就労継続支援事業所と仕事の発注~実は国や自治体に課された努力義務

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就労継続支援B型事業所では軽作業(単純作業)を受注して、その報酬が利用者への工賃になっていく仕組みになっています。A型事業所や一部移行支援・多機能事業所でも単純作業を受注しているところはありますが、ここではB型事業所のみを例としていきたいと思います。

B型事業所(以下、作業所)の工賃が安いのは、その元となる作業の報酬単価が安いからです。しかし、作業所の商品を買ったり仕事を発注したりする人が少ないことが無関係とも言えないでしょう。作業所によっては商品が売れると工賃が上がる所や仕事の受注に積極的な所もあります。

とはいえ近所に作業所があるのかすら知られていないことも多いでしょう。作業所へ仕事を発注したいとき役立つのは、自治体のホームページになります。必要な情報はほとんどそこに書いてあるのです。

自治体HPの「福祉」ページから繋がる

自治体ごとに差異はありますが、大抵は「福祉」の単語があるカテゴリから「障害者」>「障害者の事業所」という風に繋がっていけるようになっています。或いはサイト内検索で「障害者 事業所」と検索して「障害者の事業所へ仕事を発注するには」といった文言を探せば、購買や発注の出来る作業所リストが出てくる筈です。自治体によっては「障害者福祉施設」「障害者就労施設」など表記にブレがありますが、自治体HPに必要な情報が載っていることは確かです。

例えば東京都北区のホームページでは、「健康・医療・福祉」>「障害のある方」>「障害者の働く事業所で~」となっています。更に物品・清掃・簡易作業に分けて対応した作業所の名前を載せており、興味があれば自力で発注の問い合わせが出来ます。

自分たちだけで問い合わせようにも勝手が分からない場合は、HP下部に載っている共同受注窓口に仲介を依頼することも出来ます。自治体直属でない社会福祉法人などが請け負っており、注文者と作業所の間に入って業務の斡旋(あっせん)などをサポートしてくれます。

購買に関しても気に入った作業所と取引するのが望ましいです。多くの作業所が集まって即売会をすることもあるのですが、大々的な宣伝はせず不定期開催のようにも見えますので、普通に暮らしていて情報が入ることはないでしょう。作業所の即売会は作業所同士が内輪で買い合う同業者イベントの趣が強いです。それでも売り上げは通常より高く、工賃も普段と比べて増えるのですが。

仕事発注の例

作業所へはどのような仕事を発注できるのかを幾つか例示します。

まずは「弁当の配食」です。弁当を作って配達する作業所から昼食用の弁当を買えば、それだけで工賃アップに貢献できます。食物アレルギーや好き嫌いがなければ積極的に利用してみてください。一人よりも集団で注文したほうがいいのは言うまでもありませんが、「あそこの作業所以外で昼飯を買うな!」などの無理強いだけはやめましょう。

次にお勧めするのは「清掃」です。自治体が公園の清掃や除草を発注することもありますが、ビルオーナー等も清掃業務のある作業所に仕事を発注することは可能なはずです。どの辺りをどの時間に清掃してもらうかは少々頭を使うかもしれませんが、単純作業よりは明らかに高報酬なので契約さえ成立すればかなり喜んでもらえます。

あとはやはり内職や軽作業とも呼ばれる単純作業でしょうか。作業所と言えば単純作業と言われている程なので、ノルマが無ければ外注先として十分選択肢に入ると思います。ノルマのありそうな作業は高報酬ならばA型事業所にかけ合ってみるといいかもしれません。

障害者優先調達推進法とは

作業所へ業務を発注するための情報が自治体HPに揃っているのは、2013年に施行された「障害者優先調達推進法」が関係しています。正式には「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」といい、国や自治体が率先して作業所の商品を買ったり業務を発注したりする努力義務を課しています。この努力義務は国・自治体・独立行政法人が対象となっており、国民全員に課されている訳ではなく具体的な罰則もありません。

趣旨は「障害者の自立を促進する」ことで、積極的な発注を通じて作業所の工賃向上に寄与しようというものです。障害者就労施設等へどれほど業務を発注したかの実績は毎年公表するよう決められており、定期的にデータ化して残されてもいます。

ただ、「障害者就労施設等」が作業所とは限りません。特例子会社や在宅就業障害者は勿論、一般企業でも基準(障害者を5人以上かつ全従業員の2割以上雇用し、そのうち重度障害者が3割以上いる)さえ満たせば対象として含まれます。つまり作業所から見て仕事を受注するライバルは多いのです。

とはいえ法律に定められている以上「発注してもらいたい」という申し出を無下にすることは無い筈です。工賃を少しでも上げようと業務を探す作業所には真摯に応えてくれると思います。努力義務を課されているのは国や自治体ですが、作業所側に仕事を取る意思がなければ元も子もないでしょう。

入所者の都合も考えるとノルマのない低報酬の単純作業を受注することになるので、工賃は易々と上がらないでしょう。そもそも就労継続支援とは本来一般就労のための通過点に過ぎないので、工賃に拘るよりも一般就労を目指す入所者の就活を支えるのが一番の社会貢献になるのではないでしょうか。

参考サイト

障害者の働く事業所でお買い物や軽作業の依頼をしませんか|東京都北区
https://www.city.kita.tokyo.jp

障害者就労施設とは|かけはしネット
https://www.kakehashi-net.jp

障害者優先調達推進法について
https://www.wam.go.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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