インクルーシブ公園の6割超「障害者と関わる機会がない」~遊具だけでは不十分。理想と現実の乖離か
暮らし その他の障害・病気Photo by Adrien Olichon on Unsplash
公園の中には、障害の有無に関わらず楽しめるユニバーサルデザインの遊具(背もたれのあるブランコなど)を設置している所が存在します。多様性を尊重するインクルーシブの公園なので、ここでは便宜上「インクルーシブ公園」と呼びましょう。
インクルーシブ公園の利用状況について関連団体が聞き込み調査を行ったところ、本来の理想である「障害の有無によらず遊具で遊んでいる」とは程遠い現実が浮き彫りとなりました。結果をまとめるのは来年3月ごろを予定しているそうですが、今分かっている範囲での結果が公表されています。
渋い結果
一般社団法人「TOKYO PLAY」と公益財団法人「公園協会」が連携のもと、インクルーシブ公園の一つである都立砧(きぬた)公園内の「みんなのひろば」(世田谷区)にて8月31日から9月13日まで聞き取り調査を行いました。回答者は大人と子ども合わせて200人で、うち障害者は27人でした。
障害者も訪れるインクルーシブ公園での調査に関わらず、身内や家族に障害者のいない家庭では「障害者と関わる機会がない」という答えが目立ちました。その数、大人140人中93人です。回答には「障害のある子に会ったこともない」と言う子どもや「障害は自分と関係ない」と言う大人の姿もありました。
障害のある子は「パニックになった所を白い目で見られないか」、障害のない子は「障害を持つ子にケガを負わせはしないか」と及び腰の回答もありました。これらを踏まえ、「障害の有無によらず相手の分からない不安が強く出ており、関わりを避ける心理が働く」と分析されています。
インクルーシブ公園を利用しない障害者の声も別途聞いたところ、「迷惑をかけそうなので、そもそも人の多い場所に行かない」「障害者理解に乏しく心的負担が大きい」と最初から諦めているような回答がありました。コロナ禍の影響を差し引いてもインクルーシブ公園に出向く気になれない家族は居るように思われます。
遊具だけ置けば済む話ではなかった
インクルーシブ公園の理念にとってあまりにも厳しすぎる現実が突き付けられた格好です。調査の結びとして「風向き自体が変わらなければ、障害を持つ子が公園で遊ばない」と述べられ、依然厳しい世間の目を体感していました。
ソフト面ではユニバーサルデザインの遊具などで充実させられても、包摂する地域というハード面に問題があったという手痛い結果です。
一方、「インクルーシブ公園だからこそ、障害のある子も遊べると思って訪れた」という前向きな声もあり、調査した法人は「障害者の困難や意見を地域で理解し合うのが第一歩となる。我々は公園という分野でそれを始めていきたい」とも述べていました。
障害者に会わない子ども、関係ないと言い張る大人
それにしても気になるのは健常者側に「障害者と会ったこともない」「障害者は自分と関係ない」といった、さも健常者オンリーのコミュニティだけで生きてきたような回答があったことです。支援学級との交流が盛んになっている筈の現代っ子が「会ったこともない」と言い切るのは何故でしょう。
このコラムやこのコラムでも述べていることなのですが、交流学級などで実際に障害を持つ子と接しているのは一部クラスのこれまたごく一部に過ぎません。低学年ならまだ多いでしょうけれども、学年が進むにつれて関わる子は減少かつ固定化される傾向にあります。(いわゆる「~ちゃん係」)
全ての子どもが支援学級生と関わるわけではないため、「障害者と会ったこともない」と言い切ってしまうのも存外あり得てしまいます。または、ユニバーサルデザインの遊具が対象とする“身体”障害者には会ったことがないという意味かも知れません。
「障害者は自分と関係ない(≒自分の生活範囲内に存在しない)」と言い張る大人も、年代によっては交流学級などなく本当に障害者と無関係な生活を送っていたことでしょう。交流学級があったとしても、支援学級生との関わりを低スクールカーストに任せきりだったのではないでしょうか。
見た目で分かる範囲の身体障害ないし知的障害に会ったことがないというだけかもしれません。作業所や障害者雇用枠など健常者と隔絶されたフィールドがそう言わせているともとれるでしょう。何にせよ、「障害者とは生きている世界が違う」と考える人が未だ多い以上、インクルーシブ公園の理念に現実が近づくまで非常に遠いのは確かです。
参考サイト
6割超「障害者と関わる機会ない」関連団体など「誰もが楽しめる」公園で調査:東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp
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