電気けいれん療法を受けて

その他の障害・病気 双極性障害(躁うつ病)

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電気けいれん療法(electroconvulsive therapy、略してECT)は、頭部に電圧をかけて通電を行い、脳に人工的なけいれんを起こさせることで難治性うつなどの精神疾患症状の寛解を促す治療法です。名前は聞いたことはあるけれど、実際を知らない方が多いと思うので、以下に私が体験したECTの流れを書いてみたいと思います。

ECTを受ける経緯

私がECTを受けることになった経緯は、当時双極性障害のうつ状態が酷かったにもかかわらず、投薬治療がなかなか上手くいかず、打開策になるのではないかと主治医から提案を受けたためです。ECTを受ける際、私の場合はまず大学病院の閉鎖病棟に入院することになりました。ECTを実施している病院が限られているため、当時の主治医に紹介状を書いていただきました。

閉鎖病棟へ入院

閉鎖病棟に入る際、自殺を防ぐためにヘッドホンのようなコード類やペンのような先の尖ったもの、携帯電話を病棟預かりにされました。病棟内は各男女の病棟と多目的スペースと食堂があり、病状が比較的落ち着いている方は多目的スペースに。中には麻雀を打たれている方もいました。病棟内にテレビ、新聞等がなかったため、日付感覚がなくなっていったのをよく覚えています。基本その病棟は4人部屋でしたが、その部屋の中では他の患者さんは終日しんどそうにされていたのであまり交流はありませんでした。しかし、幸運なことに他の部屋の3人の方と仲良く接して頂きました。ふたりは摂食障害、もうひとりはうつで入院しているとのことでした。食事は朝、昼、夜三回、食堂で取ることになっていました。食事後と就寝前になると、服薬管理上、看護師さんから直接薬をもらうので、それを飲みます。

手術の準備から終了まで

手術に際して、インフォームドコンセントに同意のサインをしました。手術によって何かあったとしても訴えないという趣旨のものですが、やはりサインするときは万が一のことを考えてしまい躊躇う気持ちがあったのは確かです。

手術には6時間前からの絶食が必要なため、食事の絶食がありました。さらに、2時間前には絶飲しなければなりません。手術当日、担当の研修医の方と閉鎖病棟を出発し、他病棟の手術室に徒歩で向かいます。手術室に入り、手術台に寝かされたあと、左足ひざ下を止血されます。これはあとで投与される筋弛緩剤がその部分だけ回らないようにするためです。なぜこの必要性があるかというと、通電したとき実際けいれんが起きたかどうかをひざ下のけいれんで確認するためです。次に腕に全身麻酔投与用の針が刺されました。看護師さんから「麻酔が回るまで少し痛いよ」と言われましたが、実際は”少し”どころではなく、思わず痛いと声が出たのですが、その直後記憶は途切れました。

ここからは、私の意識はないので文献等を参照して書いていきます。全身麻酔が効いたあと、筋弛緩剤が投与されます。これは全身がけいれんを起こして怪我をしないようにするための処置です。その後、頭部に電圧をかけ、電流を流します。脳にけいれんが起こっていれば、この処置で筋弛緩剤が回っていない左足ひざ下だけが、けいれんを起こすはずです。これで手術終了になり、麻酔が切れるのを待ちます。私の場合手術全体で約1時間くらいだったと記憶しています。麻酔投与後なので大事を取って、研修医の方に車いすで病棟まで送っていただきました。これを8回、4週間にわたって行いました。

以上で退院となりました。治療費は私の場合、約12万かかりました。また、大学病院に入院するということで、研究協力で手術前と手術後に頭部のPET検査を受けています。

手術後の経過ですが、残念ながらECTの効果でうつ状態は改善せず、反対に一時的ではありますが強い自殺衝動に囚われるようになり、手術を受けたことを後悔しました。しかし一方で、以前副作用で服薬できなかった、気分安定化薬のバルプロ酸ナトリウムと炭酸リチウムが服薬できるようになり、気分の波が徐々に落ち着いていったのも事実です。手術を受けて10年後の今、このふたつの薬を飲み続けていることで病状が安定している状況です。

参考文献

【ウィキペディア電気けいれん療法】
wikipedia「電気けいれん療法」

白銀の豆腐ハンバーグ

白銀の豆腐ハンバーグ

双極性障害Ⅱ型の当事者。18年前に発病したが、初めはうつ病と診断され、抗うつ剤を処方されているうちに気分の波が大きくなり、いつの間にか躁とうつを1週間ごとに繰り返す急速交代型に発展、発病4年後にしてやっと双極性障害と判明した。現在は闘病生活を経て、就労移行支援事業所に通所中。趣味は小説執筆だが、7年書き続けているのに全く上手くならないのが悩み。

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