恋が分からないアセクシャル②~名乗りたいなら名乗ればいい
その他の障害・病気◀過去の記事:恋が分からないアセクシャル①~セクシャルマイノリティ内のマイノリティ
前回はアセクシャルについての簡単な説明を行いました。似て非なるノンセクシャルや、海外での呼び方なども交えたものの、ごく基礎的な説明に終始したつもりです。
今回はアセクシャルの定義についてです。結論から申し上げますと、アセクシャルを名乗るための定義や資格や診断基準といったものは存在しません。前回もその旨お話ししたと思います。「自分はアセクシャルだ!」と思えば自認して名乗ってもよく、それを咎める者はいません。
セクシャルマイノリティとはグラデーションのようなもので、同じマイノリティでも人によって多少の差異があります。例えるならば、灘高の3年生と一括りにしても生徒ごとに最得意科目が違うというようなものです。
自分のセクシャリティを定義づけるのは自分だけ
セクシャリティには「身体的性」「性自認」「性指向」「性表現」の4要素がありますが、それぞれの内容を結論付けるのは最終的に自分自身となります。精神障害や発達障害ではないので、精神科医にもジャッジはできません。もし自分のセクシャリティについての疑問をかかりつけ医にぶつけても、専門家としての確かなアドバイスは期待できません。個人の意見なら受けられますが。
自分のセクシャリティが何なのかを定義づけるのは自分自身にしか出来ません。完全な自己判断を強いられるとなると厳しいと思われるでしょうが、その分横からの口出しに惑わされず自分の判断を通すことが出来ます。
有名なアセクシャル当事者である、Youtuberグループ「性性堂堂」のメンバー・なかけん氏も、このように述べています。「自分もアセクシャルなのか判断しかねていた時期があったが、知人に『アセクシャルは死ぬまで証明できない』と言われて考えが変わった。」「アセクシャルの確信や証拠を求めると自縄自縛になる。」「主催しているオフ会でも度々決めあぐねている人が来る。」
周りが「お前は違う!」とがなり立てても、自身がアセクシャルだと思うのであればアセクシャル当事者を名乗ってもいいのです。ガチガチすぎる定義でもないので、「後で恋を知るかもしれない」と判断を鈍らせることはありません。自己判断から名乗るのであれば、そのセクシャルマイノリティについて正確に知っておく必要はありますが。
未婚化でアセクシャルがこれから増える?
アセクシャルを名乗るのが割と自由である以上、これから先アセクシャルは増加していくのではないかと思います。これは私個人の予測に過ぎません。しかし、有力な根拠として「未婚化」を挙げることが出来ます。
日本は未婚化が進んでおり、生涯未婚率もじわじわと上昇しています。恋愛結婚が前提となって久しい昨今、自らの生涯未婚を悟ってアセクシャルを名乗る人が増加するのではないかと予想しています。現在のアセクシャルは女性のほうが多いですが、いずれ独身男性が多数を占めるのではないでしょうか。
ところで、「性的感情はあるけどアセクシャルは名乗れるのか」という疑問があるのではないかと思います。答えはYESで、アセクシャル当事者の中にも性的コンテンツの消費や性的な空想ができる人はいます。いわゆる二次元キャラクターしか愛さないアセクシャルもいます。(アセクシャルには性的空想をしない方が多いそうですが。)
また、「性的感情はあるが恋愛感情が無い」という場合は「アロマンティック」という別のセクシャルマイノリティを名乗る選択肢もあります。「二次元しか愛せない!」という方はそちらが当てはまるかもしれません。ピンときたら「アセクシャル」か「アロマンティック」を名乗れば幾分楽になることもあるかと思います。
自分にも思い当たる節が…
かくいう私も、実はアセクシャルないしアロマンティックの気があるのではないかと自身を疑っている真っ最中です。「特定の誰かを好きになる」「現実の人間に恋愛感情を抱く」という経験が皆無で、恋愛をおとぎ話として中高生時代を過ごしてきました。とはいえ、周りも殊更恋バナをしていたわけでなく、誰が誰を好いているかなど気にしていなかったようにも思います。クラス皆がアロマンティックだったのでしょうか。
他人はともかく自分には恋愛感情が芽生えるという感覚がありません。ただ性的コンテンツの消費はするので、アロマンティックのほうが近いのではないかと思います。今更恋を知ったところで何周遅れか分かりませんし、どちらかの当事者だと名乗りを上げたほうがより現実的でしょう。
生きづらさの原因は特定済み
アセクシャルにせよアロマンティックにせよ「恋愛感情が無い」ことに起因する生きづらさに悩んでいる人が多いです。恋愛至上主義に染まって久しい現在、恋愛感情が湧かないアセクシャルにとっては逆風ばかりといっても差し支えないでしょう。なにせ「恋をしない/したことがない」というだけで変人扱いされるのですから。
アセクシャルの生きづらさは、ほとんど恋愛至上主義が原因と言えます。人間の99%は非アセクシャルなので、耳目を塞ごうとしても「恋ありき」の思想は何処からでも飛び込んできます。独身いびりも恋愛結婚をメジャーとする価値観の延長上ではアセクシャルに対するヘイトスピーチといっていいでしょう。
次回は、アセクシャルにとっての侮辱と配慮について述べます。原因がはっきりしていれば配慮は簡単なのか、或いは原因がわかりやすいからこそ却って配慮できないのか、前者であればいいのですけれども。
▶次の記事:恋が分からないアセクシャル③~配慮とは恋愛至上主義からの解脱
参考文献
アセクシュアル(無性愛)とは?ノンセクシュアル(非性愛)との違いも解説!|LGBTメディア|Rainbow Life
https://lgbt-life.com
しのごのうるさい笑【アロマンティック】とは?恋愛感情の不在には、原因や診断はいりません|LGBTメディア|Rainbow Life
https://lgbt-life.com
Aセクも多様です(後編) - 境界線の虹樽
http://mtwrmtwr.hatenablog.com
恋愛しなくちゃいけないの?アセクシュアルの私が感じる生きづらさ|ハフポスト
https://www.huffingtonpost.jp
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