恋が分からないアセクシャル③~配慮とは恋愛至上主義からの解脱
その他の障害・病気◀過去の記事:恋が分からないアセクシャル②~名乗りたいなら名乗ればいい
他者に恋愛感情が湧かないアセクシャルは、なかなか周囲の理解を得にくく生きづらさを感じています。セクシャルマイノリティの中でも更にマイノリティだからでしょうか。
恋のないアセクシャル当事者にとって現実が息苦しいのは、恋ありきで動いているシステムに対応できない為です。主に結婚など恋愛が前提条件として立ちふさがると、大抵は詰んでしまいます。(まれに恋愛以外の入り口からパートナーと結ばれるケースもありますが。)
将来、恋愛弱者や生涯未婚候補がこぞってアセクシャルないしアロマンティックを名乗ることが予想されます。(無駄な恋愛感情を抱かないという意志で名乗る可能性もあります。この辺りは個人的な予想ですが。)恋愛感情が分からないというセクシャリティへの配慮はどういった形でなせばいいのでしょうか。
LGBTQ+の中からも白眼視
恋愛感情がないという特徴から、「人情のない冷たいやつ」と扱われることがあります。「人は必ず恋をする」「思春期は必ず恋をする」「恋とは生まれ持った本能」という“神話”にそぐわないゆえ、恋愛感情のなさを気味悪がられたというアセクシャル当事者は一定数居ます。恋愛感情の向かう先(性指向)について悩むレズビアンやゲイだと、「あなたには分からないでしょうねぇ!」とアセクシャルを白眼視しているケースもあります。
アセクシャルも冷血漢ではなく、恋愛感情に依拠しない友情や愛情といったものは深層意識から理解しています。親友や家族を想う気持ちはありますし、無いとしてもアセクシャルが原因ではありません。
極論、冷血漢呼ばわりはさせるだけさせておけばいいです。偏見や誤った知識で罵る人間に対して情を持ち合わせるほど徳を積んでいる訳でもないでしょう。それよりもアセクシャルにとって問題となるのは、世間で主流となって久しい恋愛至上主義との不和です。
恋愛至上主義と結婚信仰のツープラトン
そもそもアセクシャルやアロマンティックにとっての生きづらさは、恋愛至上主義に起因するものが大部分を占めています。恋愛感情どころか恋人を持つことが当たり前で人として最低限の素養とする恋愛至上主義はアセクシャルにとって噛み合わないものです。とはいえ、アセクシャルの女性は告白されて一応の恋人(大抵長続きせずに破局しますが)が出来ていたケースも多いのですが。
恋愛至上主義に立脚した発言で「20歳までに恋人がいないのは、人として致命的な欠陥を抱えている!」というのは割とありふれた“ヘイトスピーチ”です。恋人や性交渉の有無で人を査定すること自体がナンセンスで糾弾されるべきなのですが、恋愛至上主義に塗りつぶされた中でそれに気付き悔い改める人間は極稀でしょう。更に結婚信仰も追い討ちをかけてきます。
晩婚化や未婚化が進み、「独身貴族を満喫する!」という層も決して少なくない昨今ですが、実は「30歳までに結婚していない奴は欠陥品だ!」といった結婚信仰も未だ根強く唱えられています。つい先月も某C社(名前は本気で失念しました)がTwitterで社員の待遇について「いい年して独身の社員より、結婚して子どももいる社員のほうが責任感もあって信用できる。」という旨のツイートを行い炎上しました。ところがC社に賛同し擁護するツイートも多く、「ある程度の社会的信用を量る尺度だ。」「銀行の融資でも妻子持ちのほうが信用されやすい。」「これにキレる奴は※$△□」などという意見もありました。
現代日本の結婚はお見合いが完全に廃れ、婚活も未熟なためほとんど恋愛結婚一本となってきています。結婚が恋愛と地続きになっている以上、結婚信仰もアセクシャルにとって厳しい思想となるでしょう。ちなみに、アセクシャル当事者のYoutuberなかけん氏によると、当事者同士のオフ会で聞いた限りでは3,4割が結婚に関心を持っていたそうです。加えると、アセクシャル当事者にも結婚している人は居ます。
恋愛に囚われない多様な価値観を
アセクシャルへの配慮とは、突き詰めると恋愛至上主義に塗り固められた価値観から脱却して多様な価値観や幸福論に理解を示すことではないかと思います。アセクシャルの生きづらさは大半が恋愛至上主義に起因するのですから、恋愛ありきの価値観に囚われず多様な幸福の形があると知ることが大切になってきます。
恋愛をするのが世間のメジャーな常識として凝り固まって久しいですが、今はLGBTの認知度アップによってダイバーシティが叫ばれている時代でもあります。幸福は恋愛ありきで考えるのではなく、恋愛から始まらない幸福があると理解することが、本当のダイバーシティと言えるのではないでしょうか。
最後に個人的な事
第一回でトラウマによる後天的なノンセクシャルの話を少ししたのですが、それに則れば私は後天的なアロマンティックではないかと思っています。いわゆる女子グループとの相性が悪く、中2の時にバッサリと“性指向の去勢”を受けてしまいました。
思春期の初っ端でアロマンティックとなったので、恋愛感情を知らないまま生きています。私くらいの年代でも「いずれいい人が現れる!」と信じ切って、あまつさえ結婚信仰を語り出すお気楽な人もいるのですが、私はああはなれません。
なにぶん研究が全然進んでいない分野なので、後天性があるのかどうかも解釈が分かれています。ですが、自分がそうだと思えばそう名乗ればいいのがセクシャルマイノリティではないでしょうか。初恋の経験がなければアセクシャル当事者の自認も検討してみてください。
参考文献
アセクシュアル(無性愛)とは?ノンセクシュアル(非性愛)との違いも解説!|LGBTメディア|Rainbow Life
https://lgbt-life.com
しのごのうるさい笑【アロマンティック】とは?恋愛感情の不在には、原因や診断はいりません|LGBTメディア|Rainbow Life
https://lgbt-life.com
恋愛しなくちゃいけないの?アセクシュアルの私が感じる生きづらさ|ハフポスト
https://www.huffingtonpost.jp
結婚、考えてますか?恋愛しないアセクシャルが語る、これからの生きかた|ハフポスト
https://www.huffingtonpost.jp
【JobRainbowmagazine アセクシュアル(エイセクシュアル)とは?【恋愛はしない?】】
https://jobrainbow.jp/magazine/
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