e-sportsに特化した就労移行支援事業所「ACADEMIA大阪」の取り組み
その他の障害・病気大阪市中央区西心斎橋にある就労移行支援事業所「ACADEMIA大阪」は、非常に個性的な取り組みを行っています。なんとプログラムがe-sportsに特化しているのです。
e-sportsとは対戦型のテレビゲームやネットゲームで勝敗を競う競技で、世界レベルの大会ともなるとハイレベルな反射神経と戦術眼のぶつかり合いとなってきます。主に競技として採用されるゲームは「PUBG」「League of Legend」「フォートナイト」などで、日本でも人気シリーズ内でe-sportsに特化した作品が発売されています。
プロチーム「GAMING TEAM SELECTER」がコーチに就任している他、依存症対策やソーシャルスキルのトレーニング、動画編集やデザイン、イベント実習や実在プロチームなどでの体験実習など、e-sportsそのものに限らない様々なプログラムが用意されています。
なぜe-sportsなのか
事業所設立の趣旨では「引きこもり」に焦点が当てられており、e-sportsの実習などを通して関連する業界や職種に就けるよう目指しています。障害によって就職できず引きこもらざるを得ない人が主な対象であると言えるでしょう。
なぜe-sportsなのかといいますと、一つに世界市場が育ち盛りであることが挙げられます。黎明期の2014年には世界中で200億円市場だったのが、2018年には1000億円市場にまで成長しており、現在は1600億円市場となっています。視聴者数も2018年時点で3.8億人に達し、現在は5億人を越えているのではないかといわれています。
ただ日本における業界の隆盛は海外に比べてやや遅れています。一握りのトッププレイヤーに限った話ですが、アメリカや韓国などが数億円規模へ上るのに対し日本は数千万規模と小ぢんまりしているそうです。大多数のプレイヤーには関係のない数字ですが、市場規模の違いを理解するには十分でしょう。
一方、日本国内でもゲーム各社がe-sportsに特化したシリーズの発売やイベントの開催など力を入れている他、吉本興業や日本テレビまでも著しい関心を示しており、あながち業界が弱いとも言えません。まだまだこれからです。
就職先はe-sportsプレイヤーに限らない
ACADEMIA大阪からの主な就職先は、コーチ担当でもあるGAMING TEAM SELECTER(株式会社MYTH)への所属ですが、何もe-sportsプレイヤーだけとは限りません。動画編集・イベント設立・経営管理・マネジメント、そしてコーチになる道まであります。
他にもデバッガーや攻略サイトメーカーや機器メーカー、他のプロチームを持つ企業やイベントを運営する企業も就職先に挙げられています。誰もが勝負の世界で生きていける訳ではありません。ゆえに競技者以外の道も提示し、そこへ進めるようゲーム実習以外のプログラムも多数組まれているのです。
就職に難航しても、e-sports関連の実習で得たものが活かせる他の仕事へ就けるよう支援しています。それでも2年間を使い果たしてしまった利用者のために、同じくe-sportsに特化したA型・B型事業所も設立する予定です。
きっかけは障害種ごとの就職格差
「ACADEMIA大阪」設立までには幾つかの前身があり、最初の福祉施設を建てたのはある疑問からでした。「就職した障害者は、分かりやすい身体障害者か複合のない知的障害者がほとんどではないか。」精神障害者の幅広い雇用を実現するために前身となる施設が立ち上がったのです。
前身時代はイラストレーターやフォトショップなど、パソコンを用いた専門的な作業を中心にしていました。周辺地域にはタオルを折るだけのような“昔ながらの”B型事業所が多かった為、地域にない福祉支援を提供しようと考えてのことです。
福祉の世界で働いていくうちに、障害で就職できず「引きこもり」とならざるを得ない人が多いと知ります。視覚障害者はA型事業所を含めても就職率が数%と低く、按摩などの資格が無ければ何処にも就職できないなどです。勿論、他の障害でも行き場のない人が大勢います。
引きこもり支援を志す人は多いものの、実際にコネクションを構築するのは極めて難しいです。そこで、コミュニティ構築のために行き着いたのがe-sportsでした。外のつながりを作ることがコミュニケーションをとる第一歩になると考えたのです。
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