気になって仕方がない〜強迫性障害とはどのような病気か?②

強迫性障害

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前回のコラムでは強迫性障害の概要についてまとめました。今回は、私が強迫性障害と診断されたときのこと、そして私自身が現在どのような症状に悩まされているかについてお話します。この病気と無縁の方にとっては、なかなか理解することが出来ないとは思いますが、強迫性障害の人がどのような事に悩まされているのか知って頂けたら幸いです。

強迫性障害との出会い

私が強迫性障害との診断を受けたのは30歳になった頃ですが、あることが頭から離れず気になって仕方がないという症状は幼少期からありました。もっとも、それを病気とは考えておらず、性格の問題であると考えていました。しかし、30歳になった頃、急激に症状が悪化し、これはおかしいと感じるようになりました。具体的には、自分が手にしている本の折れている箇所が気になって仕方なく、何度振り払ってもそのイメージが頭から離れませんでした。何をしていてもその事が気になって仕方なく、日常生活が停滞していきました。もちろん、本が少し折れていたところで何か実害があるわけではないことや、それを気にすることが馬鹿げていることは理解していました。しかし、それでも気になって不安でたまらず、ときには気が狂いそうになりました。そのような状態になったとき、これは性格の問題では収まりきらないものだと感じるようになり、ネットで調べました。そして、「強迫性障害」という病気に辿り着いたのです。

精神科を受診し、強迫性障害であるという診断をもらったとき、私は少しほっとしました。長い間私を苦しめてきたヌエ的存在の正体が、名前のある病気であることが分かり、これで何とかなるような気がしたからです。

現在の主な症状

現在の主な症状としては、加害恐怖と完全性崩壊恐怖というものがあります。なお、後者の「完全性崩壊恐怖」は、説明の便宜上そのように命名しただけで、一般的にそう呼ばれているわけではありませんのでご注意ください。

加害恐怖について
加害恐怖とは、一般に、誰かに危害を加えるのではないか、あるいは危害を加えたのではないかという強迫観念です。

私の場合は、例えば、友人から赤ちゃんを渡された際、落としてしまうイメージがわいてきて、それを恐れて抱っこすることができないということがあります。これと同様、自分が車を運転すると、事故を起こすのではないかと不安に思ったり、自分の運転のせいで渋滞が起こったりするなどして他人に迷惑がかかるのではないかと不安に思い、車の運転を恐れるということがあります。

また、自分の言動によって他人に損害を与えたり、相手を不快な気持ちにさせたりしたのではないか、という強迫観念がわいてきて、それを打ち消すために何度もその場面を振り返り、なにか問題はなかったか確認しなければならなくなることがあります。例えば、ほんの些細なことですが、朝、誰かに挨拶をした後で、表情や言葉遣いが無愛想ではなかったか、それによって相手を不快な気持ちにさせたのではないか、という強迫観念がわいてきて、それを打ち消すために、挨拶をした場面を頭の中で何度も振り返り、問題がなかった確認しなければならなくなるのです。加害恐怖の中でも、このような強迫観念がより深刻であり、日々の生活に支障をきたし、就職後においても対処が必要となるだろうと思います。

完全性崩壊恐怖について
私が完全性崩壊恐怖と呼ぶ症状は、次のようなものです。すなわち、その対象は多岐にわたりますが、傷や汚れのない状態を「完全な状態」とし、それに傷が入ったり、汚れが付いたりすることを「崩壊」と捉えます。そして、この「崩壊」をひどく恐れたり、また、傷が入ったりした場合にはその箇所が気になって仕方なくなるというものです。その中でも、特に強く、幼少期から悩まされているのが本についてです。新品の汚れも折れた箇所もない本が、ほんの一部であっても汚れたり、折れたりすると、その箇所が気になって仕方なくなるのです。これは、私が強迫性障害の診断を受けた際に最も強く出ていた症状です。

過去の症状

現在はほぼ消失した症状としては、確認行為があります。例えば、家の戸締まりをしたか不安になり、家に帰るなどして何度も確認しなければならないというものです。

私の場合は、戸締まりの確認のほか、忘れ物をしていないか確認しないと気が済まないという形で現れることが多かったように思います。例えば、コンビニエンスストアのコピー機でコピーをとり終わり、その場を立ち去ろうとするけど、何か忘れ物をしていないか何度も確認しなければならず、店を出た後でも気になり、もう一度確認しに行くことが多々ありました。しかし、最近では、このような強迫観念はたまに現れる程度で、これに悩まされることはほとんどありません。

強迫性障害ならではの苦悩

自分の症状について振り返ると、どれも不合理で馬鹿げたものに思えます。実際、強迫性障害の方の多くが、強迫観念が馬鹿げたものであることや強迫行為をすることの不合理さを理解しているものと思います。さらに、それを恥であるとさえ思っている方も多いのではないかと思います。私も、強迫観念に悩まされていることを隠してきましたし、強迫行為も人に見られないようにしていました。そのため、家族でさえも、私が病気を打ち明けるまで全く気付かなかったと言っていました。このように強迫性障害には、恥ずかしさや隠したいという気持ちが付きまとうのであり、その意味でなかなか人に打ち明けづらい病気といえるのです。

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30代男性。大学卒業後、それまで勉強などしたことはなかったが、法律に出会い勉強を開始。しかし、30歳あたりで幼少期からの強迫性障害が急激に悪化し、人生が頓挫。リスタートしようと思い、現在は就労移行支援事業所にてPCスキルを学んだり、セルフマネジメントに取り組んでいます。

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