「緘黙症とコミュニケーション力」
その他の障害・病気緘黙症は、人前で話をすることが難しいとされる障害です。私も子どもの頃から人前で声を出すことができず、家族以外とのコミュニケーションに苦心することが多くありました。そんな緘黙でも、他の人とコミュニケーションをとれるということを今回、お伝えできればと思います。
発症、自覚するまで
緘黙症は、異常に強い不安や、周りの環境が変わることで発症することが多いです。私も、保育園に通っていた頃は恥ずかしいという気持ちはほとんどなく、発表会などで大勢の人の前に出ると少し緊張したりはしましたが、友達や先生とは普通に会話できていました。しかし小学校に入ると、人前に出るだけで極度に緊張して声が出しにくくなることが多くなりました。それでも、低学年の頃まではクラスメイトや先生に対し、あまり緊張することなく話せていたと思います。ですが、3年になってクラス替えがあった後、学校では全く喋れなくなりました。ただ、その時は「まだ慣れていないだけだろう」と、あまり気に留めていませんでした。しかし、一向に回復する兆しが見えないので少しずつ不安になっていきました。そのため、なるべくいい方向に考え、卒業する頃には治っているだろうと自分を落ち着かせていました。それが甘えになってしまったのか、結局、それ以来誰とも言葉を交わすことなく、卒業しました。その後も、中学、高校から現在まで、家族以外とはほとんど会話できない状態が続いています。他人との意思疎通の困難とその対処法
声を出して話せないため、周囲の人から怪訝な顔をされることもよくありました。例えば、コンビニの店員に商品を温めるか否かを問われた際、首振りだけでは伝わらずに2回くらい訊かれることもあって、それが若干ストレスにもなっていました。今は自分なりの対処法を見つけ、相手と目を合わせた状態で頷いたり、首を振ったりできるようになったので、以前よりはそういうことが減ったと思います。コミュニケーションカードを使って良かったと思うこと
現在、私は就活をするために就労移行支援センターに通っています。そこでは、就職に向けての訓練や、月に1回の面談など、就活において色々なサポートが受けられるのですが、その中で喋れないとあって、カードでのコミュニケーションを勧められました。筆談でなら以前から会話できていたのですが、カードを用いてのコミュニケーションはあまりしてこなかったので、担当のスタッフの方に手伝ってもらいつつ、よく使うことが想定される言葉を自分なりに書き出し、作成しました。完成後は、主にスタッフへの日報の報告や、他の人に話しかける際に使うようになりました。カードを使って良かったと思うことは、その言葉を使いまわせることです。筆談だとどうしてもその場限りで終わってしまい、次に使えないことが多く、また、その場で書かないといけないので時間もかかってしまいます。しかし、カードの場合は時間短縮にもなり、それを相手に提示するだけで良いので、相手を待たせることなく、自分の言いたいことが伝わりやすくもなります。今では言葉の種類も増えてきて、更にコミュニケーションの幅が広がったように思います。コミュニケーション力がある人への羨望
コミュニケーション能力のある人の特徴として、よく話す人や、人前に出ても緊張せずに話せる人を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、個人的にはそれ以外にも、一人でいる人に臆せずに話しかけられる人が、それに当てはまると思います。私も学生の頃、クラスに馴染めず一人でいることがほとんどだったのですが、そんな時に話しかけられることが何度かあって、それが嬉しかったのです。そんな人を見る度に「いいな」「自分もこんな人になれたらな」という感情が少しずつ湧いてきました。確かにカードがあると便利ですが、可能なら自分の声で話せるようになりたい、と思うようになり、現在は就労移行支援のほかに、月に一度、カウンセリングにも通っています。 就活をする以前に、生きていく上でコミュニケーション力は必須な能力です。私は例の障害のせいで話しかけられても答えることができず、相手を困らせてしまうということも多く、それを申し訳なく思うこともよくありました。ですが、今は様々な伝達手段を学び、就労移行支援センターでは「カードの使い方が前より上手くなった」とまで言われるようになりました。それでも、カードも筆談も用いずに、いつかちゃんと声に出して話せるようになりたいというのが本音です。その他の障害・病気