変わり潔癖~自分の場合の強迫症状
強迫性障害強迫性障害についてはどの位知られているでしょうか。潔癖症と間違われる場合もありますが、同じものではありません。同じ障害名でもそれぞれの違う症状が出ます。同じ名前の病気は共通点があるのでつけられると思うのですが、病名だけで当てはめられる事は無く、一人一人の違いも見て欲しいといつも思っています。このコラムは自分なりに障害の症状を書いてみたものです。
症状の始まり
自分は元々、汚いものが苦手な傾向はありましたが、特におかしくなり始めたのは30歳くらいの頃だと思います。 トイレや洗い物をする場所等、汚いと思う場所を触る事に抵抗を感じる様になりました。手洗いや入浴に時間がかかったり、気になればまた洗い直したりするのです。それらは段々時間がかかる様になっていきます。 それ迄、気にならなかったものも気になり、苦手なものが段々増えていきました。その後も汚い所に触れたとか手洗いが不充分だったのではないかとか心配になり、その考えに捕らわれてしまうのです。汚れに関することだけではありません。戸締りや職場での作業等、自分のした事に自信が無く不安になります。「忘れていたのではないか。間違えているのかな。」気になれば何度もやり直すのです。元々、素早い行動が苦手な自分なのに、これでは更に遅くなるに決まっています。トイレに1時間以上かかっていた事もあります。生活にも人間関係にも問題が生じ始めました。 自分でもこれでは良くないと思うのですが、治さねばと思う程、逆方向に向いていきます。 「もっと汚いものがあるのに」と言われますが、汚いものが苦手なのではなく「汚いと思うもの」が苦手なのです。潔癖症と似ているだけで、それは違うものです。実際に汚いかは別として、自分が「汚い」と思い始めればそれが気になり過ぎてしまうのです。自分が嫌だと思わなければ他人が気にしていようとも、汚いとは思いません。強迫性障害という言葉をよく知らなかったので、自分はそれを「限定潔癖症」とか「変わり潔癖」と呼んでいました。
症状の悪化
「次の仕事が決まる迄には絶対に治したい!」その時働いていた仕事を辞めた後、自分は思いました。しかし治らぬまま就職が決まり、悩みを抱えたまま仕事が始まりました。 職場でも当然理解してもらう事が出来ず、仕事が遅いだけと思われるのです。トイレの後に手を洗っている時にじっと見られて「潔癖症?」と聞かれた事もありました。自分でも、自分のしている事がおかしいと思い真剣に悩んでいるので、他の人に白い目で見られてしまえば余計に傷つくのでした。 ある時、幼い頃より悩んできた発達障害の事を調べる為に通院し始めた病院で、この話をしてみたところ、それは「強迫性障害」というものだと言われました。薬があると言われたのですが最初は使う気はありませんでした。 そして結局、仕事を続けていく事に限界を感じてしまい、そこも退職してしまいました。仕事を辞めたのでこの機会に今度こそと思うのですが、また前より酷くなっていくだけでした。朝、目覚めたけど全くその場を動けなくなってしまう事、洗剤や石鹸を飲み込んだり舐めたりしてしまう事等、客観的に見れば明らかに重症だと思われる様な状態でした。この時初めて、服薬を始める決心をしました。精神に関する薬を恐れている自分がそれを決心する程に、症状が重くなりもう絶望的だったのです。
服薬と回復
服薬を始めて2ヶ月以上経ってくれば、トイレや手洗いにかかる時間が少なくなりました。 自分はいつも持っている癖を治す為の考え方があります。汚れている物を絶対に触った時とか、手洗い等を明らかに忘れているとわかる時でなければ、洗う事や消毒をせぬ様にという考え方です。以前は洗ったという確信が持てず、何度も洗い直していました。忘れているかもしれないという不安に捕まっていたのが、今は「忘れたかも」や「洗ったかも」という曖昧なものを切り捨てていくとかがしやすくなりました。確信が持てる迄洗い続けようとするならば、その後でまた気になり始めて洗い直すというのを繰り返すと思います。その反対に、汚れた物を触ったという時だけに洗うならば、手洗いの回数も減らせると思うのです。 考える時間も以前より少なくなりました。まだ、健康な人と比べられればおかしいと思います。手を洗っている時にじろじろ見られたりする事もあります。しかし症状の重い時と比べればましにはなってきています。 この後、完治するのか、この障害と付き合いつつ生活していくのか、まだ分かりません。勿論、完治するのが理想ですが、重症の時の事を思い出せば、「付き合っていけるくらいましになったかな」とも思います。こういう風に考えられる様になったこと自体が、自分の中では進歩なのかもしれません。
強迫性障害