Memento mori〜死を透かして生を見る

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私は、強迫性障害という病気を抱える精神障害者です。そして、この病気により一時期とても死に引き寄せられていました。幸か不幸か、障害者であろうが健常者であろうが、死は平等に与えられています。しかし、死を身近に感じている精神障害者は多いのではないでしょうか。そこで、障害者である私が、死とどのように向き合い和解したのか、そこから見えてきたものは何なのか、という点についてお話させて頂きます。

もっとも、以下の記述は、現在の私の考えです。したがって、今後この考えを改めることもあり得るし、あくまで私の考えであって普遍的なものなどではありません。その点に留意して読んで頂ければと思います。ただ、これをきっかけに死や生について少しでも思いを巡らせて頂ければ幸いです。

はじめに

誰しも死に足を踏み入れようとしたことの一度や二度はあるかと思います。とりわけうつ病をはじめとする精神疾患をお持ちの方の中には、希死念慮に悩まされている人も多いのではないでしょうか。

死への近接

死への歩みは人それぞれではないかと思います。人知れず煩悶とし、溜まり溜まったものに飲み込まれ死に至る人、突発的に沸き起こった死への誘惑に負けてしまう人もいるでしょう。あるいは、生の淵で踏ん張っていたところ、家族や友人、同僚、上司などの心無い一言で足を踏み外した人もいるでしょう。また、当人に死を意識させた理由も、病気、貧困、人間関係、仕事や家庭の問題、金銭問題など多岐にわたるでしょう。

私の場合は、将来への不安、生きづらさ、生きることに疲れた、といった漠然としたものでした。小さい頃は、子供なりの悩みはあったものの何も考えず楽しく生きていました。その後も、様々な苦悩はありましたが、生きることをやめようとまでは思いませんでした。しかし、30歳を迎える頃、状況は一変しました。私は、大学卒業後、法律に関わる仕事がしたいと思い、就職せずに勉強を続けていましたが、結果を残せないままでいました。何も手にできないまま歳を重ね、取り返しのつかないところまできてしまったような気がして、とても恐ろしく思いました。そして、追い討ちをかけるように、急に病気(強迫性障害)が悪化したのです。当時は、目を覚ましている間はずっと強迫観念に追い回されていました、ひどいときにはそれが夢の中まで追いかけてきました。

このような事が重なり、私は疲弊しきっていました。とにかくすべてのことから逃げ出したいと思っていました。死にたいとは思いませんでしたが、生きたいとも思いませんでした。私は、どうすることもできないまま無益な時間を過ごしていました。

光を見る

そんな中で、私は自分の死や生について真剣に考え始めました。そして、今死ななくても、いつかは必ず死ぬ、という当たり前のことを思い出したのです。私たちは、死に規定された存在です。そうである以上、生きるとは死にむかって走ることだといえます。このように考えると、死は決して異物ではないということが分かります。すなわち、死は、生と分かち難く結びついた存在であり、いわば表裏一体なのです。したがって、死を見つめるときでも、その視線の先には生があるのです。それ以来、死を敵視することはなくなり、むしろ死を意識することで今ある生の輝きが増すのだと考え始めました。

生きることに賭ける

死んでしまえば、死んだことを後悔することすらできません。結果的に死んでよかったのかを検証することもできません。それならば、生きることに賭けてみてはどうでしょうか。もしかしたら、生きていてよかったと思える幸せな瞬間に出会えるかもしれません。たとえ瞬間的な幸福であっても、このために生きていた!この先も生きていける!と言えるようなものに出くわすこともあると思います。人生何があるか分からないという不確実性は、悪いことだけに妥当するものではないはずです。思わぬ幸福が訪れることも同じくあるのです。

最後に

前向き過ぎる言葉は、あまりにも眩しくて気が滅入ってしまうため、このような語り口になってしまいました。もちろん、このようなことを語ったところで死の間際にいる方にとっては空虚に映るかもしれませんし、私の言葉など無力でしょう。しかし、100万人に1人でも、これを見てハッとしてくれる人がいるなら、私も救われます。

「世界から離れてはいけない。人生が光にさらされるとき、人生をやり損うようなことはないのだ」(アルベール・カミュ『太陽の賛歌』新潮社〔1962〕28頁)

どうか生きてください。

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30代男性。大学卒業後、それまで勉強などしたことはなかったが、法律に出会い勉強を開始。しかし、30歳あたりで幼少期からの強迫性障害が急激に悪化し、人生が頓挫。リスタートしようと思い、現在は就労移行支援事業所にてPCスキルを学んだり、セルフマネジメントに取り組んでいます。

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