植松被告、進む第2回以降の公判~犯行の経緯を詳しく辿る
暮らし その他の障害・病気去る1月10日(金)に相模原障害者殺傷事件の第2回公判が行われました。植松聖被告は2日前の初公判にて暴れ出し途中退廷となっており、第2回公判ではミトンを付けられたうえ初めに厳重注意を受け、両腕を刑務官にホールドされる有様でした。
傍聴希望者の倍率は初公判に比べ大きく落ち込みはしたものの、それでも500人いたとされています。そう述べている月刊「創」編集長の篠田博之さんが詳細に第2回公判をまとめていました。ただ、第2回からの公判については「19のいのち」ですら更新しておらず、篠田さん以外に目立った詳細なコラムはほとんどありません。
篠田さんは初公判での植松被告の行動を受け、急遽接見へ赴きました。そこで被告から語られたのは、初公判で小指を噛み切ろうとしていたこととその理由でした。
重度障害者を探し回っていた
第2回公判は検察による供述調書の朗読が主となり、それだけで何時間もかかっていました。かねてより「呼びかけて返事のない入所者を刺した」と言われていたのですが、その詳細な経緯がより明らかとなった形です。
供述調書は事件直後の段階で整理されたため極めてリアリティに富んでおり、傍聴していた篠田さんは時間も相まって疲労困憊し尾野剛志前家族会長は「初耳で聞いていて涙が出てきた」と語っています。それほどの内容だったのです。
植松被告は施設に押し入るとすぐ、職員を脅して携帯電話を差し出させ両親指と手首を結束バンドで拘束しました。ここまでは既に明かされておりますが、供述調書では拘束した職員を連れ回し「こいつは喋れるのか、喋れないのか」と逐一訊いていたことが新たに明らかとなっています。
施設内でもより重度の障害者を狙い探し回っていた植松被告は、職員を証人に仕立てようとしたのでしょう。うっかり「喋れません」と答えようものなら入所者は即座に寝首をかかれます。1人が命を落としたので職員は「喋れます!」と押し通そうとしたのですが、植松被告もそれを察して自分で確かめながら刺していきました。
「こういう人間は要らないんだ」と職員に説きながら入所者を襲ってまわり、用が済んだら職員を手すりに縛り付けて別の棟へ移りました。そして職員を拘束して……と繰り返していったのです。最後の「つばさホーム」では職員が植松被告の異様な雰囲気に気付き、追われながらも空き部屋に逃げ込んで締め切り通報しました。植松被告も厚木への襲撃を諦め、つばさホームの入所者を手当たり次第に襲って施設を出、例の「beautiful japan」をツイートしてから出頭します。
犯行態様と量刑
拘束され連れ回された挙句に目の前で入所者を殺害された職員の絶望感は筆舌に尽くしがたいものです。しかも「喋れません」と口を滑らせた職員に至っては今も自責の念に駆られるほど甚大な精神的打撃を受けています。外出する気力すら湧かないであろう中で出廷し、植松被告の犯行を詳細に語ったことは検察側にとって激賞に値する行動だと思います。
量刑の判断は「犯行態様」「犯行の結果」「動機や計画性」といった要素を中心になされるのですが、このうち「犯行態様」の極めて悪いことが明らかにされた形です。凶器を持っていたり生命に関わる急所を執拗に狙ったりする等で「犯行態様」が悪いとして量刑に響いてきます。
しかし、凶悪な動機や手口でありながら無期判決の下った裁判員裁判が昨年末立て続けにありました。それもあってか弁護側は「大麻による責任能力の欠如があるので無罪」と強気な態度です。検察側も気が抜けません。
小指を噛みちぎろうとした
初公判で植松被告が暴れたと聞いた篠田さんは、急いで接見に向かいました。接見の場で植松被告が語ったのは、あの時小指を噛み切ろうとしていたということでした。
「言葉だけでの謝罪では不満だろう」と思って小指を噛み、刑務官に抑えられたのです。これに篠田さんは「法廷でそのような自傷行為は通るわけがない」と返すのですが、植松被告は「噛み切れると思っていた。第2関節が硬かったからうまくいかなかった」と的外れな分析をしていました。
ところが翌朝、植松被告は拘置所で気付かれないうちに小指の第1関節から先を噛みちぎってしまいました。縫合も出来ない状態にまでなっていたため、小指の先は欠けたままになっています。角田美代子の最期を彷彿とさせる話ですが、どうして植松被告は「指を詰める」ことにこだわったのでしょうか。
接見した篠田さんへ語ったところによれば、謝罪の意思表示を見せたかったためだそうです。しかし現実は「暴れ出して退廷」となり、篠田さんは元々「意図が世間に伝わっていないので、意思の伝え方はよく考えなおすべきだ」と注意するつもりでした。ただ、植松被告の言う「謝罪」は篠田さんが会い始めた2年半前に比べて変容していたのです。
以前は「反省すべきは安楽死でなかったことだけ」「家族を巻き込んだことだけは謝る」と、犯罪そのものを悔いるようなことがなかったのですが、この時初めて「亡くなった方々にも申し訳ない」と手にかけた被害者への謝意を口にしました。
ただ自分の思想そのものは捨てていないようで、弁護側の「心神喪失による責任能力の欠如」で争う姿勢に矛盾と不快感を抱いていました。医療大麻を支持し障害者排除を企てた植松被告にとって、大麻精神病として扱われることは甘受しがたいのでしょう。
第3回、第4回は被害者の人となりを語る
15日(水)と16日(木)の公判では、19の遺族調書が読み上げられることになりました。愛する家族との思い出や崩壊する日常、被告と差別への憎しみが19人それぞれの遺族から語られていったのです。
犠牲者一人ひとりについて生前を偲びながら紹介していくのは、加藤智大死刑囚の第一審でも行われていました。あの裁判では、1人1公判で遺族が証言台に立って意見を述べたり傍聴席からも見える大きなモニターで被害者の生い立ちが映されたりしている違いはありますが、この公判もあってか加藤は第二審から出廷しなくなったそうです。
ただ、最大の違いとしてあちらは実名という点が挙げられます。人が殺されたという重みが裁判官にも傍聴席にも連日圧し掛かってくる裁判だったと言えるでしょう。しかしこちらは匿名のままで、裁判官に重みが伝わるのかどうかは不安です。名前だけ明かされた「美帆さん」も間に合わず匿名で進められました。
とはいえ争点となっているのはあくまでも「責任能力」です。弁護側の反撃次第では一気に覆されるかもしれませんので、検察側は今後の公判も一切の油断なく望んでもらいたいですね。植松被告と弁護側の不和が埋まるかどうかも重要ではないでしょうか。
参考サイト
相模原障害者殺傷事件裁判の法廷で明かされた植松聖被告の凄惨犯行現場(篠田博之) - 個人 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp
翌朝小指は噛みちぎった――相模原事件・植松聖被告が面会室で語った驚くべき話(篠田博之) - 個人- Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp
量刑について|刑事事件の基礎知識|ヴィクトワール法律事務所
http://vict-keiji.com
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