社会不安障害の心の持ち方~アドラー心理学を用いた私の場合

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アドラー心理学という名前を聞いたことがありますか。もしかしたら、「嫌われる勇気」という本でアドラーの名前を聞いたことのある人もいるかもしれません。165万部のベストセラーになり、舞台化やテレビドラマ化して爆発的にアドラーの知名度が上がりました。最近になって注目されるようになりましたが、実はアドラーが活躍していたのは、有名なフロイトやユングと同時期なのです。私は社会不安障害で長年苦しんできましたが、アドラー心理学と出会ってから自分の障害との付き合い方を学べたと感じています。このコラムでは、アドラー心理学の基本的な考え方を、なぜフロイトやユングと比べて知名度が低かったのかを含めて書いていきたいと思います。

フロイトとユング

当時の精神医学の基本的な考えは、フロイトのよって創始された精神分析学でした。精神分析学での治療方針をおおまかに説明すると、まず自由連想法や夢分析と呼ばれる心理分析を行います。自由連想法とは、患者がリラックスした状態で思い浮かんだ言葉を自由に発言してもらいます。それをもとに、カウンセラーが患者の隠された現在の心理状況を分析する方法です。夢分析とは、患者が見た夢をもとに患者の無意識の葛藤や願望を分析する方法です。そして、それらの分析方法を利用して明らかになった葛藤・願望・現在の心理状況を、患者が自覚し意識することで解消に繋がるという考え方が精神分析学の基本になります。当初、アドラーはこの考え方に賛同し、一時期はフロイトと同じ学会に所属して共に研究を行ないました。しかし、フロイトがリビドー論をはじめとする心理発達理論に傾倒し、「性的衝動」が人間の行動の根源だと考え始めたことから決別します。

アドラーの医療に対する考え方

アドラーの医療に対する考え方は、当時の医学界からも異端とされていました。というのも、アドラーは処女作「仕立て業のための健康手帳」の中で公衆衛生、つまり予防医学を提案したのです。当時は、精神医学も含め、「分析して正しい診断をすること」が医学とされていました。そこにアドラーが予防医学を説いたので、異端とされていたのです。「医療は悪くなってから診断するのではなく、悪くならないようにするべきだ」というのがアドラーの考え方でした。余談ですが、初めは町の眼科医をやっていましたが、次第に心理学の研究を行なうようになったようです。

アドラーの心理学の5つの理論

前置きが長くなりましたが、アドラー心理学の考え方を書いていきたいと思います。まず、基本的な5つの理論についての説明をします。

  • ①自己決定性
    劣等性(背が低い、視力が悪い、耳が聞こえない)、劣等感(兄より体力が無い、人より仕事ができない)、生活環境(貧乏、DV)、が直接のその後の人生を決定する訳ではありません。その後の行動を建設的なものにするか、非建設的なものにするかは、自分次第(自己決定性)なのです。

  • ②目的論
    人間の行動には原因があるのではなくて、目的があるという考え方です。

  • ③全体論
    人間の内部は意識と無意識、理性と感情、心と体といった相反する要素にはっきりと分けることはできません。例えば、「わかっちゃいる(理性)けどやめられない(感情)は、要はやめたくない(目的)」といったように、目的があるから辞めないのです。人間は全体として一つの生命体であるため、要素ごとに分けて考えるべきではありません。

  • ④認知論
    人間はそれぞれ自分独自のものの見方・考え方(心の眼鏡)を通して現実に触れ、意味づけをして行動をしています。構造として次のような形を示します(現実・出来事・経験)→(意味づけ・解釈という自分独自の心の眼鏡を通してみる)→(行動する・感情をもつ・判断をする)。同じ現実同じ状況を見たとしても、人それぞれ、その現実状況をどうとられるか解釈するかは違います。認知が異なるのは当然ですが、歪み過ぎている時はなおすべきです。

  • ⑤対人関係論
    人間の行動はすべて対人関係行動で、人間はいつも特定の誰かを想定して行動しています。つまり、人間の行動には目的があり、相手役がいるという考え方です。例えば、怒りという感情や怒鳴るといった行動には、相手を抑圧したいコントロールしたいという目的があります。

具体的な実践方法

では、実際にどのようなことを行なって、5つの理論を進めていくのでしょうか。まず第一に、自分を受け入れることが大切です。出来ている部分はもちろん、出来てない部分・ダメな部分(劣等性)も含めてありのままの自分を受けれます。どんな自分に対しても「イエス」と言ってあげるのです。また、過去の自分に対しても同様です。自分が失敗だと思っていた経験も、それ自体では今後の成功の原因でも失敗の原因でもありません。失敗によるトラウマに苦しむのではなく、経験の中から目的に適うものを見つけ出せるようになれると、行動が建設的なものになります。そのため、過去そして今後の経験を良い悪いで判断するのではなく、これからの自分にとってプラスにするように取捨選択できる考え方を持つことが大切です。

すぐに実践できること

最初に紹介した実践方法は、すぐには行うことは難しいと思います。ここでは、今日からでも実践できることを紹介していきます。

  • 前向きになれる言葉をつぶやく
    自分に語りかけるセルフトークは、プラスであれマイナスであれ、心に強い影響を与えます。そのため、「うまくできた」「良い感じ」といった簡単な言葉を自分に掛けてあげてみることも良いです。

  • 朝と夜の習慣を整える
    朝目が覚めて、大きく伸びをして「あぁ爽快だ!」「今日も頑張るぞ」などと言いながらおきます。次に、顔を洗ったあとに鏡に向かってニコっと笑顔をしたり、朝のあいさつも元気よくしてみましょう。夜寝る前に「今日も良い一日だった」と言ってから就寝するのも気持ちが前向きになります。

  • 自分の品位を守る
    ありのままの自分を受け入れることは自尊心をもつことです。自分を尊ぶ心は、尊ぶ自分があってこと高まるのです。そのため、自分の品位を下げない行動が自分を大切に思うことに繋がります。ポイ捨てや信号無視など、自分の品位を下げうる行動をやめてみましょう。

私が実践すべきだと思っていること

私が社会不安障害の克服のために特に意識して実践していることが2つあります。1つ目は、人の良い面を捉えるということです。アドラーの考えの中に、楽観的になるべきというものがあります。楽観的とは、悲観的の対義語で用いられています。悲観的な人は、人と接する際につい相手の中の許せない部分を見つけてしまいます。これでは、相手の粗ばかり見つけることになり建設的な関係が築きにくくなりがちです。対して、楽観的な人は、人の良いところをみて接しようとします。相手の良いところを探して、良いところには積極的に肯定的な言葉を掛けることで良好な関係を築くことに繋がります。

2つ目は、なぜ?と問うことも控えるようにしています。なぜという質問は、自然現象の解明など自然科学の分野では有益です。しかし、対象が人間の心であるなら有益とはいえません。理由としては、その問いかけで原因は解明できたとしても、解決方法が分かるわけではないからです。そのため、人間のやることにたいしてなぜと問うのはなるべく避けた方が無難だと思います。なぜの代わりに、何のために?やどうやって?など手法を聞く方が良いでしょう。原因の追求より、解決策を考えるようにした方が建設的に物事を考えられるようになります。

まとめ

アドラーという人物とその心理学について、簡単にまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。私はアドラーの心理学を学びだしてから、物事への認識が楽なものになり、病気とも上手く付き合えるようになってきたと感じています。もし、このコラムで少しでもアドラーに興味をもってくださった方がいたら幸いです。より詳しいアドラーについては、以下にオススメの書籍をあげておきますので、是非ご一読いただけたら思います。最後に、アドラーの代名詞である、劣等感についてふれてこのコラムを締めたいと思います。

劣等感とは、誰かと比べて主観的に自分を劣等だと感じることです。こうありたいと思う目標と現実の自分とのギャップに直面したときにもつマイナスの感情も含まれます。他者と比べて劣っている自分や、思ったとおりにできない自分に対してもつマイナスの感情なのです。人は、【目標をもつかぎり劣等感を持つ】ことになります。大事なのは、その劣等感とどう付き合ってどう生かすかなのです。

参考文献

「もう疲れたよ・・」にきく8つの習慣働くためのアドラー心理学 岩井俊憲 アドラー心理学入門 鈴木義也(著)

Wikipedia アルフレッド・アドラー
https://ja.wikipedia.org/

Wikipedia ジークムント・フロイト
https://ja.wikipedia.org/

Wikipedia 精神分析学
https://ja.wikipedia.org/

こみやま

こみやま

少しずつですが就職に向けて活動しています。

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