吹田の拳銃強奪犯・飯森裕次郎容疑者について~精神疾患と責任能力
その他の障害・病気 統合失調症6月16日、大阪府吹田市の交番で警官が襲撃され、犯人が拳銃を奪い逃走したというショッキングなニュースが駆け巡りました。拳銃を奪った犯人がどこへ潜伏しているかも分からない中、翌17日未明に箕面市で逮捕となり緊迫の夜は終わりを告げました。襲われた警官も一命を取り留め、事態は丸く収まりつつあります。
犯人の飯森裕次郎容疑者については家族・職歴・既往歴と様々な側面から暴かれていきました。父親がテレビ局の重役であること、元自衛官で訓練を受けていたこと、そして精神疾患持ちであることです。
持ち物から心療内科の診察券や精神障害者保健福祉手帳2級が見つかっており、取り調べに対しても「病気が酷くなったせい。周りが酷くなったせい。」と供述しています。飯森容疑者の精神疾患とは何なのでしょうか、そして精神疾患が今後の裁判にどう影響するのでしょうか。
統合失調症で精神2級はどのくらいなのか
まず精神障害者手帳には1級から3級があり、数字が小さいほど重い障害となります。飯森容疑者の2級は真ん中にあたり、3級に比べると日常生活への支障が大きく直接の援助を要します。なお、1級は常時生活援助を必要とするレベルです。
飯森容疑者が事件直前まで働いていたゴルフ場には障害者枠で雇用されていたので、少なくともゴルフ場に就職する時(昨年11月)には既に手帳の交付を受けていたことでしょう。
さて、飯森容疑者の持つ精神疾患とは統合失調症である可能性が強いです。5年前に「心臓から昔住んでいた吹田市の人々の声が聞こえて困っている。」と警察に話していたようなので、幻聴に悩まされていることは確かでしょう。
仮に統合失調症だった場合、妄想や幻覚が動機の一部となるかもしれません。供述通りではあります。寛解を待たず見切り発車で就活をしていたのであれば、病状が悪化するのも大いに頷けます。個人的に気になるのは、ゴルフ場に就いてから通院と服薬が出来ていたかどうかですね。
かなり計画的とされているが…?
詳しいことは精神鑑定待ちとなるので、こちらで何か断言することはできません。ただ巷では「心神耗弱などありえない!」という意見がメジャーです。いつもながらですが。
根拠としては高い計画性が挙げられています。吹田市内でも高校まで過ごしていて土地勘のある場所を選び、狙いの交番には人払い目的で嘘の通報を行い、警官が一人になったところを襲撃する流れは衝動的に出来るものではないでしょう。
ただ、強固な妄想に基づいて計画を立てていた可能性も捨てきれないのです。妄想ながら本人にとっては吹田市で成し遂げたい何かがあったのかもしれません。とはいえ、素人がいくら予想しても仕方のないことでしょう。
それにしても、やはり通院や服薬が出来ていたのか気になります。そもそも就活する事を主治医に話したのかというレベルですら疑問です。
心神喪失・心神耗弱なら放免という訳ではない
事件に精神疾患や障害が絡むと頻繁に「精神疾患での心神喪失と言い張って無罪になろうとしている!」という叫びが聞かれます。確かに心神喪失が認められると不起訴処分や無罪判決によって刑事的責任を問われなくなる場合はあります。
ところが、この後に措置入院など精神科による集中的な医療を受けることになりますので、無罪放免のまま即座に社会復帰する訳でもないのです。刑務所で精神医療は受けられないので、再犯防止の観点では刑事的責任を問わず治療に専念することも選択肢として十分あり得ます。
勿論、責任能力があると判断されれば通常の裁判で量刑を考えていくことになります。
まとめ
大阪全体を緊張させた拳銃強奪犯の飯森容疑者ですが、精神障害者福祉手帳が出たり精神疾患の悪化を動機として供述したりと、逮捕された後も不穏な動きを見せています。
彼の病状が何であろうと、精神鑑定や裁判所の判断に携わっていない限りは本当のことなど分からないのですが、せめて通院や服薬が十分に出来ているかどうかは明らかにしてもらいたいところです。
たまに「精神障害者無罪」という叫びが上がりますが、前述の通り責任能力なしと判断されても措置入院などの集中治療があるので無罪放免で社会復帰とはなりません。「疾患で迷惑かけておいて寛解だけして戻ってこられるのは癪だ!」と言われればもう何もかける言葉はないのですが。
参考文献
統合失調症の更に詳しい情報|統合失調症|心の病気を詳しく知ろう|みんなのメンタルヘルス総合サイト
https://www.mhlw.go.jp
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