B型事業所の利用者は「無職」になるのか?
その他の障害・病気「B型事業所で働いています!」と口でいくら説いても、履歴書には書けませんし書類の職業欄に書いても「無職」として処理されます。職務経歴書には書けるのですが、そのぐらいでしょう。厳しいことを言いますが、B型事業所に通っているのは「無職」と呼ばれても仕方ないです。
作業所に通って活動し社会人と近似のライフスタイルを維持するのを「無職」に含めるのは乱暴かもしれません。しかし、公的に職を持つ人間として扱えない場合があります。
内々でどう言うかは自由ですが、「通所」は「通勤」と違いますし「工賃」と「給料」は別物です。「利用者」は「従業員」ではありませんし、「仕事場」であって「職場」とは呼ばれません。これら厳然たるニュアンスの相違を各施設長は本来意識すべきです。
付け加えますと、無職が悪いと言いたいわけではありません。むしろ、無職であることは決して本人だけの責任ではないのが持論です。ただ屁理屈をこねて無職の定義から逃れようとする姿勢に疑問を感じるだけです。
雇用契約を結んでいない
B型事業所は利用者と雇用契約を結ばない特徴があり、これが「無職」とされる最大の理由と思われます。雇用契約のあるA型事業所であれば「パート・アルバイト」として扱われますが、それがない以上「手に職を持っている」と認められる証拠はありません。ついでに、労働基準法も適用されません。
就労継続支援を受けるということは、言い換えれば「就労に向けた訓練をしている」という意味であって、「就業し働いている」とはまるで異なります。「無職」以外の言葉で形容するならば、せいぜい「訓練生」か「作業所利用者」くらいでしょう。同様の理由で移行支援の利用者も「無職」として扱われます。
作業内容が一般就労と遜色ないもの(カフェの接客など)であったとしても、雇用契約がない以上「働いている」と見做されない場面はどうしても出てきます。雇用契約を結ぶ就労形態に入るかフリーランスで身を立てるかしなければ「無職」のままです。
叱咤されるべきは施設長である
これを重く受け止めるべきは利用者でなく施設長の方です。B型の利用者が無職と定義されるのは、作業所の施設長に対する叱咤であると私は思います。
本来、B型事業所の役割とは障害者の就労へ向けて駒を進める支援であり、居場所と称して留め置くことではありません。しかし、授産施設時代からの惰性・入所者の障害が比較的重め・就職先となる受け入れ企業がないなどの理由で就労支援が出来ない所が多いです。
独自の作業や工夫などを凝らして真剣に運営している施設長に対して「それでも、あなたの施設で作業する皆さんは"無職"です!」は酷でしょう。しかし、「居場所」を称して安穏とした停滞の毎日を送りたがる施設長にはその位きつく言わなくてはなりません。「就労継続支援事業所」としての責任を放棄しているに等しいのですから。
とはいえ、「居場所」として作業所を運営していくのも必要とされる場合はあるでしょう。どうしても「居場所」寄りでやっていきたいならば、「うちは就職のことを考えていない作業所です!」と分かりやすく自身のスタンスを明示するべきです。
「作業所で働いている」は詭弁
B型に居た頃、「大学まで出て定職に就けず作業所通いでは、親戚に何と言われるか分からない。法事などに出たくない」と施設長に相談したことがあります。返答は「こうして作業所に通って仕事をしているから、いいじゃないか。胸を張って自分の働きを言えばいい」というものでした。正直、詭弁に過ぎないと思いました。
「無職じゃないよ!作業所に通って作業しているよ!」と自分が言うのであればまだ理解は出来ます。問題は施設長が「僕らの作業所で働いている以上、無職にはあたらない!」と言い切っている場合です。「就労継続支援事業所」としての責任感や謙虚さに欠けており、障害者就労の分野で言えばお荷物でしかありません。
キャリアアップやスキル習得に全く繋がらない単純作業を「立派な仕事」と言い張るのはまだ可愛いもので、作業所によってはこのブログ記事にあるような8時間労働をさせる所すらあります。時短などの柔軟な通所計画がB型事業所にとってほぼ唯一といっていい取り柄ですが、それが利かないならば何のための作業所でしょうか。
ブログ筆者は8時間(+通所に往復4時間)働いて月65,000円しか貰えない作業所を辞めようと職員に打ち明けますが、のらりくらりとかわされ有耶無耶にされてしまいました。職員には「ここは一般就労より大変かもしれないけど、その分社会に出ても挫折しにくくなる!」と言い訳されますが、ブログ筆者は「それなら"大変でない"一般就労を目指せばいいだろう」と思ったそうです。かかりつけ医にも「安く値切られて働くものではない」と作業所の姿勢を疑問視されました。
作業を8時間まで延ばしたり土日祝も通所させたりと、通う時間だけ一般企業に似せようとする事業所も一部存在するようですが、そのようなやり方で無職の定義から外れられる筈はありません。寧ろ労働基準法が適用されていない影響を大きくしているだけです。
改めて、なぜ作業所は無職扱いなのか
改めて、B型事業所が無職扱いとなる理由を述べますと、「雇用契約を結ばない」という一点に尽きます。本来、雇用契約を結ばないぶん週3日や午前だけなど柔軟な通所が出来るのですが、労働基準法も雇用保険も無縁になる代償も抱えています。働いているというより、自助会やデイケアに通っているのと似た状態として解釈されます。
雇用契約がないのに作業する時間や曜日だけ一般企業の真似をしていても、低工賃や単純作業に由来する歪みが大きくなるだけです。利用者が将来定職に就けるよう考え支援することが、「就労継続支援」の役目であり責務と言えるでしょう。それを施設長や職員は意識するべきです。
「居場所」や「第二のおうち」という立場を取りたいならば、せめて「本当は就職なんて考えてないです」と説明するのが筋ではないでしょうか。他の福祉サービスに比べて間口が広く、就職が絶望的な障害者(65歳以上など)の「掃き溜め」と化している事情も理解できなくはないですが、就労率1%はあまりにも低すぎます。
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