障害年金について 中編~障害年金の現状と問題点
暮らし前回の記事で「障害年金とはなんぞや?」という疑問が少しは解消されたかと思います。
要点をざっと振り返ると
・「20歳から受給できる年金である」こと。
・「受給要件は大きく3つある」こと。
・「障害の種別問わず申請できる」こと。の以上3点でした。
公的制度はその時代、為政者によって様相を変えていきます。もちろん年金制度も例外ではありません。消費税10%増税も記憶に新しいかと思います。本記事では、障害年金の現状と問題点について解説していきます。
障害年金の現状
現在の障害年金はメディア媒体が充実したこともあり不透明だった制度が明朗化され、小難しいイメージは緩和されている印象です。申請に関しても、社会保険労務士や弁護士が受給に向けて、全面アシストする旨の広告やHPを充実させ、全国的に動き出したこともハードルを下げた要因です。
一方で
・福祉財源の大幅削減がニュースになっている。
・「老齢年金」の受給開始年齢もどんどん引き上げられている。
・年金事務所等の窓口対応も今一歩配慮が足りていない話もちらほら。
現実は果たしてハードルは下がったといえるのでしょうか。
障害年金の問題点
先の「障害年金の現状」から、印象としては以前よりとりつきやすく苦手意識が緩和されたイメージ。しかし、現実問題として福祉財源の大幅削減により申請のハードルは以前より上がった様子です。ここで読み取れる問題は「窓口の水際作戦」や「受給審査の東京一元化」の2点です。
「水際作戦」
水際作戦とは一般的に 現象の発生直前、もしくは発生直後に総力を以て対処し当該現象を消滅させる作戦のことで、この場合は窓口に年金受給の相談に来た相談者を申請書類を出させる前に受給をあきらめてもらうように誘導する行為を言います。大きな原因のひとつが、年々増加し続けている障害者が既存の福祉財源の保障を上回りつつあるということです。障害者の推移をグラフで見ることができる内閣府の報告書「障害者白書※1」によると、平成8年から障害者の数は右肩上がりにあります。とりわけ平成23年から急上昇しています。
「受給審査の東京一元化」
昔は受給決定の審査には地域格差があり、全国統一の基準がありませんでした。日本年金機構が公表したデータによれば,障害基礎年金を申請したにもかかわらず不支給の裁定を受けた割合は、もっとも低い栃木県で4.0%であったのに対して、もっとも高い大分県では24.4%でありました(2012年度から2014年度までの3年間の平均値)。
現在は是正され、格差は生まれなくなりましたが、審査が東京に一本化した弊害も見過ごせません。それまでは受給決定の審査に一ヶ月も時間を有しなかったのですが、新体制に移行してからは、全国から申請が止むことなく届いてるため早くて三ヶ月、長くて九ヶ月強の審査時間がかかるようになりました。申請は本人が直接行うこともできますが、書類に不備があるとすぐさま書類が差し戻されます。ただでさえ審査には時間がかかる上に再度書類をそろえ、再提出するのは時間以上に本人の負担が大きく、病状の悪化も考えられます。
このような事態に着目したのが、各社労士事務所や弁護士事務所です。今までは審査基準が地域によって安定しませんでしたが、申請者の負担を鑑み、受給申請を促すことになったのです。
※1[障害者白書とは、障害者基本法(昭和45年法律第84号)第13条に基づき、平成6年から政府が毎年国会に提出する「障害者のために講じた施策の概況に関する報告書」です。]
次の記事では障害年金を実際に受給した筆者の体験に触れながら、実情や新しく導入された制度を紹介していきます。
▶次の記事:障害年金について 後編~障害年金受給者から見る実情と体験談
参考文献
【四国新聞(2015年2015/05/11朝刊)-共同通信社連載企画「障害年金を問う」-】
【厚生労働省-「障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査結果」を公表します -】
https://www.mhlw.go.jp/index.html
【内閣府-障害者白書<平成25年度と平成26年度版の障害者白書(概要)、平成28年度版の障害者白書(全体版)>-】
https://www.cao.go.jp/index.html
その他の障害・病気