラブロマンスが勝手に進行している」という所にあり、雄叫びは本質でないのでしょう。
そもそも「Mr.ビーン」ですら同じような理由で嫌っている人さえいます。コントにおける目標の一つは「言葉に頼らず笑わせる」ことであり、言葉を使わない以上大袈裟な身振り手振りや複雑なセットで補わねばなりません。そのコミカルな仕草が人によっては「ありえない!」となるわけです。
コメディアンの中には「ふざける」ことに対して真摯に真剣に取り組んでおられる人もいます。漫画界でも、赤塚不二夫さんが孫弟子に「ギャグ漫画を描きたいならチャップリンと黒澤映画を研究するんだ。真剣にふざける姿は大きなヒントになる」とアドバイスしたことがあるそうです。
「ふざけて笑わせる」という表現へ真摯に取り組み納得のいく「ふざけ」を作り出した末路が、ネタの表面だけ取り上げて殊更に騒ぎ立てられることだとしたら、これほど不幸なことは無いと思います。ある意味で宿命かも知れませんが。
生きづらさの表明すら誰かを傷つける
「誰も傷つかない表現」というのは不可能で、たとえ悪意がなくても不快感を抱かれることは往々にしてあります。スーパーマリオに難癖をつけるフェミニストや、アンパンマンのアンパンチが暴力的だと騒ぐ人や、いらすとやの絵柄が嫌いだという人など、全国的に受け入れられ浸透した表現すら例外ではありません。
中には自分が感じる生きづらさの表明すらも、どこかの誰かを傷つけます。「メンタルの弱い男性の生きづらさ」を綴れば、同じ生きづらさを抱える人々の共感に混じって「女性差別を煽るな!」「女性の生きづらさを無視するな!」という非難が飛んできます。
偏屈な邪推をせず、最初は表現をありのままに受け取るのが礼儀正しい所作です。はじめから馬鹿にする目的で生まれた表現は別ですが。
参考サイト
バズプラス
https://buzz-plus.com
男性ジェンダーとメンヘラ.jp|小山晃弘
https://note.com
知的障害