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「昔のものを現代の価値観で断罪するのは卑怯ではないか」という問いはいつも何処かで湧き上がっています。習慣や文化、そして言葉なんかは、当時と現在における感覚の断絶を象徴しているかのようです。そして、断絶がそのまま分断へ至ることも少なくありません。
ある日こんな話題で蒸け上がっている人がいました。要約すると「祖母の若い頃は『めくら』も『つんぼ』も当たり前の言葉だった。それを今になって差別語だ何だと騒ぎ立てるのは老人虐待だ」とのことでした。昔の感覚に縋るより、生きている今の価値観やコンプライアンスを感じながら変容を続けていく(俗に言う価値観のアップデート)ほうが建設的なのは言うまでもないことです。
ただ発言者の言いたいことも分からないでもないです。実際、上の年代では話を聞かないだけで「つんぼ!」と言われることもあったようですし、単語の“仕分け”が為されたのもだいたい戦後すぐがターニングポイントです。今まで当たり前に使っていた言葉が突然“差別用語”に貶められ、それを知らなければ異常者として扱われるとなれば、野蛮な言葉狩りが憎くはなるでしょう。
ポリコレのコレは、コレクトネス(正しさ)のコレ。ただ、昔は正しかったものが今では間違いになっているのと同様に、今は正しいものが将来正しくなくなる可能性があると、意識できている人はいるでしょうか。寧ろ、今さえ楽しければいいという人々には考えもつかない懸念でしょうけれども。
例外として、当時の価値観でもアウトだったものや、生まれの時点で悪意があったものは擁護に値しません。チー牛だのレコード万引きだの、初めから盛大に間違っていたものが正しくなることだけはあり得ないのです。もしそれが正しくなる場があるとしたら、そのコミュニティ自体が低俗な価値観と異常な倫理観にまみれた、世俗と著しく異なる空間であるに過ぎません。
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