植松聖の獄中結婚と、それに伴う篠田博之編集長のレポート

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Photo by Camille Airvault on Unsplash

だいぶ遅れて知った話なのですが、植松聖が2025年2月28日に獄中結婚したそうです。これについて、植松に最も詳しいであろう男・「創」編集長の篠田博之さんがYahoo!ニュースに2度記事を投稿しました。実際にお相手の女性から連絡を受け、来歴を聞き、覚悟を問うたそうです。

お相手の女性──篠田さんの記事に倣い同じ仮名の「翼」さんと呼びますが、彼女は障害者によって傷つけられ自身も障害者となった経歴があります。だからといって、軽い気持ちで植松と入籍しようとしたわけではありません。そもそも死刑囚との獄中結婚や養子縁組は軽い気持ちで出来ないような厳しい仕組みとなっています。

死刑囚と入籍する目的は主に面会の機会を得るためとされていますが、パブリックエネミーとしての謗りは到底免れ得るものではなく、篠田編集長も翼さんへの誹謗中傷を懸念されていました。部外者から見れば、障害者ヘイトの旗印にでもなりたいのかと邪推せざるを得ません。ですが、篠田編集長の記事を読むにつれて、常人には計り知れない覚悟があると分かりました。邪推になりかねない考察は控え、ここは篠田編集長の2記事をなぞるに留めておきましょう。

珍しくはないが相当覚悟が要る

一般論として、死刑囚にはなぜか一種のカリスマが備わり一定のファンがつきます。「秋葉原」の加藤智大は自らの非モテに言及していましたが、彼でさえ死刑囚となってからは女性のファンがいたといわれています。数としては少数派であるものの、差し入れなどの形で死刑囚を支えようとする人は一定数存在します。植松にも10人ほどの差し入れ勢がおり、翼さんもその中の一人でした。

そして、死刑囚との獄中結婚や養子縁組もまた決して珍しい話ではありません。「池田小学校」の宅間守が獄中結婚した話は有名ですし、「光市」の死刑囚も養子縁組によって名字を変えています。表向きの目的は接見の機会を得るためです。死刑が確定すると、接見できるのがほぼ家族と弁護士だけとなりますので、他の人間が接見するには実際に家族となる以外ありません。

ただ、死刑囚と家族になる手続きは非常に困難な道のりです。翼さんも婚姻届提出から植松と初めて会うまで半年かかりました。常人が軽い気持ちでやろうとすれば、ほぼ間違いなく根負けするでしょうし、そもそも本来の家族からも猛反対されます。勿論、配偶者や養親となれる人数は限られています。なお、死刑囚の養子となった事例は寡聞にして存じません。

厳しい道のりを経て接見できるようになった後、待っているのは「パブリックエネミー」としての扱いです。理由はどうあれ死刑囚とくっつくからには、「凶悪犯に迎合して甘やかす逆張りクソ野郎」と謗られるのは避けられません。特に、被害者遺族や関係者からの心証は最悪です。宅間と獄中結婚し遺体も引き取ったお相手も、遺族からはほぼ総スカンに遭いました。当然と言えば当然ですね。

決して軽くない

翼さんの来歴はかなり重いです。まず15歳の時に知的障害者から性暴力を受けた上に証拠不十分で不起訴になる出来事がありました。また、そのトラウマで解離性健忘となり自身も障害者となります。

「誤解なきようにしなければいけないのは、そういう目にあった相手が障害者だったとしても、障害者ゆえにそうなったと考えると深刻な差別になってしまう。障害者であれ健常者であれ、良い人間もいるし、悪い人間もいる。相手がどういう属性であろうと、犯罪は許されないということだ」(篠田編集長の記事から引用)

初めて翼さんから連絡を受けた時、篠田編集長は植松に近づく動機と覚悟から聞きました。植松に便乗あるいは迎合して各所へ迷惑をかける障害者アンチは実際にそこかしこで出没しており、そういう理由で近づくなら協力できないこと。本気で面会したければ家族になるくらいでないと駄目で、獄中結婚するほどの覚悟がなければ実現しないこと。これらを説明しました。翼さんの意志は固く、本来の家族からは猛反対にあった末、家を出たそうです。

翼さんは障害者施設でアルバイトするなどして自分なりに障害者を理解しようと努めました。決定的だったのが昨年知り合った友人のことで、前科があり服役していたことと、今は一人の女性を愛し仲間を大事にしていることを知り、人間の多面性を尊重し先入観を捨てようとしたそうです。そして、植松と実際に会ってその人となりを知りたいと強く思うようになりました。

「だから彼女が植松死刑囚にアプローチしていくプロセス、その内面はとても屈折しているし、一歩間違えると障害者差別に陥ってしまう側面も持っている。性加害の相手がたまたま知的障害者だったかもしれないが、それを知的障害者一般に置き換えてしまうと明確な差別になる」(篠田編集長の記事から引用)

パブリックエネミー

「彼女の話を聞いて思ったのは、果たして実際にどうなるかわからないが、これを機に彼女がトラウマ克服に少しでも近づけることを祈るしかないということだ。(中略)今回彼女が選んだ道が良い方向につながっていくことを祈るしかない。今回のことで心ない中傷を受けたりすることのないように、見守らなければならないと思う」(篠田編集長の記事から引用)

宅間のお相手に比べると、翼さんには明確な特徴があります。まずは名字。実は宅間は、負担をかけるまいとお相手の名字に変えてからこの世を去っています。一方、翼さんは最初から植松の姓に変えるつもりでした。また、宅間のお相手がメディア取材を避けていたのに対し、翼さんはAbemaTVに顔出し出演しています。

今でも障害者ヘイトの象徴とされる植松に「結婚」という一人前の証を授けるだけでもかなりの反感を買うでしょう。篠田編集長は記事の中で何度も、翼さんへのバッシングについて懸念されており、実際に様々な罵倒がSNS上で転がっています。彼には悪いですが、植松を一人前の男にしたからにはパブリックエネミーとして扱われるのも仕方のないことだと思います。

植松が起こした事件について篠田編集長から聞かれた翼さんはこう答えました。
「相模原障害者施設殺傷事件は、このまま終わらせてはいけないです。同じことを繰り返すということではなく、このまま彼に執行があり、その時はまた世の中はニュースなどでその事件について思い出して考える人もいるでしょう。ですが、また忘れられていく。過去としてしまわれていく。それはどうにかしてでも阻止したいです。痛いほどその方法を考えています」

家族と縁を切り初の面会まで耐え抜いた覚悟があるならば、パブリックエネミーのような扱いも乗り越えてくれるでしょう。しかし、邪な何者かに祭り上げられたり、知的障害者の原罪を追及したり等、怪しい動きを見せるようならば本当のパブリックエネミーとされても文句は言えません。障害者ヘイトの象徴とくっつくというのは、そういうことです。

参考サイト

衝撃!やまゆり園障害者殺傷事件の植松聖死刑囚が獄中結婚!しかも何と相手は障害を持つ女性
https://news.yahoo.co.jp

やまゆり園障害者殺傷事件・植松聖死刑囚と獄中結婚した女性が初めて面会!そこで交わされた会話とは…
https://news.yahoo.co.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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