飲み過ぎ注意!水中毒、多飲症をご存知ですか?後編

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◀過去の記事:飲み過ぎ注意!水中毒、多飲症をご存知ですか?前編

前回の記事をご覧いただいた方は水の飲み過ぎが、いかに危険かお分かり頂けたと思います。今回は私が水中毒や多飲症になってしまった経緯や体験談をお話します。また多飲症の当事者の生活ぶりや多飲症から抜け出すためにどんな努力をしているのかも、合わせてお読みください。

多飲症とは?

水中毒とは多飲(水を多く飲み過ぎること)によって体内のミネラルバランスが崩れ、疲労感やめまい、頭痛や嘔吐、痙攣や意識障害などの中毒症状が出ることを指します。つまり、一度に大量に水分を摂れば誰もが陥る中毒症状のことです。一方、多飲症というのは中毒症状が常態化しているにも関わらず、水を沢山飲むことを止められない病気を指します。多飲症の患者は麻薬を欲しがるように水を欲しがってしまいます。私もかつてはそうでした。今も完全に克服できた訳ではないのですが、自分の飲水量をある程度コントロールできるまでになりました。以前の自分からは想像できないほど飲水量は減りましたが、それでも一日4リットル程は飲んでしまいますし、ストレスを感じたときはもっと飲水量が増えることもあります。

私が多飲症になったワケ

私が多飲症になったのは17~18歳頃のことでした。15歳の時から精神科に通い、治療を受けていましたが、中々合う薬が見つからず、自傷・他害行為が日常的にありました。その為、向精神薬の大量投与が長く続きました。その時の薬に副作用で異常に口が渇く薬(アナフラニール)があったのです。それを服用している間はとにかく口が乾いて喉が渇いて、いくら水を飲んでも飲み足りず、渇きを癒せない状態が続きました。もはや“飢え”に近い状態で、私はいつでも水を持ち歩き、常に水を飲むようになりました。医者からは「“口が乾く”のと“喉が渇く”のは違う」ので我慢するよう言われましたが、我慢など出来るレベルの渇きではありませんでした。自分では死ぬほど我慢してやっと少し飲んだ、という認識でも我慢が足りないと言われるのですから。

また対策として、氷を舐めたり、口を濯いだり、うがいをすることを勧められましたがどれも上手くいきませんでした。唾液も全く出ないので、いつも口はカラカラ、口を開こうとしたときに口の中が乾き過ぎてうまく開けられず、出血したこともありました。いつしか水中毒の症状が常態化し、どんなに体調が悪くなっても水を飲むことがやめられなくなりました。

多飲症患者の生活

2~3年程経って薬の服用を止めた後も、多飲は続きました。その頃、一日にどのくらい水を飲んでいたかと言うと18~22リットル程です。なぜそんなことが分かるのかと言うと毎日記録につけていたからです。レコーディングダイエットというダイエットの手法がありますが、それを飲み水に応用して飲水量を減らそうとしていたのです。しかし、この時医師が「無理に飲水量を減らさなくて良い。でも記録だけはしっかりつけること」という指示を出していたため私には何の効果もありませんでした。何故なら私は言われたことを言葉通りに受け取る性格だったからです。レコーディングダイエットの利点は意識しなくても書いているだけで、摂取量が減るというものですが、私には何の効果もなかったということです。本当にただ単に記録しただけで終わってしまったのです。

そんなことをしているうちに、水中毒の症状が悪化して倒れ、救急搬送される回数が増えていきました。ただ救急搬送されたからといって、医療処置をしてもらうことは殆どありません。なぜなら体内の水分量が多過ぎて症状が出ている為、自分で水分を排出するまで待つしかないからです。点滴でミネラル分を入れてもらうこともありますが、人体に血液よりも濃い濃度の液体を入れることは出来ないので、点滴をしても結局体内の水分量を増やしてしまい、命を落とす危険性が高まるからです。

その頃の私は、車で10分の距離に出かけるだけでも5リットル程の水分を持ち歩かなければ落ち着かず、家を出る時は毎回2リットルのペットボトルを2本(計4リットル)持って出るのが習慣になっていました。お店を選ぶ際はドリンクバーがあるかどうか必ずチェックしていましたし、外出先では常にお茶や水を購入していました。恥を忍んでお話しますが、本当に飲み物が何もなくなった時は、公園の蛇口だろうがどこかの手洗い場だろうが蛇口を探してはそこの水を飲んでいました。普通の方なら我慢できるところが、常に水を飲んでいなくてはいられない状態にまで悪化していたのです。食事やトマトジュースなど、味のついているモノは全て水の「おかず」でしかなく、生活の全ては水を飲むためにどうするかという基準で回っていました。

遂に医者から命が危険だという通告を受け、やっと私はこのままではいけないと気が付いたのです。

飲水量を減らすために

だったら塩をとればいいじゃないかと思う方もいると思いますが、私も医者の助言に従い水と一緒に塩分とポーションタイプのレモン果汁を摂取していました。しかし人間の体液と言うのは様々なミネラルや物質が、絶妙なバランスで組み合わさっている物です。今では一般的になった経口補水液ですが元々は病用のものです。私もよく薬局で購入していましたが、その当時は今よりも手に入りにくいものでした。経口補水液にも一日の限度摂取量がありますし、そもそも毎日多量に飲んで良いものではありません。水自体の摂取量を減らさなくては命にかかわる状態でした。

そのため、まず飲水量を制限するため一日の摂取量を8リットルに制限するところから始めました。どうやって制限していったかと言うと1リットルのペットボトルを用意し、そこに水を入れ、時間を区切ってその時間に飲める水はそれだけ、と決めるのです。しかし幸か不幸か日本ではどこでも蛇口を捻れば安全な飲料水が手に入ります。最初は何度も失敗し、トイレで隠れて水を飲んだこともありました。1日8リットルと聞くと普通の方はギョッとしますが、一日20リットル飲んでいた私からすれば午前中で飲み切ってしまうほどの量でした。最初は「死んでしまう!」と思うほどの苦しみに襲われ、それはそれは辛かったのですが、飲めば死が待っているという現実は認識していたので、厳しく量を制限し続け自分を戒めることで、量は次第に8リットルに収まるようになりました。そこからは数ヶ月に1リットルのペースで量を制限していき、今は4リットルの制限の中で生活をしています。

まとめ

いかがでしたか?多飲症患者の言う「飲み過ぎ」の量は桁が違うことをお分かり頂けたかと思います。私はたまたま自力で飲水量を減らすことが出来ましたが、一般的に多飲症患者が自力で飲水量を制限することは難しく、専門家の手が必要な場合も多いです。専門機関も少なく、多飲症患者は隔離されて飲水量を制限するのが一般的とされています。

「薬も過ぎれば毒となる」と言いますね。皆さんも食べ過ぎ飲み過ぎにはくれぐれもご注意ください。

sakurako*

sakurako*

高校生の時に不登校になりパニック障害と診断される。その後、紆余曲折あり自閉スペクトラム症・解離性障害と診断を受け就労支援施設B型作業所に通う。
現在は就労移行支援施設に通いながら就職活動中。
趣味は読書と映画鑑賞、手芸。“世界をもっと優しく”がモットー。

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