就労継続支援B型えんじゅ〜地域の人たちが世代を超えて気軽に交流できる食堂

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JR鴫野駅から歩いて10分。都心にいることを忘れるほどに、静かで懐かしい住宅街。

そこにひっそりと存在する食堂・喫茶が、合同会社 Maki Lab が運営する「就労継続支援B型 えんじゅ」です。えんじゅは、地域に住む子どもから高齢者など、色々な方が気軽に訪れ、栄養満点の食事ができる憩いの場です。ここでは、障害のある方が自分らしく働きながら、地域で人と交流できる場を作ります。今回は、えんじゅの皆さんにお話を伺いました。

①えんじゅの取り組み

えんじゅ、と筆字で描かれたのれんをくぐって入った店内は、明るくも落ち着ける雰囲気に満ちていました。「いらっしゃいませ」。店員を務める利用者さんの温かな笑顔にも迎えられると、お家に寄ったような不思議な安心感が生まれてきます。出入り口横の商品棚には、手作りのクッキーやマドレーヌの焼き菓子、レトロの布で手作りされた可愛らしい小物雑貨。えんじゅの利用者様の他、地域の方が手がけた小物も販売しているのだそうです。クリーム色の優しい木のテーブルに並べられたお品書き。そこには、お客様のニーズを考えた豊富なメニューと手頃な金額、管理用栄養士が計算したカロリーまで記されています。えんじゅでは、医療介護の専門家に気軽に相談できる健康講座も定期的に催すなど、地域住民への健康サポートに力を入れています。

  • 店内ではえんじゅで制作した手芸品を販売

えんじゅを訪れた際、期間限定メニューのグラタン定食、オムライス定食、サバの味噌煮定食をいただきました。熱々でなめらかなグラタンには、ブロッコリー、えび、マカロニなどが豊富に入っていました。しかも、具材は全てやわらかく、歯にとても優しかったです。おひさま色のオムライスは、ウラ面がふわとろで柔らかいです。程よい塩加減のチキンライスには玉ねぎの甘みを感じられました。サバの味噌煮は、中身がなめらかで、味噌の絶妙な塩味と甘味がしみこんでいました。

  • 定食は350円からとリーズナブル

②えんじゅで働く利用者さん

えんじゅでは、利用者さん一人ひとりの特性に合わせて、好きな仕事とその練習を気軽に行えるようにします。食堂では、利用者さんとまとめリーダー(利用者さん)が中心となって、調理補助から接客、会計、食器、掃除を行います。槇さんと支援者は、利用者さんが主体的にいきいきと働ける雰囲気を大切にします。内職を行う利用者さんは、「しぎの工房」で手作り小物雑貨を作ります。えんじゅの食事の材料やレシピは、管理栄養士さん3名が考え、地域の食育活動にも一役買っています。えんじゅのメニューは、利用者さんにも一緒に考えてもらうことで、自分も地域を支えているという意識とやりがいを持てるようにします。調理補助をする利用者さんが分かりやすいように、写真と調理手順を丁寧に記載したレシピマニュアルもあります。

障害者が高齢者を支える時代へ

えんじゅの担当者である槇敦子さんは、合同会社 Maki Lab の代表として、ケアマネージャー(介護支援専門員・相談支援専門員)と管理栄養士の資格を持ちます。槇さんがえんじゅを立ち上げた理由は、近年少子高齢化がますます進んでいく中で生じている「地域での孤立」の問題を懸念したからです。年金受給額が少なく一食千円すら厳しい生活を送る、ひとり暮らしの高齢者が増えていることを、槇さんは肌で感じ取っています。そのためえんじゅでは、全体的に300円から500円のやさしい値段と、栄養バランスを考えたメニューを設定することで、生活支援と地域の食育を支援する意図があります。高齢者から若いサラリーマンまで、地域に住むどの年齢層の方も気軽に来れる場所になるように。

えんじゅに行けば、同じ地域に住む色々な方々と気軽に交流できる。地域にそういった居場所をつくることで、高齢者から子ども、障害者を含む色々な方の孤立防止にも繋げようとしています。槇さんがえんじゅの利用者さん、地域住民とともに目指していく姿は、「公ばかりに頼らない、インフォーマルな社会資源として事業を地域に拡大していきたい。これからは、障害者が高齢者を支える新たな時代を目指した地域包括ケアシステムを目指します」、というものです。地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が高齢化する2025年を考え、高齢者が地域で自分らしく生活していくための一体的な支援(医療・介護・住まい・生活支援・介護予防)を包括して行う体制を指します。しかし、地域包括支援の担い手不足がし課題の一つです。そんな中、えんじゅで働きながら地域を支える障害者は、今後大きな役割を担うことが期待できます。

  • 合同会社 Maki Lab代表の槇敦子さん

地域文化の復活と普遍化をめざす

えんじゅから歩いていく住宅街の道は、都会の喧騒から守られた懐かしさに満ちた弁天通り。大阪城にも近いこの街では昔、たぬきが祀(まつ)られていたという言い伝えがあります。近年ではグローバリゼーションや過疎化の影響もあり、日本文化が薄れつつある地域が増えている、と考えられます。しかし、槇さん自身は、むしろグローバリゼーションが今後進むことで、日本の文化性は再び高まるのではないか、と予想しています。日本文化にふれる外国人観光客も増えてきていることをきっかけに、日本文化を再確認する動きが始まるのではないか、ということです。このような動きを、槇さんは「文化回帰」と呼びました。えんじゅを通じて、着物などの日本文化ならぬ独自の地域文化を復活させたい、というのが槇さん達の目標です。

えんじゅから歩いて近くにある「しぎの工房」では、利用者さんを含む地域の方々が手作りの小物雑貨を手がけます。「着物」を中心とした色々な布の端切れを加工し、デザインも自分で好きに考えて作ります。しぎの工房を訪れた際、スタッフさんが着ていた羽織も、薄くて軽い、けれど肌触りが良く温かい作りになっていました(しかも値段はなんと500円でお手頃です)。さらにデザインも、シンプルな黒字に黒い花模様、袖には小さな白い菊がワンポイントで入ったおしゃれな作りになっていました。羽織以外にも、鮮やかな和風模様の布で作られたポーチや、ブックカバー、くるみぼたんと花付きのスリッパ、扇子入れも見せていただきました。では、上質で素敵な着物の布をどこで手に入れ、しかもやさしい値段で販売できるのでしょうか。それは、しぎの工房の近くには着物屋さんがあり、買い取った日本製の良い着物の布などを手頃な値段で買うことができます。

余った布などを使っておしゃれな小物雑貨を作ることを、槇さんたちは、「アップサイクル」と呼んでいます。アップサイクルとは、単なる素材の再利用(リサイクル)に留まらず、元の状態よりも「さらに価値あるものへ作り換える」ことを指します。アップサイクルの場合、商品の一つ一つは色から模様までまったく同じものはありません。そのため、手に取っていただけた方にとっては、世界にひとつだけの特別なものとなります。

着物といえば、高い嗜好品というイメージが強いと思います。しかし、槇さんたちは、手頃な値段で上質かつおしゃれな和の小物雑貨や着物を販売します。それによって、和の日本文化が一般にも広がっていき、どんな人々にも気軽に触れられるものを作っていくことを目指しています。

街全体を安心できる場所にしていきたい

地域に住む色々な方々にとっては、「えんじゅ食堂に行けば誰かと気軽に話せる」、と安心できる居場所があります。たぬきを祀っていた言い伝えのある、懐かしい静けさに包まれる「弁天通」を歩きます。近くの着物屋さんをのぞいてみると、おしゃれな世界にひとつだけの「和の文化」を手に取れます。

高齢者から子ども、障害者を含む「色々な人々」が笑顔で繋がっていきます。槇さんたちは、そういう街になるように願っています。

合同会社 Maki Lab
就労継続支援B型 えんじゅ
https://www.maki-lab.net/
大阪市城東区鴫野西1丁目12番17号

障害者ドットコムニュース編集部

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