うつ病の診断を受けた私～受け入れるまでの苦悩とこれから

2021.08.07

うつ病

もしあなたが初めて病院で「うつ病」ですと医師から伝えられたとき、その病名に対してどう思いますか？私の場合は、その病名を受け入れることができませんでした。

うつ病である事実を受け入れることができなかった私が、どのような経緯で受け入れ、前向きに生きていけるようになったかを書かせていただきます。

うつ病と分かるまでの生活

私が初めて精神科を受診したときは、会社員として一生懸命仕事に励んでいました。当時は年末が近く仕事も忙しくなり、休日も仕事のことばかり考えていました。そんな日々の中で、物忘れが増え、夜もほとんど眠れなくなり、仕事への前向きな気持ちがすり切れるような感覚をたびたび感じるようになりました。仕事の繁忙期に近づく時期でしたので、もっと仕事に集中できるようにならなければと思い、自分の体調の変化について上司に話しました。

話を聞いた上司は、危機感を抱いたようです。ただ、その危機感を私に伝わらないように軽い話題の一つとして「精神科病院に行って相談したらどうだ？」と受診をすすめました。

うつ病という現実を拒否した結果

初めて精神科を受診し、医師とさまざまな話をした結果、診断されたのは「うつ病」でした。その診断結果を伝えられたとき、最初に思ったことは「うつ病は嫌だ」ということです。

自分がうつ病である事実に対し経験したことのない大きなショックを受けました。その後、激しい拒否反応を示しました。うつ病ではないと思いたいあまり、上司には診断結果をごまかし、病院に行かず治療も全く受けないというふうに決めてしまいました。

しかし、仕事はその後も忙しくなり、ついには職場で倒れてしまいました。このころ、周囲から明らかに精神面で危ない状態になっていると思われていたようです。ですが私は、まだうつ病である事実を受け入れられず、周囲からの警告を無視し、自分自身からのSOS信号を抑え込むことに必死になっていました。

職場で倒れた後、会社側との話し合いでしばらく休職することになりました。しかし、休職している間も早く復帰しなければという思いばかりで、うつ病とは向き合うことなく過ごしました。おかげで、早期に職場復帰をしましたが、すぐに精神面で耐えきれなくなり、やむを得ず退職をすることになりました。

知らないことへの不安

仕事を退職した後、約半年間、自宅で何もしない毎日を過ごしていました。休養期間を経て、精神面で落ち着きだすと少しずつ将来のことを考えられるようになりました。しかし、その後やってきたのはこれまで経験したことのない不安だったのです。

私はうつ病に対して何も知らないままだったので、これから自分はどうしたらよいのかが、まったくわかっていませんでした。その不安がどんどん大きくなってしまい、不安に怯える日々を過ごしていました。

会話から始まる

私が不安に悩まされている時期、家族や市役所の福祉課の人たちは、私をどうやって支えていくか相談してくれていたようです。家族は、会話を通して私の不安を軽減できるようにしようと、毎日話しかけてくれました。

内容はうつ病に関することや私の将来のことではなく、その日にあった出来事や趣味の話などです。最初は、会話することも辛いと思っていましたが、毎日少しずつ話をすることで会話時間は長くなり、話すことに抵抗感がなくなりました。やがて、会話を楽しめるようになったころ、ようやく自分から「精神科にもう一度行こう」と思うようになりました。

うつ病と向き合う

うつ病の診断を受けてから約1年後、今度は自分の意志で病院にいくことができました。おかげで、うつ病に対して専門的な意見を聞く機会になったのです。医師の話の後、今の自分の状態を正直に話し、どうすれば改善していくのかを相談しました。医師は長い時間をかけてさまざまなことを聞いてくれました。

この日初めて、うつ病を患ってから人に相談できました。帰宅後は家族にうつ病の症状について正直に伝えることができました。その後、医師と家族と相談を繰り返していくと「これから将来に向けてなにをしていいのかわからない」という、大きな不安が少しずつ整理されていったのです。

不安だったことが整理されてくると、今なにをする必要があるのかが見えてきて、そうすると始めてみようという気持ちが芽生えました。そして、気がつけば前向きに物事に取り組む気持ちが出てきていたのです。その気持ちが「就労移行支援」という制度を知ることに繋がり、今は就労移行支援事業所を通じて社会復帰を目指しています。