フランス社会が抱える精神の病気
その他の障害・病気 暮らし出典:Photo by 🇸🇮 Janko Ferlič on Unsplash
皆さんはフランスにどんなイメージをお持ちでしょうか?ワインやフォアグラなどの美食でしょうか?それとも、ルーヴル美術館やオペラ座などの芸術でしょうか?それとも高級ブランドやパリ・コレクションなどのファッションでしょうか?フランス文化は昔から世界中に影響を与え、現在では世界中から観光客が訪れる観光大国でもあります。
しかし、フランスは精神病の多い国でもあります。国民の4人に1人はなんらかの心や精神の病気を抱えてると報告されています。そしてそのうちの75%が25歳の若年層です。なぜ日本人とは正反対の性格を持つされているフランス人がうつ病などの精神病が多いのでしょうか?
人間には日光が必要
フランスの天候は南仏を除けば、明確に四季はあるものの冬が長く、春も秋も肌寒い日が続きます。またヨーロッパ全体で、冬は太陽が昇る時間が非常に短いので、朝起きて出勤して帰宅する間に一度も太陽を見ない日も珍しくありません。
日光を浴びなければ、体のバランスが崩れやすくなり、気分も落ち込みイライラも増え精神も不安定になります。そのため、日ごろからビタミンのサプリメントを服用してる人も多く、サプリメント依存症になってる人も珍しくありません。
根強く残る階級社会
フランスは個人主義で、学校でも日本のように平均的な意見を言う生徒は評価されることがなく、集団行動を強制されることもまずありません。一見、他人に興味がなく干渉しないように見えますが、実はすごく他人を意識し、嫉妬深い人たちでもあります。
これはフランスの根強い階級社会が影響しています。フランスは平等という名の元で、国民が革命を起こし、王を引きずり落として、国民のための国家を設立しました。しかし実際は国民がエリートと非エリートに分かれ、階級社会を再度構築してしまったのです。
このため、昔から非エリートは、良い教育を受け良い給料を貰い良い職場環境のエリート層を無条件に毛嫌いするようになったのです。非エリートはチャンスも少なく、人生に希望を見出すことができず絶望感で精神を病む人も少なくありません。
しかしエリートにもストレスはあります。フランスには大学とは別にエリート育成機関があり、一般的に高校卒業認定兼大学入学試験「バカロレア」に合格するれば、どの大学にも入学が許されますが、エリート育成機関だけは例外です。
まずその育成機関の予備校に2年間通う必要があります。この予備校では頻繁に試験を行い、水準に達しない学生を次々と落とし、2年後には、学生の数が入学当初の半分以下になり、そこから各エリート育成機関へ受験して、合格すれば晴れて入学が認められます。
エリート層は子供のころからエリート育成機関に入学するように両親から言われます。またフランスは日本と違い塾などもないので、子供が自ら勉強方法を見つけ出さなければなりません。そしてフランスは小学校の頃から成績が悪いと留年します。そのため子供たちは常に重圧に耐えなければなりません。
留年や受験失敗はたちまち子供たちの精神を崩壊させる危険があるのです。
現実とのギャップ
フランスは歴史的にはカトリックの国ですが、現在では日本と同様で宗教の信仰は自由です。しかしカトリックの文化や風習が現在でも根強く残っています。そのため、イスラム教やユダヤ教などの異教徒、LGBTなどキリスト教の思想にそぐわない人々そして人種に対して目に見えない差別が蔓延しています。例えば、非白人系の名前を持つ人は最低でも500通履歴書を企業に送らないと1件も面接が取れません。イスラム系の名前ならさらに倍近くの履歴書を送らなければなりません。しかし表面ではポリティカルコネクトが重視され、宗教や思想、人種が平等であることが謳われています。
この社会の矛盾が人々の絶望感に陥る原因の1つでもあります。
国境を越えた競争社会
労働環境は日本と違い、仕事終わりに飲みニケーションという文化もなく、仕事とプライベートを完璧に分けてる人が多いです。また人間関係も基本的には上司であっても立場は平等なので、上司を立てる必要もなければ、ゴマをすったり、話し方を変えるようなこともしません。
しかし、フランスでも終身雇用は死語になり、多くのフランス人は毎年労働契約を結ぶ契約社員です。そもそも日本のような正社員と非正社員のような区別もありません。 そのため、労働者は結果が求められ、常にスキルアップをしないと解雇される不安と隣り合わせで働くことになります。
また若年層の就職はさらに過酷です。新卒制度は日本独自の制度なので海外には存在しません。そのため学校を卒業したばかり学生は、中途採用の経験者から仕事を勝ち取らないといけません。さらに現在は、EUにより労働者は自由に国境を超えれるため、例えフランスで就職するにも他の欧州諸国の人々との競争は避けては通れなくなりました。 企業は新人を育てるという発想はなく、全社員が即戦力であることを望むます。また仕事と関係する職歴や学歴がないとフランスでは評価しない傾向が高いので、経験が少ない若者は常に将来不安で苦しむことになります。
高度な医療制度が依存者を生み出す
フランスは日本と同様に国民健康保険制度があり、国民は安価で医療を受け、薬を購入できます。しかし、処方された分しか薬を購入できない日本と違い、フランスは副作用が少ないと判断された薬なら処方箋さえあれば、数十錠一箱を簡単に購入できてしまいます。またジェネリック医薬品も多く、安く購入できます。精神安定剤なども安く、沢山買えてしまう環境なので、不安から日常的に自己判断で大量に服用する人もいます。
まとめ
日本もフランスも社会のストレスのなかで人々は生活していますが、フランスは日本よりもさらに多民族、多文化社会による共存により、日本とは異なる社会の闇を持っています。またこの闇は歴史や宗教、習慣など複雑に絡み合っており、解決策が見つかっていません。解決するには何世代にも渡り取り組まなければならない課題なのかもしれません。
参考文献
【なぜにフランスでは精神病が多いのか ~4人に1人が精神病のフランス人、陰と陽・チェットかシナトラか〜 世川祐多のふらんす見聞録】
http://yuta-segawa-kenbunroku.com
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