アンジャッシュ渡部のスキャンダルと性嗜好障害・強迫的性行動症
その他の障害・病気 依存症渡部建さんの不倫に関して多方面から罵詈雑言が飛んでいますね。不倫スキャンダルの報道は忘れた頃にやってくる恒常イベントのようなものですが、今回は木村花さんがネットの誹謗中傷を苦に自殺した直後とあって「木村花さんの死から何を学んだんだ!」という声も聞かれます。ちなみに、不倫叩きには「正義中毒」が絡んでいるそうです。
浮気・不倫についてワイドショーなどでは「渡部は『性嗜好障害』ではないか」とする声も上がっています。実際にはICD-10によって名付けられたムツカシイ診断名ではなく「性依存症」と言っているようですが、この無責任な論評に対し筑波大学教授の原田隆之さんが待ったをかけるコラムをYahooニュースに寄せています。
強迫的性行動症とは
素人は勿論、仮にも専門家として一応の肩書きを持つ「専門家」までこぞって渡部さんを「性依存症」と決めつける論調に、原田教授は強い嫌悪感を示しています。確かに、リアルで会ってない人間にあれこれ診断名を付けるのはナンセンスとしか言いようがありません。
一方、やたら「性依存症」を出す人々を見て、実は「強迫的性行動症」のことを言いたいのではないかとも推測されています。強迫的性行動症(CSBD:Compulsive Sexual Behavior Disorder)とは、ここ数年以内にWHOが新しく精神疾患と認めたもので、依存症とは認められていないながらも反復的な強い欲求が特徴として挙げられています。
強迫的性行動症は、ネット上でセクハラを告発する「Metoo運動」が過熱する中で生まれた概念です。主な症状や基準としては、「反復的な強い欲求を制御しきれない」「性行動が生活の中心となり、減らそうとしても失敗する」「不利益を被ろうと満足感が無かろうと性行動を続ける」などを半年以上続けていることが挙げられていまう。依存症のように思えますが、現時点では研究が不十分で依存症とは認定されていません。
強迫的性行動症の病名を出した上で原田教授は、「実際の渡部さんに該当するかは(診ない限り)分からない。そのため安易なレッテル貼りは避けるべき」としています。ただ病名や症状についての知識を得ること自体は理解に繋がる大事なプロセスであるとも説いています。
性嗜好障害と不倫
さて、性依存症にはICD-10により付けられた「性嗜好障害」という正式名称があります。この概念が生まれたきっかけは20年以上前にビル・クリントン元大統領が不倫を行っていたことで、不倫との因縁はかなり強いです。
性嗜好障害を扱った映像作品としては、2017年秋にHuluで配信されていたドラマ「雨が降ると君は優しい」が存在します。主人公の女性が性嗜好障害を抱えており、互いに愛し合いながらも不倫に抗えない難儀な夫婦関係が描かれています。
性嗜好障害が性依存症と呼ばれているのは、病気の存在を世に知ってもらうためマスコミ受けする別名を造ったからだと言われています。病名が一人歩きするリスクを冒してでも、病気の周知によって理解を育む可能性に賭けていたのでしょう。性嗜好障害の専門外来を持つ横浜の「大石クリニック」ですら周知のため別名を使っていたそうです。
想定されるリスクは不倫以外にも沢山
性嗜好障害は不倫や性行為だけでなく、性的コンテンツの蒐集や猥褻な言語コミュニケーションとしても現れることがあります。よって、痴漢や窃盗や盗撮といった形でも性犯罪を行うことがあります。また、多くの性犯罪は顔見知りによる犯行ですが、性嗜好障害による性犯罪は見ず知らずの人に対するものが多いそうです。
また、性が絡む以上は加害者だけでなく被害者になる可能性も高いです。ぼったくりに遭ったり性病に罹ったり経済的に困窮したりするケースが考えられるでしょう。しかし、いかなるリスクがあろうとも本人の意志だけではどうしようもありません。
大抵は性犯罪の加害者となるため深く傷ついた被害者が大勢います。ゆえに病気への根本的な治療はおろか、周りが敵ばかりで治療どころではない状況へ追いやられることの方が多いです。とはいえ、性嗜好障害であるからといって犯罪などを大目に見る道理もありません。厳正な処罰と病気の治療は両立できますので、その辺りは誤解のなきようお願いします。
治療へ励んだ患者の記録
性嗜好障害に詳しい「大石クリニック」では、集団での精神療法や認知行動療法などの治療プログラムを実施しています。また、状況を再現されても踏みとどまれるようにする「条件反射制御法」や、患者の家族へ向けた相談プログラムといった幅広い支援も行っています。大石クリニックで治療へ励んだ患者の記録をもって締めといたします。
痴漢常習犯だった20代男性
17歳の頃に通勤電車でたまたま女性に触れて高揚したのがきっかけです。高校を卒業するまでは、電車が混んでいる時は好みの女性を物色して痴漢することを繰り返していました。大学に入ってからは電車に乗る機会が減ったので痴漢とは無縁だったのですが、偶然混雑した電車へ乗ることになって高校時代のように痴漢を始めてしまいました。その時に初めて通報され、警察まで来て罰金刑となり、事の重大さに気付いて二度と痴漢をしないよう固く誓ったのです。
就職してからは毎日混雑した電車に乗っていましたが、最初は痴漢をせず通勤できていました。しかし会社でやる事が増えてきたとき、つい再犯をしてしまってからというもの痴漢でのストレス解消が日常化してしまったのです。また通報されて職も恋人も失った時、家族や弁護士に勧められ治療を受けることにしました。
治療の中で自分が性嗜好障害と分かり、自分自身がなぜ痴漢をしたか振り返るなど己を見つめる取り組みを始めました。通院して2年、痴漢をせずに日々過ごすことが出来、再就職もしました。
小学校の不審者となった30代男性
小学校から下校する子ども達の笑顔に惹かれていました。ある日、帰りかけの児童に挨拶すると笑顔で返してくれたのが嬉しくて、「お菓子を買ってあげる」と言ったらついて来たことがありました。小学生へのいたずらを始めたのはその時からです。
下校する小学生ばかり狙う生活を続け、ついに警察から事情聴取を受け自分の起こした事件が明るみに出ました。心を入れ替え真面目に生きようとしても既に地元では悪評が知れ渡っており、思うように仕事も見つかりません。運良く見つかった仕事も、職場に中学時代の同級生がいたために過去の罪を言いふらされ長続きしませんでした。
今は通院で性嗜好障害の治療を受けながら、都内で派遣の仕事をして暮らしています。いつかは地元に帰って親孝行をしたいと思っていますが、自分の罪が知れ渡った地元では生活すら出来ません。それでも治療を受けながら1日1日を大切に過ごしていきたいと思います。
参考サイト
渡部建を「セックス依存症」と指摘する無責任さ 依存症の専門家として覚える違和感(原田隆之)
https://news.yahoo.co.jp
性嗜好障害(性依存症・セックス依存症)|性嗜好障害治療の専門病院 大石クリニック
http://www.ohishi-clinic.or.jp
「強迫的性行動症」は精神疾患、依存症かどうかは未判断 WHO
https://www.afpbb.com
その他の障害・病気